【忠田公夫の経済&マーケット展望】中国の財政出動、サミット議長国日本の経済に対する姿勢などが焦点に

忠田公夫の経済&マーケット展望

 2月8日付けの当欄で、「NYダウだけが1月20日に一時1万5450ドルまで突っ込んだものの、下値サポートの1万5370ドルを割り込まなかった。(中略)世界景気は昨年10月以降、明らかに減速。米国が今年の前半に追加利上げを考慮するようなら、世界の金融市場をさらなる混乱に導きかねない」と述べた。

 2月11日には原油が26.21ドルまで下落。ドル円も一時111円割れの円高に振れたことで、翌12日に日経平均は一時1万4865円の安値をつけるに至った。だが、NYダウだけは2月11日に一時1万5503ドルまで売られたが、重要なサポートレベルを割ることはなかった。

 しかも、注目された2月10~11日の議会証言でイエレンFRB議長は「海外経済の動向が、米国の経済成長にリスクをもたらしている」との認識を示し、中国発の世界経済の減速懸念を背景にした市場の混乱が、株価下落やドル高を通じ、米経済に悪影響を与えかねないと警戒感をあらわにした。

 さらに、人民元相場の下落が中国経済の先行き不安を強めたり、原油安が新興国や資源国の金融情勢を緊迫化させたりするなど、懸念材料を列挙し、「リスクが現実になれば、市場環境はより厳しくなる」として、世界経済が悪循環に陥る恐れにも言及した。イエレン議長のこのような認識は、景気判断や利上げペースについて極めて慎重に検討していく考えを示唆したもので、世界の金融市場はその後、次第に落ち着きを取り戻していくこととなった。

 先週末、NYダウは1万7006ドル、日経平均は1万7014円まで反騰。年初来の急激なリスクオフ相場は、当面、戻りを試す局面に入った。今後の注目点としては、中国が国内景気を立て直すために財政出動に踏み切るのかどうか、あるいはECBの追加緩和策の中身と域内の弱体化した銀行に対しなんらかのアクションを起こすのかどうか、また、伊勢志摩サミットの議長国をつとめる日本が、世界経済を好転させるためにいかなる役割を担うのか、といった点を見極めていくことが大切だ。

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