【どう見るこの相場】2025年IPO初値勝率78%、セカンダリーの失速鮮明に

■「大きく産んで小さく育てる」IPO市場、期待裏切る後半戦

 48勝2分10敗である。2025年の新規株式公開(IPO)株の初値パフォーマンスである。前週末19日にIPOされた3社を加えた61社のうち、初値が公開価格を上回った銘柄が勝ちで48社、同値の引き分けが2社、下回った負けが10社で、勝率は78%となる。この勝率は、プロ野球やサッカーならブッチギリの優勝間違いなしで、将棋界の全八大タイトルのうち六タイトルを保持している藤井聡太六冠の勝率80%にわずかに及ばないだけである。

 ただ初値に果敢にトライした投資家が、この高勝率を手放しで喜べるかといえば話は別だ。公開価格の4.4倍で初値をつけ2025年の初値倍率トップとなったフラー<387A>(東グロース)でもそうだが、問題は初値形成後のセカンダリーである。公開高人気のあとに投資家が、首尾よく高値で売り抜けてリターンをゲットできたかどうかである。IPO時の公開価格と前週末19日の終値を比較すると、このセカンダリーの勝率は大きくダウンする。19日の終値が公開価格を下回った銘柄は22社、上回っているのは39銘柄でその公開価格比の勝率は63%に下がった。初値を下回っている銘柄も36銘柄の59%と多く、3銘柄は上場来安値を更新した。フラーは、公開価格は上回っているものの、初値からは7割超もの下値水準にいる。IPO株投資の要諦は、「小さく産んで大きく育てる」とされているが、結果的に「大きく産んで小さく育てる」逆パフォーマンスを投資家に強いていることになる。

■相互関税ショックとAI相場の陰で沈むIPO株、グロース市場逆風の実像

 このパフォーマンス・ダウンは、相場環境そのものがIPO株にアゲインストであった側面があったことは否定できない。今年4月7日には米国のトランプ大統領の相互関税発動で日経平均株価が、2644円安とショック安し、この日にIPOされたIACEトラベル<343A>(東証スタンダード)は、公開価格の1000円を大きく下回る864円で初値をつける割を食った。その後の「エヌビディア祭り」、「AI(人工知能)祭り」などで日経平均株価が、最高値を更新した時も東証グロース市場は、まったくの圏外で、東証グロース市場指数は右肩下がりの調整一方であった。さらに1年前の昨年10月のIPO株だが、オルツが、今年8月に循環取引による売り上げの虚偽記載で上場廃止となったこともIPO投資への警戒感を強めた。かつて相場の波乱時には「シコリのないIPO株」として逆行人気となり、「直近IPO株」などとハヤし立て集中買いしたこともあったが、そんな相場シーンなどにはお目に掛かれなかった。

 2025年のIPO株は、このあと12月25日まで5社の公開が予定され、年間66社となるが、公開会社数は、2年連続の減少で、2013年以来12年ぶりの低水準となる。さらに来年2026年も、オルツの不祥事に対応して東証が上場審査を厳格化することや、東証グロース市場の上場基準を見直して上場10年後に時価総額40億円以上としていたのを5年後に100億円以上とハードルを上げたことで、証券会社のなかには引受業務から撤退するケースもあって、上場予備軍は主幹事証券の選定に困り難民化するとの予想もあってIPO件数に大きな望みは持てないとするのが一般的となっている。

■IPO株にリベンジ相場の兆し、パワーエックス急伸が示す転機

 それだけに今年公開の66社は、希少価値があるはずである。しかもIPO以降もう1年も経とうとするIPO株が、まだ初値どころか公開価格まで下回っているとすれば株主や投資家にどう申し開きするか説明責任を迫られる。株価低迷にはリベンジせざるを得ないとも想定される。IPOそのものは例年、新年の1月、2月に端境期となる。IPO株のセカンダリー相場には絶好のタイミングだろう。現に前週末19日にこれを予兆させるような初値形成とその後のセカンダリーを展開したIPO株があった。パワーエックス<485A>(東証グロース)である。同社株は、公開価格1220円でIPOされ、初値は、資金吸収額が大きく業績も赤字予想にあることが響き1130円と公開価格を7%超下回ってつけたが、引け値は1430円とストップ高した。俄然、年内残り5銘柄への注目度が高まるとともに、今年のIPO株のリベンジ相場への期待も高めると想定される。

 もちろんリベンジ相場が期待されるIPO株は、それだけの資格要件、カタリスト(株価材料)が不可欠である。66社のIPO株の内訳は、東証プライム市場への直接上場が7社、東証スタンダード市場上場が12社、東証グロース市場が41社、他市場が6社となっているが、バリュー株妙味満載のスタンダード市場や株主力株人気を高めそうな直接上場株やからマークするところだろう。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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