日本エム・ディ・エムは戻り試す

 日本エム・ディ・エム<7600>(東1)は、整形外科分野の医療機器専門商社で自社製品(米国子会社製品)を主力としている。21年3月期は新型コロナウイルス感染症患者優先の影響で、整形外科手術の延期・減少が予想されるため、一時的に減収減益予想としているが、中期的に収益拡大を期待したい。株価は下値を切り上げている。21年3月期減収減益予想に対するネガティブ反応は見られない。戻りを試す展開を期待したい。

■整形外科分野の医療機器専門商社、自社製品が主力

 人工関節製品、骨接合材料、脊椎固定器具など整形外科分野を主力とする医療機器専門商社である。米国子会社オーソデベロップメント(ODEV)社製品の拡販を推進し、メーカー機能強化によって高収益体質へ転換した。

 20年3月期の売上構成比は、日本が60.4%(人工関節25.0%、骨接合材料20.8%、脊椎固定器具12.2%、人工骨1.4%、その他1.0%)、米国が39.6%(人工関節39.4%、脊椎固定器具0.2%)だった。営業利益構成比(調整前)は日本が45.9%、米国が54.1%だった。自社製品比率は80%台の高水準で推移している。

 中期成長に向けた重点施策として、米ODEV社との日米共同開発や日本特殊陶業<5334>との連携による高付加価値自社製品の開発強化、海外ビジネス(北米市場での拡販、中国市場での販売基盤確立、新規市場としてオーストラリアでの販売開始検討)の拡大、日本市場における注力販売製品分野(大腿骨頸部転子部骨折治療分野、脊椎固定器具分野、人口股関節分野)のシェア拡大、業務効率化とSCM強化を推進している。

 19年11月米国Johnson&JohnsonグループのDePuy Synthes社に対して、ODEV社製KASMの相手先ブランド製品を提供する契約の締結を発表した。米国人工膝関節市場でKASMの販売拡大を目指す。

 収益面の特性として、医療機器償還価格の影響や為替変動の影響を受けるほか、整形外科医療機器の販売は下期が繁忙期となる傾向があるため、業績も下期の構成比が高い特性があるとしている。

■21年3月期は新型コロナウイルス影響で減収減益予想

 20年3月期連結業績は、売上高が19年3月期比8.1%増の180億83百万円、営業利益が18.3%増の26億44百万円、経常利益が16.9%増の25億81百万円、純利益が9.1%増の21億64百万円だった。配当は1円増配の10円(期末一括)とした。

 米国において3月中旬以降に新型コロナウイルス感染症の影響で多くの人工関節置換術延期・中止措置が発生したこと、および日本国内で大腿骨頚部・転子部骨折治療に使用されるASULOCKについて、製造元の製造能力不足による在庫不足で需要増加に対応できたかったため、売上高と営業・経常利益は計画を下回ったが、増収、2桁営業・経常増益だった。純利益は計画を上回った。米国子会社ODEV社製品の未実現利益の消去に係る繰延税金資産を追加で計上した。

 セグメント別には、日本の売上高が7.5%増の109億21百万円(人工関節が4.5%増の45億16百万円、骨接合材料が4.5%増の37億60百万円、脊椎固定器具が16.7%増の22億11百万円、人工骨が16.0%増の2億49百万円、その他が42.8%増の1億83百万円)で営業利益が5.6%増の11億76百万円、米国の売上高が7.3%増の104億58百万円で営業利益が33.3%増の13億86百万円だった。

 21年3月期連結業績予想は、売上高が20年3月期比1.6%減の178億円、営業利益が16.8%減の22億円、経常利益が18.7%減の21億円、純利益が26.1%減の16億円としている。配当予想は1円増配の11円(期末一括)である。

 新型コロナウイルス感染症患者優先の影響で、整形外科手術の延期・減少が予想されるため、一時的に減収減益予想としているが、中期的に収益拡大を期待したい。

■株価は戻り試す

 株価は下値を切り上げている。21年3月期減収減益予想に対するネガティブ反応は見られない。戻りを試す展開を期待したい。5月11日の終値は1617円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS60円64銭で算出)は約27倍、今期予想配当利回り(会社予想の11円で算出)は約0.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS641円61銭で算出)は約2.5倍、時価総額は約428億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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