ファーストコーポレーション、造注方式強化で収益拡大へ、完成工事高堅調で増益維持

 ファーストコーポレーション<1430>(東証スタンダード)は、造注方式を特徴として分譲マンション建設などを展開するゼネコンである。当面の目標である年商500億円の早期実現と、次のステージとなる年商1000億円へのステップアップに向けて、業容の拡大と利益水準の向上に取り組んでいる。26年5月期第1四半期は前年同期の大規模案件の反動で共同事業収入が減少したため減益だったが、通期増益予想を据え置いている。不動産事業の反動減があるものの、完成工事高が堅調に推移し、請負価格適正化への取り組みなどで売上総利益率が上昇する。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は利益確定売りで9月の年初来高値圏から反落し、さらに第1四半期業績も嫌気して水準を切り下げる形となったが、低PERや高配当利回りなど指標面の割安感も評価材料であり、調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。

■造注方式が特徴のゼネコン

 東京圏(1都3県)中心に分譲マンション建設などを展開するゼネコンである。造注方式による大手マンション・デベロッパーからの特命受注と高利益率、品質へのこだわりによる安心・安全なマンション供給を特徴としている。

 造注方式というのは、当社がマンション用地を開発し、マンション・デベロッパーに対して土地・建物を一体とする事業プランを提案し、マンション・デベロッパーから特命で建築を請け負うという受注方式である。入札方式に比べて好条件での請負が可能となる。

 品質に関しては「安全と品質の最優先」を掲げて、施工品質管理標準・マニュアル類の整備、階層別研修会の実施、施工検討会による安全で堅実な施工計画の策定、巡回検査による正確性の担保など、良質で均一な品質を維持するための取り組みを推進している。また第三者機関による検査導入については、施主が第三者機関による検査を実施しない場合でも、建造物の安全性を確保するために重要な杭工事、配筋工事、レディーミクストコンクリートを対象として、当社が自前で第三者機関による検査を導入するなど、安心・安全なマンション供給に向けた体制を整備している。

■当面の目標は年商500億円企業

 25年5月期は、建設事業の売上高が226億41百万円で営業利益(全社費用等調整前)が17億40百万円、不動産事業(共同事業収入を含む)の売上高が202億74百万円で営業利益が21億87百万円、その他(設計業務、不動産賃貸、マンション管理運営など)の売上高が2億78百万円で営業利益が2億34百万円の損失だった。不動産売上は大型案件によって変動する可能性がある。建設事業の受注高は8件合計266億29百万円(うち造注が85億13百万円、造注比率32.0%)で、期末受注残高は357億60百万円だった。なお22年11月に受注した千葉駅東口西銀座B地区優良建築物等整備事業新築工事(仮称:26年3月完成予定)については、補助事業として入札手続を経たため一般請負にカウントしている。

 24年7月に公表した新中期経営計画「Innovation2024」(25年5月期~27年5月期)の経営目標値には、最終年度27年5月期の売上高400億円(完成工事高203億円、不動産売上166億円、共同事業収入24億円、その他売上7億円)、売上総利益49億40百万円(完成工事総利益22億30百万円、不動産売上総利益20億円、共同事業収入総利益6億20百万円、その他売上総利益90百万円)、売上総利益率12.4%(完成工事総利益率11.0%、不動産売上総利益率12.0%、共同事業収入総利益率25.8%、その他売上総利益率12.9%)、営業利益29億50百万円、経常利益28億円、親会社株主帰属当期純利益19億40百万円、受注高200億円(うち造注50億円)を掲げている。

 当面の目標である年商500億円の早期実現と、次のステージとなる年商1000億円へのステップアップに向けて、業容の拡大と利益水準の向上に取り組み、持続的成長と中長期的な企業価値向上を目指すとしている。重点施策として、資本収益性の向上では造注比率の向上、建設事業の強化、再開発事業の推進により、数値目標の着実な達成を目指す。成長投資としてはM&Aの積極活用に加え、研究開発投資や人的資本投資も強化する。また市場評価の向上に向けて、連結配当性向30%以上や機動的な自己株式取得により株主還元を強化するほか、IR活動も強化する。

 中核事業の造注方式の強化では、東京郊外の好立地アクティブ・シニア向けマンションなどを推進するほか、九州エリアへ進出した。21年9月には新ジャンルの分譲マンション「CANVAS」ブランドを立ち上げた。暮らす方々の身体的・精神的・社会的な健康状態がバランス良く調和の取れた状態であることを意味する概念「ウェルビーイング」をブランドコンセプトとして、子会社ファーストエボリューションが竣工後の管理・販売代理・入居者サービス提供を行う。24年12月には、長崎県大村市の(仮称)大村バスターミナル地区第一種市街地再開発事業に事業協力者として事業参画することを発表した。

 M&A・アライアンスでは、23年9月に小林工業(群馬県前橋市)と共同住宅建設に係る請負工事受注に関して業務提携した。また23年12月に吉田組(群馬県桐生市)と共同住宅建設に係る請負工事受注に関して業務提携した。

 またサステナビリティ経営に関しては24年7月にマテリアリティ(重要課題)を特定し、サステナビリティ基本方針およびサステナビリティ推進委員会のもとで取り組みを強化している。

■26年5月期1Q減益だが通期増益予想据え置き

 26年5月期の連結業績予想は、売上高が前期比7.4%減の400億円、営業利益が8.5%増の28億円、経常利益が2.1%増の25億30百万円、親会社株主帰属当期純利益が4.8%増の17億50百万円としている。全社ベースの受注高は5件合計200億円の計画としている。

 第1四半期の連結業績は売上高が前年同期比3.5%減の74億21百万円、営業利益が23.7%減の4億30百万円、経常利益が22.9%減の4億27百万円、親会社株主帰属四半期純利益が22.5%減の2億83百万円だった。減収減益だった。前年同期の大規模案件の反動で共同事業収入が減少した。

 売上高は完成工事高が4.2%増の57億26百万円、不動産売上高が5.9倍の15億24百万円、共同事業収入が93.7%減の1億20百万円、その他の売上高が60.1%増の49百万円だった。売上総利益は完成工事総利益が81.4%増の6億75百万円、不動産売上総利益が19倍の1億45百万円、共同事業収入総利益が98.0%減の12百万円、その他の売上高総利益が26百万円の損失(前年同期は51百万円の損失)だった。完成工事総利益率は11.8%で、5.0ポイント上昇した。造注案件に加え、一般受注の利益率も回復した。不動産事業の土地売却は2件で計画水準だった。

 なお報告セグメントベースでは、建設事業は売上高が4.2%増の57億26百万円で営業利益(全社費用等調整前)が85.8%増の6億57百万円、不動産事業は売上高が24.1%減の16億45百万円で営業利益が84.7%減の76百万円だった。

 通期の連結業績予想は据え置いて、減収ながら増益・連続増配予想としている。不動産事業の反動減があるものの、完成工事高が堅調に推移し、請負価格適正化への取り組みなどで売上総利益率が上昇する。なお25年7月に販売用不動産の売却(東京都世田谷区、土地、引渡部25年7月30日)を発表している。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主還元策

 株主還元については、連結配当性向30%以上を基本方針として、内部留保の状況等を勘案して決定する。この基本方針に基づいて26年5月期の配当予想は、前期比2円増配の44円(期末一括)としている。連続増配で予想配当性向は30.1%となる。

 株主優待制度(詳細は会社HP参照)については、毎年11月末現在の株主を対象として、保有株式数および保有期間に応じてクオカードを贈呈している。

■株価は調整一巡

 株価は利益確定売りで9月の年初来高値圏から反落し、さらに第1四半期業績も嫌気して水準を切り下げる形となったが、低PERや高配当利回りなど指標面の割安感も評価材料であり、調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。10月23日の終値は954円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS146円42銭で算出)は約7倍、今期予想配当利回り(会社予想の44円で算出)は約4.6%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS816円73銭で算出)は約1.2倍、そして時価総額は約127億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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