商いは買い手がいるうちにやれ=犬丸正寛の相場格言

■商いは買い手がいるうちにやれ

 欲を出さないで、買いたいという人がいる間に売りなさいという教えです。商売は売り手と買い手で決まるわけですから、当たり前の話ですが、人間には欲がついていますから、現実はなかなか思うようにいかないものです。とくに、精魂込めて作った品などは、思い入れも強いため、もう少し粘れば高く売れるだろうと、つい欲を出しすぎて売り損ねてしまうことになってしまいがちです。

 買いたい人がいる間といえば、小さい頃の村祭りの屋台を思い出します。祭りもそろそろ終わりという頃合に、一気に売り切ってしまう上手な店もあれば、売れ残してしまう店もありました。子供心に、見事に売り切ってしまう店のおじさんを見て感心したものです。大阪天王寺にある四天王寺のような多くの参拝者が押しかけるところと違って、小さな村祭りではタイミングを失したら売れ残るだけです。

 株の世界でも同じです。発行株数の多い大型株と新興市場銘柄のような発行株数の少ない銘柄では、四天王寺と村祭りくらいの違いはありますが、しかし、発行株数の多い銘柄には取引きする株数も多くなりますので、大型銘柄といえど注文の潮時を間違えると売り損ねて、多くの株を抱え込んでしまいます。こうしてみますと、買い手がいる間とは、多くの人が買いたいと思っている時、ということになります。多くの人が、欲しい、買いたいと思う時は一種独特の雰囲気があって勢いがある時です。こういう時に売りなさいというのですから、よほど己に克つ強い気持ちの持ち主でなくてはいけません。だから、分かりきったことが格言になっているのではないでしょうか。

 少し補足して、デジタル的に言えば、仮に、参加者100人がいて、90人までが買い込んだら、残るのはわずか10人です。少し値段は安くても、買い手が20人、30人と残っている間に売るほうが楽に売ることができるはずです。

 企業経営においては、もっと大きな社会の流れに影響を受けます。バブル期の頃のように、地価上昇に酔って、売るどころか買い込んでしまうところが大半でした。気がついてみたら、買いたいという人はいなくなり、売りたい人ばかりだったことは記憶に新しいところです。企業経営で難しいところは、社会の変化に乗り遅れてはいけないものの、深追いもできないところです。己に克つ経営者がますます求められているのではないでしょうか。

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