エイトレッド、26年3月期は2桁営業・経常増益予想、クラウド事業が躍進し9期連続増配へ

 エイトレッド<3969>(東証スタンダード)はワークフローシステムのリーディングカンパニーとして、小規模企業向けクラウド型X-point Cloudと大手・中堅企業向けパッケージ型AgileWorksを主力としている。26年3月期は2桁営業・経常増益予想、そして9期連続増配予想としている。クラウドサービスが順調に拡大し、前期の一時的な減価償却費が減少することも寄与する。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は反発力が鈍く安値圏でモミ合う形だが、調整一巡して出直りを期待したい。

■ワークフローシステムの開発・販売

 ソフトクリエイトホールディングス<3371>の連結子会社で、ワークフローシステム(ソフトウェア)の開発・販売およびクラウドサービスを展開している。

 ワークフローシステムとは、企業における稟議書、経費精算申請書、各種届け出書など、稟議・申請から承認・決裁に至る事務工程(ワークフロー)を電子化(システム化)するソフトウェア製品である。ワークフローシステムを導入することにより、業務プロセスの効率化(作業工数削減や時間短縮)、ペーパーレス化によるコスト削減(用紙・印刷・郵送・保管に係るコストの削減)、内部統制の強化(意思決定プロセスや承認日時のデータ化・可視化)などのメリットが得られる。

 主力製品は、中堅・中小企業(従業員1000名以下)向けクラウド型X-point Cloud、中堅・大手企業(従業員数1000名~数万名)向けパッケージ型AgileWorksである。収益はクラウド型が月額課金のクラウド利用料、パッケージ型が初期費用としてのライセンス料および年間サポートサービス料となる。

 24年3月にはAgileWorksクラウド版の販売を開始した。AgileWorksパッケージ版は従業員数1000名~数万名といった大規模組織向けのワークフローシステムだが、AgileWorksクラウド版は従業員数500名程度の企業でも手軽に利用できるため、より幅広い企業規模のユーザーに提供することが可能になる。また24年7月にはX-point Cloudの価格体系を変更した。

 なおクラウド型X-point Cloudへの移行により、以前の主力製品であった小・中規模企業向けのパッケージ型X-pointは22年3月に新規ライセンス販売を終了した。さらに25年3月には通常サポート終了、27年3月には延長サポート・追加ライセンス販売終了予定である。これに伴い、AgileWorksへのアップセルやX-point Cloudへの移行、AgileWorksクラウド版による未開拓領域への展開、X-point Cloudの価格体系変更による単価向上を推進している。

 23年12月にはX-point Cloudが、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)が認証する令和3年度改正基準の「電子取引ソフト法的要件認証」を取得した。24年1月には情報セキュリティマネジメントシステムの国際規格「ISO27001/ISO27017」を取得した。25年6月にはX-point CloudがIT導入補助金対象ツールとして登録された。

■クラウドサービスが主力でストック型収益構造

 同社はクラウドサービスが主力でストック型収益構造となっている。25年3月期の製品別売上高は、Cloudがユーザー数増加やパッケージ型X-pointからの移行により26.7%増の13億60百万円、AgileWorksがユーザー数増加や新バージョンアップへのアップセルにより2.3%増の11億62百万円、パッケージ型X-pointがクラウドへの移行に伴う新規ライセンス販売終了(22年3月)により16.6%減の2億42百万円だった。全社ベースのクラウド比率は6.3ポイント上昇して49.2%となった。

 利用企業数は増加基調であり、24年4月にはワークフローシステムのシリーズ累計導入社数が4500社を突破した。24年1月時点の利用ユーザーアカウント総数は209万6035ユーザーとなった。また24年4月~25年3月の契約継続率はX-point Cloudが99.83%、AgileWorksが99.81%だった。

■社内文書電子化のリーディングカンパニー

 同社は社内文書(申請書・稟議書)電子化のリーディングカンパニーである。複数の市場調査レポートでワークフロー市場における出荷金額・売上金額実績シェア1位を獲得している。

 デロイト トーマツ ミック経済研究所の「コラボレーション・モバイル管理ソフトの市場展望2024年度版」では、X-point CloudがSaaS・ASP型ワークフロー市場シェア(出荷金額)で11年度から13年連続シェアNO.1(23年度実績の金額シェア24.2%)となった。さらにユーザー規模別ではSMB(100人未満)向けワークフロー市場シェアにおいても13年連続NO.1(同44.2%)となった。同社は特に小・中規模企業向けを強みとしている。

 テクノ・システム・リサーチの「2023年SaaSワークフロー市場データ」においては、X-point Cloudが、従業員数別メーカーシェア100人未満カテゴリー(シェア26.9%)および100人以上1000人未満カテゴリー(シェア34.1%)でシェアNO.1を獲得した。また売上高別メーカーシェア100億円未満カテゴリー(シェア35.9%)および100億円以上1000億円未満カテゴリー(シェア30.3%)でシェアNO.1を獲得した。

 富士キメラ総研の「ソフトウェアビジネス新市場2023年版」においては、X-point CloudがSaaSワークフロー市場占有率推移(金額)で、7年連続(16年度~22年度)でシェア第1位を獲得した。

 アイティクラウド「ITreview Grid Award 2025 Spring」では、AgileWorksおよびX-point Cloudが、ワークフロー部門において最高位の「LEADER」を13期連続で受賞した。

■ワークフローシステム「デジタル申請・稟議書」市場は拡大基調

 今後は中堅・中小企業においても、業務効率化を実現するワークフローシステム「デジタル申請・稟議書」の導入が加速し、市場は拡大基調が予想される。こうした事業環境に対応し、X-point CloudとAgileWorksを主力として、カバレッジ拡張や他社サービスとの連携を強化しながら売上拡大を推進する方針だ。事業戦略の基本は、日本型業務プロセスに適した製品によって他社製品との差別化を図る、導入企業ごとの個別カスタマイズを行わずに開発コストを抑制する、開発に特化して販売パートナー企業(販売代理店)を活用するとしている。販売パートナーは大手SIerなどで構成され、全国に営業網を構築している。

■26年3月期は2桁営業・経常増益予想

 26年3月期業績(非連結)予想は売上高が25年3月期比12.8%増の31億20百万円、営業利益が10.6%増の11億70百万円、経常利益が10.3%増の11億70百万円、当期純利益が7.6%増の7億84百万円としている。配当予想は25年3月期比2円増配の34円(第2四半期末17円、期末17円)としている。9期連続増配予想で予想配当性向は32.5%となる。

 売上高に占めるクラウド比率を50%超に引き上げることを目指し、パッケージベンダーからSaaSベンダーへの変革を推進する。また顧客単価の向上を図るとともに、解約防止により80%超のストック売上をより強固なものとするため、ユーザーコミュニティによりカスタマーサクセスの強化を推進する。

 製品別売上高の計画はCloudが28.6%増の17億49百万円、AgileWorksが3.4%増の12億02百万円、新規ライセンス販売終了のパッケージ型X-pointが30.8%減の1億67百万円としている。Cloudは主力のX-point Cloudがパッケージ型からのシフトも含めて拡大基調である。AgileWorksクラウド版については25年4月1日より提供プラン変更(価格体系見直し)を実施した。認知度向上により下期から導入が加速する見込みだ。AgileWorksについてはバージョンアップによるアップセルを推進する。パッケージ型X-point(27年3月サポート終了予定)については、残り約600社のクラウド移行やAgileWorksへの乗り換えを推進する。

 営業利益1億12百万円増益の変動計画は、Cloud売上増加で3億88百万円増益、パッケージ売上減少で35百万円現役、人件費増加で1億12百万円減益、減価償却費増加(本社移転に伴う早期償却は減少)で64百万円減益、クラウドインフラコスト増加で25百万円減益、その他で40百万円減益としている。

 26年3月期は2桁営業・経常増益予想、そして9期連続増配予想としている。クラウドサービスが順調に拡大し、前期の一時的な減価償却費が減少することも寄与する。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待制度は9月末と3月末の年2回

 株主優待制度は年2回、毎年9月末および3月末時点の株主を対象として、保有期間および保有株式数に応じてオリジナルQuoカードを贈呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価は調整一巡

 株価は反発力が鈍く安値圏でモミ合う形だが、調整一巡して出直りを期待したい。6月3日の終値は1401円、今期予想PER(会社予想のEPS104円71銭で算出)は約13倍、今期予想配当利回り(会社予想の34円で算出)は約2.4%、前期実績PBR(前期実績のBPS676円40銭で算出)は約2.1倍、そして時価総額は約105億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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