ファンデリーは売り一巡、23年3月期黒字転換予想で収益回復基調

 ファンデリー<3137>(東証グロース)は、健康食宅配サービスのMFD事業およびCID事業を主力とするヘルスケア総合企業を目指している。22年3月期の業績(非連結)はコロナ禍の影響で売上が伸び悩んだため赤字で着地した。ただし営業利益と経常利益は赤字縮小した。23年3月期はMFD事業の再成長への回帰、CID事業の損益改善、マーケティング事業の伸長で黒字転換・復配予想としている。コロナ禍の影響緩和や積極的な事業展開で収益回復基調だろう。株価は地合い悪化も影響して上場来安値を更新したが、その後は売り一巡感を強めている。出直りを期待したい。

■健康食宅配サービスが主力

 企業理念のビジョンに「豊かな未来社会」の実現を掲げ、通販カタログ「ミールタイム」を活用した健康食(冷凍弁当)宅配サービスのMFD(Medical Food Delivery)事業、20年7月開始した新商品「旬をすぐに」のCID(Cooking Immediately Delivery)事業、および周辺領域のマーケティング事業を展開している。22年3月期の事業別売上高構成比はMFD事業が78%、CID事業が7%、マーケティング事業が14%だった。

 21年4月には、食や健康に関する新たなWEBサービスの提供や収益源の多様化を推進することを目的として、メディア事業部を新設している。

■健康食通販カタログ「ミールタイム」のMFD事業

 MFD事業は、健康食通販カタログ「ミールタイム」を医療機関や調剤薬局などを通じて配布し、顧客(個人)から注文を受けて宅配する。従来の食事宅配サービスと一線を画し、食事コントロールを通じた血液検査結果の数値改善を目指している。

 全国の医療機関や調剤薬局など2万ヶ所以上の紹介ネットワークを通じた効率的な顧客獲得、専門性の高い栄養士による「ヘルシー食」や「たんぱく質調整食」など多様な健康食の開発やカウンセリングを強みとして、栄養士が顧客の疾病・制限数値・嗜好などに合わせてメニューを選び、定期的に届ける「栄養士おまかせ定期便」も提供している。製造は外部に委託している。

 なおMFD事業の紹介ネットワーク活性化に向けて、5月2日付で神奈川支社を開設した。営業拠点としては、本社(東京都北区)および大阪支社に続いて3拠点目となる。

■「旬をすぐに」のCID事業

 「旬をすぐに」のCID事業は、自社工場で製造する冷凍食品の製造小売事業である。健康な身体はバランスの良い食事からという考えのもと、食の安心・安全にこだわり、国産食材100%であること、健康被害の恐れのある67種類の食品添加物を使用していないこと、食材ごとに異なる最適な加熱温度特許技術で1℃単位のコントロールを行っていること、冷凍工学に基づいた究極の特許冷凍技術で-70℃の瞬間凍結を行っていることなど、従来の冷凍弁当とは一線を画すクオリティの高さを特徴としている。

 管理栄養士が考えた栄養バランスや、特許加熱・冷凍による美味しさが特徴のメニュー構成である。独自のネットワークを活用して四季ごとの旬の国産食材を使用するため、同じメニューは一度しか作らない「一期一会のメニュー」として、週6種類以上のペースで新メニューを発売している。

 コスト面では、全国の生産者で構成する「旬すぐ共栄会」を通して、栄養価の高い旬の食材を収穫量が多く価格が下がる時期に仕入れる。20年12月には大量調理で生じる食品ロスの料理を即時メニュー化して販売する取り組みを開始した。フードロス削減にも貢献する取り組みだ。

 知名度向上、拡販、収益性改善に向けた各種取り組みも強化している。21年1月には、ワンランク上の美味しさを追求した新ブランドPREMIUMシリーズの販売を開始した。21年3月には、新メニューを発表するYouTubeチャンネル「旬チューバー」がYouTubeパートナープログラムに承認された。今後はチャンネルの収益化も可能となる。

 21年8月には、出産された方にメールやLINEで気軽にプレゼントできるギフトサービス「旬すぐSGM(出産祝いギフトメール)」を開始した。受け取る側の都合に合わせて時間・場所・メニューを選択でき、育児に役立つ特典の付与も予定している。特典についてはベビー用品ビジネスを展開している企業との連携も検討する。

 21年9月には、忙しい子育て世代をサポートするため、幼児(1~2歳・3~4歳)向けに塩分や辛さを控えめにした冷凍食品「旬すぐBOX 親子でいっしょ」シリーズを創設して発売開始した。メニュー紹介動画や食材動画を通して、親子で楽しみながら食材を覚えるなどの食育ツールとしても活用できる。

 21年12月には、メニュー評価などでAIが顧客の嗜好を学習し、毎日発売される約250種類のメニューから一人ひとりに最適化したメニューを提案する「AI旬すぐ」サービスを開始した。

 5月18日には支払方法にPayPay決済を導入すると発表した。決済手段の拡張で利便性を向上させる。

■周辺領域のマーケティング事業

 マーケティング事業は健康食宅配サービスから派生した周辺事業として、食品メーカーなどへの健康食通販カタログ誌面の広告枠販売、食品メーカーからの商品サンプリングや健康食レシピ作成の業務受託、健康食レシピサイト運営などを展開し、収益源の多様化を推進している。

■健康意識を高めるための「らくだ6.0プロジェクト」

 日々の食事において塩分摂取量を適正に保つことの重要性を啓蒙し、日本全体の健康意識を高めるための「らくだ6.0プロジェクト」も展開している。20年4月から3年間の活動を予定している。

 賛同企業として20年6月ににんべん、エバラ食品工業、はごろもフーズ、ポッカサッポロフード&ビバレッジ、キング醸造、理研ビタミン、20年7月に東洋水産、キッコーマン、ハナマルキ、ヤマキ、紀文食品、日清食品、ミツカン、ひかり味噌、神州一味噌、20年8月にピエトロ、湖池屋、宝酒造、20年9月に田中食品、白鶴酒造、シマヤ、日清フーズ、21年3月に雪印メグミルク、21年4月に三幸製菓、くらこん、エースコック、そして22年2月には味の素冷凍食品が加入し、賛同企業は28社、認定商品は66商品となっている。

■ヘルスケア総合企業を目指す

 成長戦略としてヘルスケア総合企業を目指し、初の生産拠点となる埼玉工場が稼働してSPA(製造小売業)モデルへの事業構造転換を推進している。一人暮らし高齢者の増加、生活習慣病患者や食事制限対象者の増加などで健康食宅配市場は拡大基調だろう。

 なお22年3月には、フードロス削減や一食二医社会の実現など、ESG・SDGsへの取り組みを発信するWEBページを公開している。また女性の活躍を支援し、22年4月には女性役員・管理職の人数が10名(女性役員1名、女性管理職9名、女性管理職比率81.8%)に達したと発表している。

■22年3月期は営業・経常赤字縮小、23年3月期黒字転換予想

 22年3月期業績(非連結)は売上高が21年3月期比2.0%増の31億23百万円、営業利益が1億77百万円の赤字(21年3月期は5億53百万円の赤字)、経常利益が1億58百万円の赤字(同5億59百万円の赤字)、当期純利益が19億48百万円の赤字(同3億74百万円の赤字)だった。収益認識会計基準適用の影響は軽微だった。

 前期比増収だが、コロナ禍の影響で売上が伸び悩んだため、前回の黒字転換予想に届かず赤字で着地した。ただし原価改善や販管費抑制なども寄与して営業利益と経常利益は赤字縮小した。当期純利益は特別損失にCID事業に係る減損損失17億77百万円を計上したため赤字拡大した。配当は無配とした。そして役員報酬の減額を実施(22年5月~6月)する。

 MFD事業は売上高が8.5%減の24億45百万円で、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が15.1%減の5億17百万円だった。コロナ禍に伴う外来患者減少や営業制限などで病院等の紹介ネットワークを通じた顧客獲得が想定を下回った。新規顧客数は第1四半期が2744人、第2四半期が2437人、第3四半期が2722人、第4四半期が2259人だった。

 CID事業は売上高が2億32百万円(21年3月期は29百万円)で、利益が7億50百万円の赤字(同11億02百万円の赤字)だった。新規顧客数は減少だが、リピート注文が増加した。利益面は損益分岐点に達していないため赤字継続だが、前期に比べて赤字幅が縮小した。

 マーケティング事業は売上高が23.7%増の4億45百万円、利益が28.8%増の3億31百万円だった。計画を下回ったが、業務受託の獲得などで売上高、利益とも過去最高となった。

 なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が7億88百万円で営業利益が13百万円の赤字、第2四半期は売上高が8億10百万円で営業利益が31百万円の黒字、第3四半期は売上高が8億03百万円で営業利益が6百万円の黒字、第4四半期は売上高が7億22百万円で営業利益が2億01百万円の赤字だった。

 23年3月期業績(非連結)予想は、売上高が22年3月期比2.5%増の32億円、営業利益が1億05百万円の黒字(22年3月期は1億77百万円の赤字)、経常利益が1億14百万円の黒字(同1億58百万円の赤字)、当期純利益が79百万円の黒字(同19億48百万円の赤字)としている。配当予想は復配の3円(期末一括)としている。

 セグメント別の計画は、MFD事業の売上高が22年3月期比0.5%増の24億58百万円でセグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が1.7%増の5億27百万円、CID事業の売上高が4.1%増の2億42百万円で利益が4億83百万円の赤字(22年3月期は7億50百万円の赤字)、そしてマーケティング事業の売上高が12.3%増の5億円で利益が10.0%増の3億68百万円としている。

 MFD事業は新規顧客獲得を強化してプラス成長への回帰を目指す。22年4月から医療機関への訪問を再開し、さらに本社・大阪支社および新設した神奈川支社の3拠点で専任の担当者を配置した。CID事業は「AI旬すぐ」会員獲得や損益改善を推進する。マーケティング事業は引き続き過去最高を目指す。

 23年3月期はMFD事業の再成長への回帰、CID事業の損益改善、マーケティング事業の伸長で黒字転換・復配予想としている。コロナ禍の影響緩和や積極的な事業展開で収益回復基調だろう。

■株価は売り一巡

 株価は地合い悪化も影響して上場来安値を更新したが、その後は売り一巡感を強めている。出直りを期待したい。5月20日の終値は265円、今期予想PER(会社予想のEPS12円49銭で算出)は約21倍、今期予想配当利回り(会社予想の3円で算出)は約1.1%、前期実績PBR(前期実績のBPS99円25銭で算出)は約2.7倍、時価総額は約17億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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