ジェイエスエスは調整一巡、24年3月期増収増益予想

 ジェイエスエス<6074>(東証スタンダード)はスイミングスクールを全国展開し、スイミングスクール特化型企業では首位の施設数を誇っている。水泳指導技術を活かした商品開発の強化を推進するとともに、スイミングにとどまらず健康運動への取り組みも推進している。24年3月期は増収増益予想としている。成長戦略の各種施策を通じた会員数の回復や会員単価の上昇を見込んでいる。積極的な事業展開で収益改善基調だろう。株価は反発力が鈍く上値を切り下げる形だが、1倍割れの低PBRも評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。

■スイミングスクール運営首位

 スイミングスクールを直営と受託で全国展開している。23年4月1日現在の事業所数は、直営64ヶ所と受託22ヶ所の合計86ヶ所(うちコンパクトプールが直営13ヶ所と受託2ヶ所の合計15ヶ所)である。スイミングスクール特化型企業では首位の事業所数を誇っている。

 20年3月にニチイ学館<9792>との資本業務提携を解消し、日本テレビホールディングス<9404>と業務資本提携した。日本テレビホールディングスのグループ会社でフィットネスジムを展開するティップネス(スポーツ施設運営企業として業界3位規模)と協業してシナジーを創出する。

 児童発達支援および放課後等デイサービス事業「JSS水夢」については、2事業所目として22年12月にJSS水夢北神戸(仮称、兵庫県神戸市北区、JSS北神戸スイミングスクール内)を開設した。また、静岡県磐田市の福田屋内スポーツセンターおよび磐田温水プールの指定管理者(指定管理期間23年1月11日~28年3月31日)に選定された。

 23年3月期部門別売上高は、スイミングスクール収入が22年3月期比7.2%増の74億52百万円(うち直営事業収入が5.2%増の63億35百万円、受託事業収入が6.8%増の7億36百万円、企画課外収入が58.3%増の3億80百万円)で、商品売上が4.8%増の5億90百万円、その他の営業収入が9.1%減の30百万円だった。

 23年3月期末の全事業所合計会員数は、子供会員数が22年3月期末比3.0%減の7万8902人、大人会員が2.6%減の9271人、合計が3.0%減の8万8173人だった。コース別会員数は、注力している単価の高い選手・育成コースが6.3%減の4867人、長期在籍が見込まれるベビー・キンダーコースが8.6%増の2085人だった。

 スイミングスクール事業の強みには、総合フィットネスクラブとの比較で景気に左右され難いという点がある。入会から四泳法習得まで2~3年の安定した在籍が期待され、ベビーからの入会や選手コースへの進級で長期在籍の可能性も高まる。大人会員は高齢者が中心で、生涯スポーツ化も期待される。同社の強みとしては、国内最多のスイミングスクールを展開する業界唯一の上場企業としての豊富な出店・運営ノウハウの蓄積や、数多くのオリンピック選手やメダリストを輩出している指導力などがある。

■商品開発を強化

 中期経営計画(21年6月にローリング)では目標数値として、最終年度24年3月期の売上高91億円、経常利益4億37百万円、当期純利益2億76百万円、EPS71円24銭を掲げている。コロナ禍を乗り越えて成長基調への回帰を目指す。

 成長戦略として、新たな生活様式に適応しつつ水泳指導技術を活かした商品開発の強化などを推進するとともに、スイミングにとどまらず健康運動への取り組みも推進している。会員数回復に向けた施策としては、各事業における地域特性を考慮した入会キャンペーンの実施、中高生をターゲットとするクラス「JSS部」の設置などにより、24年3月期にコロナ禍前の水準以上への拡大を目指す方針だ。

 重点施策として、事業戦略では年間2事業所程度の着実な出店、コンパクトプールの新規出店・新築移転の推進による利益率向上、ティップネス社との協業施策によるシナジー創出、大人会員施策としての水中バイクと水中トランポリンを利用したオリジナルプログラム「バイポリン-W」の展開、水泳指導技術を活かした商品開発の強化や物販の拡大、水泳授業受託の拡大、業務提携など事業パートナーとの連携、人事戦略では教育・研修の充実、評価制度・昇給制度の改革、女性社員の職域拡大と活用の高度化、財務戦略ではコロナ以前の業績回復、東証市場区分見直しへの対応を推進する。

 店舗展開では、少子化による施設当たり会員数減少や施設老朽化への対策として、平屋建てで天井高が低いコンパクトプールの新規出店・新築移転を推進して利益率向上を図る方針だ。ティップネスとの協業としては、オンラインフィットネス「トルチャ」や、地域健康支援合同企画「JSSキッズファミリープラン」などを開始している。

 大人会員施策の一環としては、水中バイクと水中トランポリンを利用したオリジナルプログラム「バイポリン-W」を展開している。その他の施策としては、独自の療育システムに基づく児童発達支援サービスと放課後等デイサービスの提供、自治体等からの水泳授業受託サービスなども推進している。

 ティップネス社との協業施策によるシナジー創出では、9月10日にティップネスとの共催イベント「ジョイントマスターズin東京アクアティクスセンター」を開催した。

■スタンダード市場上場維持基準適合に向けた計画書

 22年4月に実施された東京証券取引所の市場再編についてはスタンダード市場を選択し、スタンダード市場上場維持基準適合に向けた計画書を開示している。

 中期経営計画で掲げた経営戦略および重点施策を着実に実施することで、業績の向上および企業価値の向上(時価総額の増大)を図り、25年3月期までにスタンダード市場の上場維持基準を充たすよう各種取組を進めるとしている。

■24年3月期増収増益予想

 24年3月期の業績(非連結)予想は、売上高が23年3月期比6.7%増の86億16百万円、営業利益が5.2%増の4億47百万円、経常利益が3.8%増の4億46百万円、当期純利益が18.5%増の2億78百万円としている。配当予想は23年3月期比2円50銭増配の14円50銭(第2四半期末7円25銭、期末7円25銭)としている。連続増配予想で、予想配当性向は20.1%となる。

 第2四半期累計は、売上高が前年同期比2.7%増の41億22百万円、営業利益が3.2%増の2億32百万円、経常利益が6.4%増の2億38百万円、四半期純利益が8.3%増の1億57百万円だった。

 会員数は減少したものの、各種イベントの再開や練習会の実施など既存会員の満足度向上に向けた施策、オリジナルの水中運動プログラムの展開、公共施設運営受託・水泳授業受託などにより、小幅ながら増収増益で着地した。なお第2四半期末時点における全事業所合計会員数は5.4%減の8万7993人(子供会員が5.7%減の7万8649人、大人会員が2.9%減の9344人)だった。コース別会員数は選手・育成コースが5.9%減の4676人、ベビー・キンダーコースが10.9%減の1955人だった。

 部門別売上高はスイミングスクール収入が3.9%増の38億32百万円(直営事業収入が2.4%増の31億95百万円、受託事業収入が7.3%増の3億99百万円、企画課外収入が21.0%増の2億36百万円)、商品売上が10.7%減の2億75百万円、その他の営業収入が6.7%減の14百万円だった。なお会費については、22年10月に水道光熱費や燃料費の高騰に対応して一律400円の燃料費徴収を実施したが、23年7月に燃料費の廃止と会費の改定を行った。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高が19億81百万円で営業利益が74百万円、第2四半期は売上高が21億41百万円で営業利益が1億58百万円だった。全事業所合計会員数は第1四半期末が8万6553人、第2四半期末が8万7993人だった。

 通期の連結業績予想は据え置いている。通期ベースでも成長戦略の各種施策を通じた会員数の回復や会員単価の上昇を見込んでいる。事業所展開については既存施設の新築移転を含めて年間2店舗程度の開設を想定している。既存施設の新築移転はランニングコストの低いコンパクトタイプ施設へ移行することで利益率の改善を図る。さらに、水中ウォーキングプログラムの深化や水中バイク以外のプール対応型マシンの製品化など、成人集客に向けて大人への訴求力強化を推進する方針だ。積極的な事業展開で収益改善基調だろう。

■株価は調整一巡

 株価は反発力が鈍く上値を切り下げる形だが、1倍割れの低PBRも評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。1月10日の終値は523円、今期予想PER(会社予想のEPS72円00銭で算出)は約7倍、今期予想配当利回り(会社予想の14円50銭で算出)は約2.8%、前期実績PBR(前期実績BPS685円03銭で算出)は約0.8倍、そして時価総額は約21億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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