インフォマート、25年12月期は利益を上方修正し大幅増益予想、利用企業120万社超で収益基盤拡大
- 2025/11/14 07:42
- アナリスト銘柄分析

インフォマート<2492>(東証プライム)は、企業間の商行為を電子化する国内最大級のクラウド型BtoB電子商取引プラットフォーム(飲食業向けを中心とする受発注、全業界を対象とする請求書など)を運営している。25年12月期は利益を上方修正して大幅増益予想としている。新規利用企業増加や料金改定効果に加え、データセンター費用減少なども寄与する。修正後の通期利益予想に対する第3四半期累計の進捗率は高水準である。ストック収益が積み上がるビジネスモデルであることも勘案すれば、通期利益予想は再上振れの可能性があり、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は水準を切り下げる形でやや軟調だったが、調整一巡して直近安値圏から反発の動きを強めている。好業績を評価して出直りを期待したい。
■国内最大級のBtoB(企業間電子商取引)プラットフォーム
企業間の商行為を電子化する国内最大級のクラウド型BtoBプラットフォームを運営している。24年3月には食品卸と個人飲食店の受発注デジタル化サービスを展開するタノムを子会社化した。
主要プラットフォームとしては、BtoB-PF FOOD事業では飲食店(主に外食チェーン)と食材卸・メーカー間の受発注業務を電子化する受発注、食の安全・安心に関わる商品規格書を電子管理する規格書、小・中規模飲食店向けの受発注ライト、LINEを使った発注が可能なTANOMU、店舗オペレーション管理ツールのV―Manage、BtoB-PF ES事業では全業界を対象に請求書発行・受取業務を電子化する請求書、安心・安全な契約書管理を実現する契約書、取引先との見積書・発注書・納品書・検収書をデジタル化するTRADE、業務用食品食材の商談をデジタル化する商談などがある。
23年7月には自治体のLGWAN(総合行政ネットワーク)に対応したBtoBプラットフォーム on LGWANを本格稼働、23年12月には紙やPDFなど様々な形式で受け取る請求書をAI OCRでデータ化するサービスBP Storage for 請求書の提供を開始した。また、多様な価値提供の一環および新たな収益源育成に向けて、100万社の顧客基盤に基づく商流データを活用したBtoB Financeを開発中(一部機能をリリース済み)である。
24年12月期の売上高は、BtoB-PF FOOD事業が99億49百万円、BtoB-PF ES事業が56億81百万円だった。主な収益は利用企業から得る使用料収入およびセットアップ費用である。受発注ではフード業界の買い手企業(外食チェーン、ホテル、給食等)から得る月額システム使用料、売り手企業(食材メーカー・卸等)から得る定額制または流通金額に係る従量制のシステム使用料、請求書ではシステム使用料(基本料金+従量制)などが柱となっている。
■26年12月期営業利益50億円目標
中期業績目標値には26年12月期売上高200億円、営業利益50億円、売上高営業利益率25%を掲げ、5年間平均のCAGR(売上高成長率)は全社16%(FOOD事業8%、ES事業30%)としている。
事業ビジョンとしては、同社が強みとするDtoD(Date to Date)方式のBtoBプラットフォームを最大限活かし、業界DtoD戦略(BtoB-PF請求書等の全業界向けサービスを普及させ、商流DXニーズが高い特定の業界を深掘りすることで大きな業界貢献と収益を上げていく戦略)で事業領域の深化拡大を目指すことを掲げている。また中期経営方針としては、BtoBプラットフォームの強化(新サービス・新プロダクツの創出を含む機能強化、販売力強化、認知度向上、CS向上など)、増収増益基調の継続と高収益性への回帰、出資先のシナジー拡大と収益化を掲げている。24年12月にはBtoBプラットフォームが、クラウドセキュリティの国際標準規格ISO/IEC27017認証を取得した。
なおFood Techに特化したファンドを設置し、20年6月にはAIを活用した飲食店向けの自動発注クラウドサービス「HANZO自動発注」を開発・提供するGoalsに出資して資本業務提携(22年6月に追加出資)した。23年6月には、国内の旅館・宿泊業の再生支援を行うRQ旅館再生ファンド投資事業有限責任組合に出資した。
また25年10月には、子育てサポート企業として厚生労働大臣より「プラチナくるみん認定」を取得した。
■利用企業数は増加基調
利用企業数の増加に伴って収益が拡大するストック型収益モデルである。利用企業数は増加基調で、24年12月期末の全社ベースの利用企業数は23年12月期末比13万8123社増加の114万9299社となった。主要プラットフォームでは、受発注の買い手企業が189社増加の4104社、売り手企業が2089社増加の4万6133社となった。請求書は利用企業数が13.8万社増加の114.1万社、有料契約企業が1071社増加の1万2879社となった。なお受発注の年間流通額は25年9月末時点で2兆1022億円となり、年間累計で2兆円を突破した。
25年8月には請求書の利用企業数が120万社を突破した。これは日本国内における企業数約368万社のうち約3分の1に相当し、東証プライム市場上場企業の利用率は約99%(24年12月時点)に達している。また25年11月には、
国内最大級のBtoBプラットフォームである。東京商工リサーチの調査(24年6月)においてはBtoBプラットフォーム請求書が、請求書クラウドサービス市場国内シェアNO.1を4年連続で獲得した。24年9月には未来トレンド研究機構調べ(調査期間24年7月~8月)の受発注クラウドサービス市場における受発注流通金額において国内シェアNo.1を獲得した。
BOXIL SaaS AWARD Autumn 2024においては、BtoBプラットフォーム請求書が請求書発行部門で、BtoBプラットフォーム受発注が受発注管理システム部門で、それぞれ1位を受賞した。アイティクラウドのITreview Grid Award 2024 Springでは、BtoBプラットフォーム請求書が請求書・見積書作成ソフトおよび請求書受領サービスの2カテゴリで最高位のLeaderを受賞した。24年6月にはアイティクラウドのITreviewにおいて、Customer Voice Leaders 2024をエグゼクティブ活用部門で受賞した。25年9月にはファインディの「Findy Team+Award2025」において「Organization Award」に選出された。
■アライアンスも積極推進
アライアンス戦略も積極推進している。21年10月に串カツ田中ホールディングス<3547>と合弁で設立したRestartzは、22年11月に飲食店舗運営DXを支援する店舗オペレーション管理アプリ「V-Manage」をリリースし、23年4月に串カツ田中ホールディングスの全ての直営店舗(155店舗)への導入を開始した。そして23年8月末に利用企業数が100社を突破した。
24年11月にはJTBのグループ企業であるJTB旅連事業と業務提携した。宿泊施設と生産者・加工食品業者をつなぎ、食材の調達業務効率化する「ホテル・旅館向けマーケットプレイス」を「BtoBプラットフォーム商談」内に開設し、宿泊業界のデジタル化を推進する。24年12月には国立大学法人東京大学大学院工学系研究科早矢仕研究室とAIを用いた共同研究を開始した。
■25年12月期は利益を上方修正して大幅増益予想
25年12月期連結業績予想(25年10月31日付で売上高を小幅下方修正、各利益を大幅上方修正)は、売上高が前期比20.4%増の188億23百万円、営業利益が134.0%増の28億09百万円、経常利益が135.0%増の27億90百万円、親会社株主帰属当期純利益が128.9%増の15億円としている。配当予想は据え置いて前期比2円72銭増配の4円46銭(第2四半期末2円23銭、期末2円23銭)としている。連続増配で予想配当性向は67.3%となる。
前回予想(25年2月14日付の期初公表値、売上高194億91百万円、営業利益23億円、経常利益22億83百万円、親会社株主帰属当期純利益13億56百万円)に対して、売上高を6億68百万円下方修正したものの、営業利益を5億08百万円、経常利益を5億06百万円、親会社株主帰属当期純利益を1億43百万円それぞれ上方修正した。売上面はシステム使用料が期初計画を下回るが、各利益についてはBtoB-PF ES事業の請求書における変動費的な手数料の未発生により、売上総利益率が大幅に改善する見込みだ。
修正後のセグメント別計画については、BtoB-PF FOOD事業の売上高が20.0%増の119億38百万円で営業利益が40.0%増の27億22百万円、BtoB-PF ES事業の売上高が21.2%増の68億85百万円で営業利益が86百万円(24年12月期は7億46百万円の損失)としている。売上総利益率の計画は全社ベースが10.8ポイント上昇の72.6%で、セグメント別にはBtoB-PF FOOD事業が12.2ポイント上昇の77.9%、BtoB-PF ES事業が8.6ポイント上昇の63.5%としている。
第3四半期累計の連結業績は、売上高が前年同期比22.8%増の138億03百万円、営業利益が3.6倍の24億07百万円、経常利益が3.6倍の23億96百万円、親会社株主帰属四半期純利益が2.8倍の15億01百万円だった。全社合計の利用企業数は10.8%増の122万5210社となった。
大幅増収増益だった。新規利用企業増加や料金改定効果(BtoBプラットフォーム受発注は24年8月実施、BtoBプラットフォーム請求書は25年4月実施)に加え、サーバーのクラウド移行完了(24年9月)によってデータセンター費用が減少し、売上利益率が大幅に改善(15.2ポイント上昇して73.1%)した。営業利益17億36百万円増加の分析は、増収効果で25億59百万円増加(FOODが17億25百万円増加、ESが8億33百万円増加)、売上原価減少で10億25百万円増加(データセンター費が11億46百万円減少、ソフトウェア償却費が53百万円増加、手数料等が67百万円増加)、販管費増加で18億48百万円減少(人件費が7億03百万円増加、販売促進費が2億73百万円増加、支払手数料が2億38百万円増加、のれん償却費が4億13百万円増加、その他が2億18百万円増加)としている。
BtoB-PF FOOD事業は売上高が24.5%増の87億71百万円で営業利益が110.7%増の22億17百万円だった。主力の受発注のほか、受発注ライトやTANOMUも利用企業数が増加し、受発注の価格改定効果も寄与した。売上高の内訳は受発注が29.4%増の65億14百万円、受発注ライト&TANOMUが29.5%増の8億25百万円、その他が4.2%増の14億31百万円だった。受発注の利用企業数は買い手企業が205社増の4258社(店舗数は4969社増の8万1328店舗)で、売り手企業が2080社増の4万7714社となった。なお売上総利益率は18.1ポイント上昇して78.3%となった。
BtoB-PF ES事業は売上高が19.9%増の50億31百万円で営業利益が1億89百万円(前年同期は3億82百万円の損失)だった。大手企業とそのグループ企業を中心に請求書の新規利用が増加したほか、TRADEも順調に増加した。売上高の内訳は請求書が21.7%増の39億52百万円、TRADEが59.6%増の3億19百万円、その他が1.4%増の7億60百万円だった。請求書の利用企業数は11.9万社増の121.7万社、有料企業数(受取モデルと発行モデルの合計)は2340社増の1万5009社(受取モデルが1291社増の8732社、発行モデルが1049社増の6277社)となった。有料企業数は25年4月の基本料金改定により、受取モデルと発行モデルの両方が利用可能となった利用企業数が増加した。なお売上総利益率は10.1ポイント上昇して64.1%となった。
全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が43億04百万円で営業利益が5億80百万円、第2四半期は売上高が46億96百万円で営業利益が8億40百万円、第3四半期は売上高が48億02百万円で営業利益が9億86百万円だった。
修正後の通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が73%、営業利益が86%、経常利益が86%、親会社株主帰属当期純利益が100.1%で、利益進捗率が高水準ある。ストック収益が積み上がるビジネスモデルであることも勘案すれば、通期利益予想は再上振れの可能性があり、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株価は反発の動き
株価は水準を切り下げる形でやや軟調だったが、調整一巡して直近安値圏から反発の動きを強めている。好業績を評価して出直りを期待したい。11月13日の終値は333円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS6円63銭で算出)は約50倍、今期予想配当利回り(会社予想の4円46銭で算出)は約1.3%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS48円23銭で算出)は約6.9倍、そして時価総額は約864億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)




















