- Home
- 小倉正男の経済コラム
- 【小倉正男の経済コラム】FRB議長にウォーシュ氏指名 ウォーシュ氏は「隠れハト」(金融緩和派)という見方強まる
【小倉正男の経済コラム】FRB議長にウォーシュ氏指名 ウォーシュ氏は「隠れハト」(金融緩和派)という見方強まる
- 2026/2/6 17:44
- 小倉正男の経済コラム

■「タカ派」イメージのウォーシュ氏を次期FRB議長に指名
トランプ大統領は、連邦準備制度理事会(FRB)パウエル議長の後任人事として元FRB理事(2006~2011年)のケビン・ウォーシュ氏を指名している。
ウォーシュ氏は最年少の35歳でFRB理事に就任した経歴を持っている。リーマン・ショック後の世界金融危機時(2008年)に量的金融緩和政策(QE)継続はインフレ・リスクが伴うと指摘している。
金融危機に対応したFRBの国債、証券購入継続は、市場に大量の資金を供給しインフレを惹起すると懸念を表明したわけである。
そうしたことからウォーシュ氏は、一般に「タカ派」とみられていた。つまり、インフレ重視で金融引き締め派に分類されていたわけである。ウォーシュ氏が、トランプ大統領とホワイトハウスで対面したというニュースが流れただけで株式市場は動揺する――。そのぐらい「タカ派」のイメージを持たれていた。
■ウォーシュ氏指名でマーケットは動揺
1月30日、トランプ大統領が次期FRB議長にウォーシュ氏を指名すると、NY株式市場は案の定暴落となった。株式市場は、ウォーシュ氏指名は願望している金融緩和(利下げ)が遠のいたという反応を示している。
しかし、トランプ大統領のグリーンランド領有問題などから、欧州などの“米国離れ“で売られていたドルは買い直された。ウォーシュ氏の次期議長への指名は、FRBは大幅な金融緩和を要求するトランプ政権に対して「中立性」「独立性」を保持できる人事と認識されたためである。
一方、グリーンランド問題などトランプ大統領の地政学リスクで過去最高値にあった金・銀は歴史的な下落を演じている。米国債など債券は大きな騒ぎにはならなかったが、売られて利回りが上昇している。
これだけ株式、ドル、金・銀、国債とマーケットを動かしているのだから、FRB議長という職責は大変重いという証明にほかならない。しかし、マーケットも瞬発力で動くため、(あるいはほかならぬ人間が仕切っているわけで)誤解と錯覚にとらわれることがないとはいえない。
■ウォーシュ氏はハト(金融緩和派)という見方
ウォーシュ氏については、「タカの仮面をかぶったハト(金融緩和派)」(推し派)という評価が出ている。「AIによる労働生産性の向上で利下げはできる」というハト派に変わっているという見方である。
ウォーシュ氏にネガティブな側からは「政治的動物」(ノーベル経済学賞受賞者のクルーグマン教授)、いわば“日和見的”な人物という批評が出されている。つまり、「隠れハト派」とみられている。
推し派もアンチ派も奇妙なことだが結論は同じ、ウォーシュ氏は金融緩和(利下げ)に動くとみている。確かに、そうでなければトランプ大統領はウォーシュ氏を指名しないに違いない。
■トランプ大統領は「利下げしなければ訴える」と上機嫌
トランプ大統領は、「米国の金利は世界一低いものにするべきだ」というのが持論だ。根拠としては「関税収入が入ってくるからだ」としている。
トランプ大統領は、ウォーシュ氏について「約束など取り付けていないが利下げしなければ訴える」と上機嫌で周囲を笑わせている。
この件では、ベッセント財務長官が上院銀行委員会で「ウォーシュ氏はトランプ大統領が望む利下げを行わなかった場合、訴訟や司法省の捜査を受けないと約束できるか」と問われている。
ベッセント財務長官は、単なる冗談と一蹴すればよいわけだが「それは大統領次第」と答えている。冗談半分、本気半分、つまり笑えない冗談というところか。
ウォーシュ氏は、物価(インフレ)・雇用・賃金といった経済動向だけではなく、トランプ大統領の機嫌を“アジェンダ”として取り扱わなければならない。FRBの政治権力への「中立性」「独立性」は簡単に失われることはないとしても、いまのパウエル議長のような気概は求められない模様である。(経済ジャーナリスト)
(小倉正男=「M&A資本主義」「トヨタとイトーヨーカ堂」(東洋経済新報社刊)、「日本の時短革命」「倒れない経営~クライシスマネジメントとは何か」(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長などを経て経済ジャーナリスト。2012年から当「経済コラム」を担当)(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)























