巴工業、25年10月期は再上振れの可能性、機械・化学品事業が牽引し好調持続

 巴工業<6309>(東証プライム)は遠心分離機械などの機械製造販売事業、合成樹脂などの化学工業製品販売事業を展開している。成長戦略として海外事業拡大、収益性向上、SDGsや脱炭素、迅速な意思決定と効率的な営業活動に繋がるDX、資本効率改善、持続的成長に資する投資などに取り組んでいる。25年10月期は増収増益予想としている。第2四半期が大幅増益で進捗率も高水準だったことを勘案すれば、通期会社予想は再上振れの可能性がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は6月の年初来高値圏から一旦反落したものの、その後は反発して戻り高値圏だ。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。

■機械製造販売事業と化学工業製品販売事業を展開

 遠心分離機械などを中心とする機械製造販売事業、および合成樹脂や化学工業薬品などを中心とする化学工業製品販売事業を展開している。24年9月にはインド駐在員事務所を開設した。一方で事業ポートフォリオ見直しとして、24年2月に巴ワイン・アンド・スピリッツ(TWS社)の全株式を売却した。

 24年10月期セグメント別業績は、機械製造販売事業の売上高が130億04百万円で営業利益が11億87百万円、化学工業製品販売事業の売上高が391億15百万円で営業利益が35億16百万円だった。

 機械製造販売事業の売上高の内訳は、分野別には官需が45億15百万円、民需が36億26百万円、海外が48億62百万円、製品別には機械が29億22百万円、装置・工事が15億77百万円、部品・修理が85億04百万円だった。化学工業製品販売事業の製品別売上高は合成樹脂関連が45億23百万円、工業材料関連が65億92百万円、鉱産関連が63億29百万円、化成品関連が96億33百万円、機能材料関連が72億04百万円、電子材料関連が46億79百万円、その他(洋酒)が1億51百万円だった。

 収益面の特性として、機械製造販売事業は設備投資関連のため、第2四半期(2月~4月)および第4四半期(8月~10月)の構成比が高い傾向がある。

 なお24年3月には、三菱化工機<6331>とのJVで沖縄県名護市より、し尿受入施設整備事業建設工事(契約金額12億89百万円、工期23年12月~25年12月)を受注した。24年10月には神奈川県綾瀬市に固定資産(工場用地)を取得すると発表した。遠心分離機の板金溶接加工を行う巴マシナリーを移転予定(竣工予定27年3月)で、総投資額は約22億円の見込みとしている。

■中期経営計画

 持続的な成長と中長期的な企業価値向上を図るため、23年12月に資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応方針を決議するとともに、中期経営計画の最終年度業績目標値の上方修正、配当方針の変更と配当予想の上方修正、および株主優待制度の変更を発表した。なお3月24日に株式3分割・配当予想上方修正・株主優待制度条件緩和を発表した。

 中期経営計画「For Sustainable Future ~持続可能な未来のために~」で掲げた最終年度25年10月期の目標値を、初年度23年10月期にほぼ達成したため、上方修正した新たな目標値に25年10月期売上高540億円(機械事業150億円、化学品事業390億円)、経常利益44億円、当期純利益31億円、ROE8.0%を掲げ、PBR1倍の達成を目指すとした。さらに、この計画を24年10月期に前倒し達成したため、最終年度25年10月期の計画は売上高が570億円、営業利益49億60百万円、経常利益50億円、当期純利益36億20百万円に引き上げた。

 現行の中期経営計画で取り組んでいる重点施策(機械事業での生産改革推進による採算性向上、海外事業の拡大、再生エネルギー分野への展開など、化学品事業での海外事業の拡大、新たなサプライヤーの発掘、パワー半導体分野への商材提供など、全社ベースでのDX推進、資本効率の改善、持続的成長に資する分野への投資・経営資源投入など)に加えて、新たな重点施策(成長戦略)として、化学品事業ではEV用等で世界的需要が拡大しているパワーデバイス市場での商権確立、ライフサイエンス分野等の新規事業立ち上げ、機械事業では海外展開の拡大(東南アジア全体のネットワーク化)、第2の柱とすべくバイナリー発電装置の販売、第3の柱となる海外製品の探索・販売権確保などを推進する。

 株主還元は、新たな配当方針として「配当性向40%以上を目標として安定的な配当を実施」を打ち出した。株主優待制度については、対象株主を「継続して1年以上保有する株主」に変更するとともに、優待区分を保有株式「100株以上300株未満」および「300株以上」とした。また25年5月1日付の株式3分割に伴い株主優待制度の一部を変更し、実質的に条件を緩和した。

 またIR活動の強化については、23年11月にIR・SR活動を担うIR推進PT(プロジェクトチーム)を設置し、取り組みを強化するための体制を整備した。そして24年4月には経営企画部内にIR・企画課を新設した。

 サステナビリティ経営に関しては、22年4月に、脱炭素・循環型社会の実現に向けて、主力のサガミ工場(神奈川県大和市)で使用する電力を100%再生可能エネルギー由来の電力に切り替えている。

■25年10月期増収増益予想、さらに再上振れの可能性

 25年10月期連結業績予想(25年6月6日付で上方修正)については、売上高が前期比13.6%増の592億円、営業利益が12.7%増の53億円、経常利益が12.0%増の53億50百万円、親会社株主帰属当期純利益が4.0%増の37億60百万円としている。

 前回予想(24年12月11日付の期初公表値、売上高570億円、営業利益49億60百万円、経常利益50億円、親会社株主帰属当期純利益36億20百万円)に対して売上高を22億円、営業利益を3億40百万円、経常利益を3億50百万円、親会社株主帰属当期純利益を1億40百万円それぞれ上方修正した。

 配当予想については、25年6月6日付で期末1円上方修正し、第2四半期末73円、期末26円とした。なお25年5月1日を効力発生日として株式3分割を実施しており、株式3分割後に換算すると、24年10月期の48円33銭(第2四半期末21円、期末27円33銭)に対して、25年10月期は50円33銭(第2四半期末24円33銭、期末26円)となる。予想配当性向は40.1%である。

 第2四半期累計(中間期)は売上高が前年同期比17.8%増の313億16百万円、営業利益が25.5%増の37億11百万円、経常利益が23.9%増の37億26百万円、親会社株主帰属中間純利益が20.0%増の25億65百万円だった。大幅増収増益だった。機械製造販売事業の大幅伸長が牽引した。

 機械製造販売事業は売上高が前年同期比21.0%増の88億37百万円、営業利益が60.0%増の18億86百万円だった。売上高の内訳は需要先別には国内官需が21.8%増の37億58百万円、国内民需が44.7%増の25億33百万円、海外が3.2%増の25億44百万円、製品別には機械が25.6%増の20億49百万円、装置・工事が12.3%増の11億78百万円、部品・修理が21.4%増の56億09百万円だった。国内官需が全般的に好調だったほか、国内民需の機械および部品・修理、海外の装置・工事なども伸長した。

 化学工業製品販売事業は売上高が前年同期比16.6%増の224億79百万円、営業利益が2.6%増の18億25百万円だった。製品別売上高は、合成樹脂関連が全般的な伸び悩みで18.8%減の19億50百万円、工業材料関連が建材・耐火物向け材料の伸び悩みで4.1%減の30億93百万円、鉱産関連が樹脂向け添加剤の大幅伸長で128.0%増の72億46百万円、化成品関連がコーティング用途向け材料の好調で19.8%増の53億85百万円、機能材料関連が半導体製造用途向け材料の伸び悩みで22.8%減の26億42百万円、電子材料関連が半導体組立用途向け材料の伸び悩みで11.0%減の21億59百万円だった。その他(洋酒等)は0百万円(前年同期は1億28百万円)だった。

 全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が150億86百万円で営業利益が17億93百万円、第2四半期は売上高が162億30百万円で営業利益が19億18百万円だった。

 通期は前回予想に対して増収増益幅が拡大し、売上高が2期連続過去最高、営業利益と経常利益が5期連続過去最高、親会社株主帰属当期純利益が2期連続過去最高となる見込みだ。化学工業製品販売事業の売上高が鉱産関連を中心に想定以上が見込まれるほか、利益面では機械製造販売事業の部品・修理の伸長も寄与する。なお米国関税政策の影響は全体として軽微の見込みである。

 セグメント別の計画は、機械製造販売事業の売上高が前期比21.1%増の157億50百万円で営業利益が66.0%増の19億70百万円、化学工業製品販売事業の売上高が11.1%増の434億50百万円で営業利益が5.3%減の33億30百万円としている。

 修正後の通期予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が53%、営業利益が70%、経常利益が70%、親会社株主帰属当期純利益が68%と高水準であり、通期予想は再上振れの可能性がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待制度はワインを贈呈

 株主優待制度(25年3月24日付で一部変更を発表、詳細は会社HP参照)は、毎年10月末日時点で継続して1年以上保有株主を対象として、ワインを贈呈(関連会社取扱商品を贈呈する。25年3月24日付の変更により、継続して1年以上保有株主のうち、200株以上600株未満保有株主に対してワイン1本、600株以上保有株主に対してワイン2本を贈呈する。

■株価は上値試す

 株価(25年5月1日付で株式3分割、1株当たり数値は株式3分割後)は6月の年初来高値圏から一旦反落したものの、その後は反発して戻り高値圏だ。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。7月17日の終値は1481円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS125円61銭で算出)は約12倍、今期予想配当利回り(会社予想の50円33銭で算出)は約3.4%、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS1314円57銭で算出)は約1.1倍、そして時価総額は約468億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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