アナリスト水田雅展の「8月17日~21日の株式・為替相場展望」

株式・為替相場展望

■中国・人民元ショック後退だが、米国の利上げ開始時期を巡る思惑が交錯

 8月17日~21日の株式・為替相場は、中国・人民元切り下げショックが後退し、オプションSQ(特別清算指数)も通過したが、米FRB(連邦準備制度理事会)の利上げ開始時期に対する思惑が交錯して引き続きモミ合い展開を想定する。

 前週の波乱要因となった中国・人民元切り下げショックに対するリスクオフの動きは概ね落ち着いた。17日発表の日本4~6月期GDP1次速報値で市場予想どおりにマイナス成長となれば、補正予算による公共投資上積みなど政策発動に対する期待感や、日銀の追加金融緩和に対する期待感が高まる。需給面では夏季休暇明けで市場参加者が増加し、高水準の空売りの買い戻しも期待される。そして為替はドル高・円安の進行、日本株は年初来高値更新の期待が高まる。

 ただし一方で、米FRBの利上げ開始時期に対する思惑は9月16日~17日開催の米FOMC(連邦公開市場委員会)まで続くだろう。米7月雇用統計の結果を受けて9月利上げ開始という見方が優勢のようだが、米10年債利回りは2.1%台と依然低水準だ。利上げ開始後の米景気減速を警戒しているとも言える。

 また中国・人民元切り下げショックに対するリスクオフの動きは概ね落ち着いたとはいえ、中国の成長鈍化に対する警戒感に大きな変化はないだろう。原油価格を中心とする商品価格の下落にも引き続き注意が必要となる。そして国内要因では4~6月期業績発表が一巡してやや材料不足となる。また戦後70年談話を通過したとはいえ、安保関連法案を巡っての安倍内閣の支持率低下が引き続き懸念要因となる。

 日経平均株価は6月24日の取引時間中の年初来高値2万952円71銭を突破すれば売り方の買い戻しを誘って上げ足に弾みがつきそうだが、前週11日に2万946円93銭まで上昇したものの6月24日高値を抜けなかったことで、2万~2万900円のレンジ相場が意識されやすい状況だ。TOPIXも11日に年初来高値となる1702.83ポイントまで上伸する場面があったが、中国・人民元切り下げショックでレンジ内に押し戻された。

 株式市場での物色動向としては、引き続き好業績銘柄に対する個別物色が強まりそうだ。19日に発表される7月訪日外国人旅行客数で、中国・上海株急落後も中国からの旅行客数に大きな変化なないことが確認されれば、あらためてインバウンド需要関連銘柄に注目が集まるだろう。またサイバーセキュリティ関連や、JPX日経400への新規採用銘柄なども注目されそうだ。

 為替に関しては、日米欧の金融政策の方向性の違いを背景に、大勢としてドル高・円安方向の流れに変化はないが、引き続き米国の主要経済指標や要人発言も睨みながら利上げ開始時期を巡る思惑が交錯する。米10年債利回りが上昇しない状況が続いているだけに、ドル・円相場もモミ合い展開だろう。

 その他の注目スケジュールとしては、17日の米8月NY連銀製造業景気指数、18日の米7月住宅着工件数、19日の日本7月貿易収支、米7月消費者物価、米FOMC議事録(7月28日~29日開催分)公表、20日の米7月中古住宅販売件数、米7月コンファレンス・ボード景気先行指数、米8月フィラデルフィア連銀製造業景況感指数、21日の中国8月製造業PMIなどがあるだろう。

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