イトーキ、通期予想を上方修正し増収・大幅増益、ワークプレイス事業好調で設備機器・パブリック事業も増益寄与

 イトーキ<7972>(東証プライム)はオフィス家具の大手で物流設備なども展開している。重点戦略として7FlagsおよびESG戦略を掲げ、株主還元も強化している。25年12月期第2四半期累計(中間期)は増収・大幅増益だった。ワークプレイス事業の好調が牽引した。そして通期連結業績予想を上方修正し、従来予想に比べて増収増益幅が拡大する見込みとした。引き続きワークプレイス事業が好調に推移するほか、設備機器・パブリック事業が前回予想を大幅に上回る見込みだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は高値更新の展開だ。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。

■オフィス家具の大手で物流設備機器関連も展開

 事務用デスク・チェアなどオフィス家具の大手で、物流設備機器関連等も展開している。21年5月に公共空間へのアート導入を展開するアートプレイスを子会社化、24年2月に首都圏でオフィス家具搬送・施工を展開するソーアを子会社化、24年7月に子会社イトーキエンジニアリングサービスを吸収合併、26年1月に子会社の伊藤喜オールスチールを吸収合併した。また25年10月1日(予定)に子会社のダルトンがダルトンの子会社である不二パウダルを吸収合併する。

 セグメント区分は、ワークプレイス事業、設備機器・パブリック事業、その他としている。ワークプレイス事業はオフィス家具、建材・内装工事、オフィス空間デザイン、学習家具、什器レンタル・オフィスシェア関連サービスなど、設備機器・パブリック事業は物流設備、特殊扉、研究施設機器など、その他はITシステム開発などである。

 24年12月期のセグメント別業績は、ワークプレイス事業の売上高が23年12月期比8.2%増の1022億61百万円で営業利益が29.2%増の80億47百万円、設備機器・パブリック事業の売上高が6.2%減の345億72百万円で営業利益が2.6%減の18億57百万円、その他(IT・シェアリング事業に含まれていたオフィスシェアリング事業をワークプレイス事業へ移管)は売上高が1.7%増の16億26百万円で営業利益が55.7%減の1億72百万円だった。収益はオフィス移転シーズンにあたる第1四半期(1月~3月)偏重の特性がある。

 本社オフィスのITOKI DESIGN HOUSE(旧ITOKI TOKYO XORKを、24年11月に新名称ITOKI DESIGN HOUSEとしてリニューアルオープン)を活用して、ワークスタイルの多様化や働き方改革に対応したオフィス空間の提案を推進している。24年10月には旧ITOKI TOKYO XORKが、世界最大のワークプレイス・エクスペリエンス評価サーベイにおいて日本初のLeesman(R)+Excellent認証を取得した。25年7月にはITOKI DESIGN HOUSEが、屋内緑化推進協議会主催の屋内緑化コンクール2025において農林水産省農産局長賞を受賞した。

 生産・物流面では、23年1月に滋賀工場APセンター(アセンブル・プロセスセンター)が本格稼働、23年8月に物流拠点のイトーキ東京テクノパークを移転してイトーキ東京ロジスティクスセンターを開設、23年10月に京都工場内に共創空間・開発工房「カロッツェリア」を開設、23年11月にイトーキ東京BASEを開設した。

■中期経営計画

 中期経営計画「RISE TO GROWTH 2026」では、持続的な成長力を高めることをテーマに、重点戦略「7Flags」およびESG戦略を掲げ、株主還元も強化(配当性向目標引き上げ、株主優待制度新設、自己株式取得)する方針とした。また資金調達の多様化や安定性を図るため、25年1月には格付情報センターより新規に格付「A―」、格付の方向性「安定的」を取得した。

 中期経営計画の目標値としては、26年12月期の売上高1500億円(ワークプレイス事業1060億円、設備機器・パブリック事業420億円)、営業利益140億円(ワークプレイス事業110億円、設備機器・パブリック事業30億円)、営業利益率9%、ROE15%を掲げている。また3年合計の投資額は戦略投資250億円、R&D投資50億円、設備投資100億円、人的資本投資100億円としている。

 7Flagsは、Office1.0領域(プロダクトベースの商品販売事業)およびOffice2.0領域(空間ベースの商品ソリューション提供事業)における付加価値提案強化と売上・利益確保、Office3.0領域(働き方ベースのオフィスDX事業)における最適な働き方・オフィス空間を提供するサービスの開発、専門施設領域(物流施設領域・研究施設領域)における開発・エンジニアリングへのリソース重点配分、グループ生産供給体制再編や社内ITインフラ刷新による生産・業務効率向上と高収益化、構造改革プロジェクトの水平展開によるグループシナジーの追求、人事制度改革を軸とする人的資本投資、成長戦略投資・社員還元・株主還元の計画的実践を推進する。

 24年2月にはOffice3.0領域の新規サービス第一弾としてData Trekkingをリリースした。24年3月にはAIスタートアップ企業の澄と生成AI共同開発契約を締結した。オフィスデザイン自動生成AIと関連したアプリケーションを開発する。24年6月にはDXサービスを展開するアルサーガパートナーズに出資した。24年7月にはRFIDのロケーションテックカンパニーであるRFルーカスに出資した。同社のオフィス家具にRFルーカスのRFIDを付与することで家具のIoT化を推進する。

 24年8月にはオフィスワーカーの活動を画像解析で測定するアプリケーションの研究開発を開始した。24年9月にはイトーキ中央研究所が10年後を見据えたオフィスとモノづくりのビジョンを発表した。24年10月には設備機器・パブリック事業において調剤薬局向け薬剤自動ピッキングシステムを25年4月より発売すると発表した。25年7月には設備機器・パブリック事業の新ビジョンを発表した。また松尾研究所とAI技術を活用した「オフィスにおけるマルチモーダルデータ活用による生産性評価研究」を開始した。

 株主還元強化については、目標配当性向を従来の「30%以上」から「40%を目指す」に引き上げて24年12月期より実施した。また株主優待制度を新設(24年6月末対象より実施)し、毎年6月末日時点で5単元(500株)以上保有株主を対象に、イトーキオンラインショップで利用可能なクーポンコードなど(A~Dより1点選択)を贈呈する。なお6月19日に25年6月末を基準日とする株主優待内容の詳細を発表(詳細は会社HP参照)した。

■サステナビリティ経営

 22年7月にサステナビリティ経営の実現に向けてマテリアリティを刷新した統合報告書2022を発行、22年8月に厚生労働省より「えるぼし」の3つ星(3段階目)認定を取得した。23年2月には、JobRainbow社主催のダイバーシティ&インクルージョンに取り組む企業を認定する日本最大のアワード「D&I Award 2022」において、最高ランク「ベストワークプレイス」に認定された。

 23年7月には育児休業を取得後に復職した社員に「育児休業復職支援金」の支給を開始、23年10月にはサプライチェーン全体の共存共栄に向けてパートナーシップ構築宣言を作成・公表した。23年12月には武蔵野大学データサイエンス学部と産学連携で学習成果証明システムを共同開発し、その評価を証明する学習成果証明書をNFTによって共同発行した。

 25年2月にはスポーツ庁より「スポーツエールカンパニー2025」に認定された。8年連続の認定で、昨年に続いて「シルバー認定」となった。25年3月には「令和6年度東京都スポーツ推進モデル企業」に認定(平成27年度、令和3年度、令和5年度に続いて4度目)された。また25年3月には経済産業省と日本健康会議が共同で選定する「健康経営優良法人2024大規模法人部門ホワイト500」に認定された。オフィス家具事業を展開する企業としては初の9年連続認定である。25年7月には同社グループが掲げた温室効果ガス排出削減目標がSBTi認定を取得した。

■25年12月期は上方修正して増収増益幅拡大

 25年12月期の連結業績予想は、25年8月4日付で上方修正して、売上高が前期比8.3%増の1500億円、営業利益が19.1%増の120億円、経常利益が19.9%増の120億円、親会社株主帰属当期純利益が15.5%増の83億円としている。配当予想は据え置いて、前期比10円増配の65円(期末一括)としている。連続大幅増配で、予想配当性向は38.6%となる。

 前回予想(25年2月13日付の期初計画値)に対して売上高を50億円、営業利益を5億円、経常利益を5億円、親会社株主帰属当期純利益を3億円、それぞれ上方修正した。引き続きワークプレイス事業が好調に推移するほか、設備機器・パブリック事業が前回予想を大幅に上回る見込みとなった。

 第2四半期累計(中間期)の連結業績は売上高が前年同期比9.3%増の792億44百万円、営業利益が54.8%増の106億25百万円、経常利益が53.5%増の104億97百万円、親会社株主帰属中間純利益が36.8%増の69億60百万円だった。

 増収・大幅増益だった。ワークプレイス事業の好調が牽引し、中間期として売上高は3期連続で過去最高を更新し、営業利益も過去最高を更新した。営業利益38億円増益の要因分析は、売上増加に伴う利益増加が27億円増(うちワークプレイス事業で18億円増、設備機器・パブリック事業で9億円増)、売上総利益率改善が31億円増(空間設計・コンサルティングから手掛けるオフィス案件の獲得や24年7月のカタログ改定効果により同社単体ベースの売上総利益率は2.2ポイント上昇)、販管費の増加が20億円減(業容拡大に伴う人件費の増加、DX推進のためのIT基盤強化など)だった。なお営業利益率は3.9ポイント上昇して13.4%となった。

 ワークプレイス事業は売上高(外部顧客への売上高)が8.3%増の585億71百万円、営業利益が59.1%増の83億22百万円だった。ハイブリッドな新しい働き方にあわせたオフィスリニューアル・移転案件を中心に増収となり、提供価値向上による利益率改善も寄与した。人的資本経営に寄与するオフィスへの投資が、首都圏マーケットにとどまらず、地方都市へも広がりを見せている。

 設備機器・パブリック事業は売上高が12.6%増の198億97百万円、営業利益が41.3%増の22億21百万円だった。物流施設向けは資材高等を背景とする着工・竣工遅れの影響を受けたが、研究施設向け設備が好調に推移し、増収効果や利益率改善効果により大幅増益だった。

 その他は売上高が0.6%減の7億75百万円、営業利益が30.9%増の81百万円だった。

 全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が427億44百万円で営業利益が74億22百万円、第2四半期は売上高が365億円で営業利益が32億03百万円だった。なおオフィス引越等が年度末(3月)に集中する傾向があるため、同社の業績も第1四半期(1月~3月)に偏重する傾向がある。

 通期の修正後のセグメント別計画は、ワークプレイス事業の売上高が10.6%増の1130億円で営業利益が21.3%増の97億円、設備機器・パブリック事業の売上高が4.3%増の360億円で営業利益が27.8%増の23億円としている。売上高は中期経営計画最終年度26年12月期の目標(1500億円)を1期前倒して達成する見込みであり、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は上値試す

 株価は高値更新の展開だ。目先的にはやや過熱感もあるが、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。8月15日の終値は2440円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS168円22銭で算出)は約15倍、今期予想配当利回り(会社予想の65円で算出)は約2.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1001円13銭で算出)は約2.4倍、そして時価総額は約1303億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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