【どう見るこの相場】3月相場に緊急事態――中東有事とエネルギー不安を乗り越える自己株式取得戦略
- 2026/3/23 08:48
- どう見るこの相場

■自己株式取得株に「PKO」効果を期待しリスク最小化も一策
どこもかしこも春の嵐である。前日22日が千秋楽の大相撲は、「春場所は荒れる」のジンクス通りの展開で終わったが、それ以上に大荒れなのが足元の3月相場である。日経平均株価は日々1000円幅以上で上昇・下落を繰り返す高速エレベーター相場となり、前月2月末から3連休前の19日までで約5500円下落した。19日の東証プライム市場では値上がり銘柄数はわずか40銘柄にとどまり、約96%の銘柄が値下がりする惨状であった。「花に嵐のたとえもあるぜ」と満開前の桜を愛でる余裕はなく、緊急事態が続いている。
■エネルギー供給不安がインフレ再燃と金融政策を揺るがす
背景には、米国とイスラエルによる2月28日のイラン急襲攻撃と、その後のイランの報復攻撃がある。武力衝突の長期化・泥沼化への懸念が強まっている。とりわけイランの報復は、湾岸産油国の石油・天然ガス施設への空爆やホルムズ海峡への機雷敷設などに及び、エネルギー供給不安から原油先物(WTI)は急騰した。これによりインフレ再燃懸念が強まり金利が上昇、各国中央銀行の金融政策にも影響を及ぼす局面となっている。
もともとトランプ大統領の軍事行動の真意は不透明とされる。米国はシェールオイル革命により世界最大の原油輸入国から生産国へ転じ、中東関与の必要性は低下していた。それにもかかわらず唐突な軍事介入に踏み切った形であり、イランの徹底抗戦は十分に織り込まれていなかった可能性がある。この武力衝突の帰趨は、4月に向けた春相場の方向性を左右する要因となる。地上侵攻の拡大か、停戦合意によるホルムズ海峡の航行再開か、複数のシナリオが想定されるが、現時点ではいずれも不透明である。
■「リスクオフ」相場で輝く自己株式取得、3月だけで33社が株価防衛に動く
こうした状況下では、投資スタンスは「リスクオン」より「リスクオフ」、「資産形成」より「資産防衛」を優先する局面となる。同時に上場企業側でも株価下支えを目的とした「PKO(株価維持活動)」の活発化が見込まれる。東証からはPBR1倍割れの是正や単元株価50万円未満への対応が求められており、株価急落はアクティビストの標的となり得る。市場全体が下落しているから安心という状況ではない。
【PKO(株価維持操作)とは・・・】
Price Keeping Operationの略で、「株価維持操作」または「株価下支え策」を指す俗称である。本来は国連のPKO(平和維持活動=Peace Keeping Operation)になぞらえた日本独自の市場用語で、株価の下落を防ぐために行われる買い支え行為の総称として使われる。
その代表策が自己株式取得である。投資家の買い手不足が強まるなかで企業自らが買い手となる資本政策であり、株価が割安であるとのシグナル効果も期待される。実際、3月2日以降19日までに33社が自己株式取得を発表した。そのなかには株価が急騰した銘柄もある。
■山王株が3日で2倍超、業績上方修正と自社株買いが「PKO」として即効
山王<3441>(東証スタンダード)はその一例である。同社は3月13日に今7月期業績の上方修正と自己株式取得を同時発表し、純利益が期初予想から2.9倍に上振れ、5期ぶりに過去最高更新を見込むとした。これを受け株価は2日連続ストップ高を交え2749円まで急伸し、3日間で2.07倍となった。取得規模は15万株(発行済み株式総数の3.5%)、総額2億円と小規模であったが、立会外買付で迅速に実施され「PKO」として即効性を示した。
このほか年初来、多くの企業が自己株式取得を実施しており、特に取得額1000億円超の大型案件では複数回の増額変更も目立つ。ソニーグループ<6758>(東証プライム)は当初1000億円の取得枠を段階的に拡大し、最終的に2500億円へ引き上げた。取得の継続により平均取得単価は低下し、結果としてナンピン買いの形となり、株価防衛意識の強さがうかがえる。
以上を踏まえ、春相場では自己株式取得銘柄が相対的にリスクを抑えた投資対象となり得る。山王のような急騰例は限定的とみられるが、企業自身が買い手となることで下値の信頼性は高まる。中東情勢による市場混乱下で取得を発表した銘柄や、大規模取得を進める割安株の中から、次の有力候補が浮上する可能性がある。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)





















