【アナリスト水田雅展の銘柄分析】リンテックは中期成長力を評価して上値追い、06年2月高値が視野

銘柄分析

 粘着製品大手リンテック<7966>(東1)の株価は高値更新の展開だ。4月23日には年初来高値3090円まで上伸した。16年3月期も増収増益が予想され、中期成長力を評価して上値追いの展開だろう。06年2月の上場来高値3490円が視野に入る。なお5月8日に15年3月期決算発表を予定している。

 高度な粘着応用技術と表面改質技術(粘着剤や表面コート剤の開発・配合・塗工技術)に強みを持ち、印刷材・産業工材関連(シール・ラベル用粘着紙・粘着フィルム、ウインドーフィルム、自動車用・工業用粘着製品など)、電子・光学関連(半導体関連粘着テープ・装置、積層セラミックコンデンサー製造用コートフィルム、液晶用偏光・位相差フィルム粘着加工など)、洋紙・加工材関連(カラー封筒用紙、粘着製品用剥離紙・剥離フィルム、炭素繊維複合材料用工程紙など)の分野に幅広く事業展開している。

 14年4月スタートした3ヵ年中期経営計画「LIP-2016」では重点テーマをグローバル展開のさらなる推進、次世代を担う革新的新製品の創出、強靭な企業体質への変革、戦略的M&Aの推進、人財の育成とした。

 数値目標としては17年3月期売上高2400億円、営業利益200億円、経常利益200億円、純利益130億円、売上高営業利益率8%以上、そしてROE8%以上を掲げている。セグメント別では印刷材・産業工材関連が売上高1025億円、営業利益57億円、電子・光学関連が売上高943億円、営業利益88億円、洋紙・加工材関連が売上高432億円、営業利益55億円としている。

 海外展開に関しては、アジアを中心に拠点網を拡大している。15年1月には、東南アジアおよびインドなどにおける事業統括会社をシンガポールに設立した。包括的な事業戦略の立案・実行により同地域での事業展開の強化を図る方針だ。また現在、タイの工場で各種粘着製品の生産能力増強を進めている。

 研究開発面では建設中の研究所新棟が15年秋稼働予定である。最新鋭の大型研究設備の導入により、新製品開発のスピードアップを図る方針だ。また米国テキサス州の研究開発拠点(NSTC)では、新規シート材料の実用化に向けた研究開発を推進している。

 前期(15年3月期)の連結業績見通し(2月12日に売上高を減額、利益を増額修正)は、売上高が前々期比1.4%増の2060億円、営業利益が同23.5%増の170億円、経常利益が同32.9%増の175億円、純利益が同35.3%増の115億円、配当予想(2月12日に増額修正)が前々期比6円増配の年間48円(第2四半期末22円、期末26円)としている。

 第3四半期累計(4月~12月)は前年同期比2.0%増収、同21.0%営業増益、同26.3%経常増益、同26.6%最終増益で、通期見通しに対する進捗率は売上高74.5%、営業利益77.9%、経常利益78.8%、純利益84.7%だった。

 印刷材・産業工材関連は自動車用粘着製品、電子・光学関連は半導体関連粘着テープ・装置、積層セラミックコンデンサー製造用コートフィルム、洋紙・加工材関連は炭素繊維複合材料用工程紙などが好調に推移しているようだ。プロダクトミックス改善やコスト削減なども寄与して利益再増額の可能性もあるだろう。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)493億22百万円、第2四半期(7月~9月)511億67百万円、第3四半期(10月~12月)529億36百万円、営業利益は第1四半期39億75百万円、第2四半期47億79百万円、第3四半期44億86百万円だった。

 今期(16年3月期)についても、スマートフォン需要で電子・光学関連の好調が牽引し、国内の消費回復などで印刷材・産業工材関連、洋紙・加工材関連の増勢も期待される。タイでの増産投資などに伴って減価償却費が増加するが、プロダクトミックス改善、原燃料価格上昇に対応した製品価格改定、円安進行なども寄与して増収増益が予想される。中期的にも収益拡大基調だろう。

 なお6月24日開催予定の第121期定時株主総会における承認を前提として監査等委員会設置会社に移行する。コーポレート・ガバナンスのより一層の充実と経営のさらなる効率化を目指すとしている。

 株価の動きを見ると高値更新の展開だ。3月高値3070円から利益確定売りや3月期末の配当権利落ちで一旦反落したが、素早く切り返して4月23日には年初来高値3090円まで上伸した。中期成長力を評価する流れに変化はないだろう。

 4月24日の終値3005円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS159円42銭で算出)は19倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間48円で算出)は1.6%近辺、前々期実績PBR(前々期実績の連結BPS2100円87銭で算出)は1.4倍近辺である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線を回復した。また週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインとなって強基調の形だ。16年3月期も増収増益が予想され、中期成長力を評価して上値追いの展開だろう。06年2月の上場来高値3490円が視野に入る。

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