【アナリスト水田雅展の銘柄分析】アートスパークHDは14年12月期業績を増額修正、自動運転関連のテーマ性もあり1月の昨年来高値試す

銘柄分析

 電子書籍ビューアやグラフィクス制作支援ソフトのアートスパークホールディングス<3663>(東2)は1月30日、前期(14年12月期)業績の増額修正を発表した。株価は急伸した1月13日の昨年来高値876円から反落して700円近辺でモミ合う展開だが、自動車の自動運転関連というテーマ性もあり、前期業績増額修正を評価して1月13日高値を試す展開だろう。これを突破すれば上げ足に弾みがついて13年10月高値1022円が視野に入りそうだ。

 グラフィクス技術のセルシスとエイチアイが12年4月に統合した持株会社で、電子書籍ビューア「BS Reader」やグラフィクスソリューションなどのコンテンツソリューション事業、グラフィクスコンテンツ制作支援ツールなどのクリエイターサポート事業、3Dグラフィックス描画エンジンなどのUI/UX事業を展開している。アプリケーション事業は戦略的に事業縮小を進めている。

 マルチデバイス対応の電子書籍ビューア「BS Reader」は、インフォコム<4348>グループのアムタスの電子書籍配信サービス「ekubostore」や、ソフトバンクモバイルのスマートフォン向け総合電子書籍サービス「スマートブックストア」など897以上の電子書籍配信サービスで利用されている。

 マンガ制作ソフト「ComicStudio」は累計出荷本数が160万本を超え、マンガ・イラスト制作ソフト「CLIP STUDIO」は40万本を超えている。クリエイターの創作活動を支援するサイト「CLIP」は14年6月末時点の登録者数が41万人となった。1月9日にはセルシスが、BCNの「BCN AWARD 2015」のグラフィクスソフト部門でNO.1メーカーになったと発表している。

 戦略分野に対して積極投資を推進している。13年12月にエイチアイが自動運転関連ベンチャーのZMPの第三者割当増資の一部を引き受け、14年2月にエイチアイがエイチアイ関西の株式を取得、14年4月にエイチアイが組み込み機器向けソフトウェア開発のユーアイズデザインの株式を取得した。

 エイチアイは、15年1月の自動車次世代技術専門展「オートモーティブ ワールド2015:第3回コネクティッド・カー EXPO」に、次世代車載HMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)や自動運転関連ベンチャーのZMPとのコラボレーションデモを展示した。また米国で開催された世界最大規模の家電見本市CESにおいても次世代車載HMIをデモ展示した。

 前期(14年12月期)の連結業績見通しについて1月30日に増額修正を発表した。前回予想(1月31日公表)に対して売上高を51百万円増額して前期比3.8%増の38億26百万円、営業利益を36百万円増額して99百万円の黒字(前期は69百万円の赤字)、経常利益を57百万円増額して93百万円の黒字(同68百万円の赤字)、純利益を33百万円増額して同40.5%増の59百万円とした。

 UI/UX事業における収益性の高いロイヤリティ収入が第4四半期(10~12月)に増加し、これに伴って営業利益と経常利益も増加する。また投資有価証券評価損26百万円を特別損失に計上するが、純利益は減益見通しから増益見通しに転じた。

 今期(15年12月期)は、コンテンツソリューション事業での法人向けグラフィクス関連の強化、クリエイターサポート事業での「CLIP STUDIO」シリーズの拡販、UI/UX事業での受託開発案件の受注活動強化、さらに製品開発の効率化や原価管理の徹底も寄与して収益改善基調だろう。

 株価の動きを見ると、急伸した1月13日の昨年来高値876円から利益確定売りで反落し、700円近辺でモミ合う展開だ。ただし目先的な過熱感が解消して調整一巡感を強めている。

 1月30日の終値680円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS8円90銭で算出)は76倍近辺、前々期実績PBR(前々期実績の連結BPS340円55銭で算出)は2.0倍近辺である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線、週足チャートで見ると13週移動平均線が接近して目先的な過熱感が解消し、14年3月307円をボトムとして下値切り上げの展開が続いている。自動車の自動運転関連というテーマ性もあり、前期業績増額修正を評価して1月13日の昨年来高値876円を試す展開だろう。これを突破すれば上げ足に弾みがついて13年10月の1022円が視野に入りそうだ。

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