キヤノン、高耐久で広色域のペロブスカイト量子ドットインクを開発、8K有機ELディスプレイへの応用に期待

■ペロブスカイト量子ドットインクで高画質ディスプレイを実現

 キヤノン<7751>(東証プライム)は29日、次世代量子ドットディスプレイに適用可能な材料として、ペロブスカイト構造を持つ量子ドットインク(ペロブスカイト量子ドットインク)を開発し、実用可能な耐久性を世界で初めて実証したと発表した。このインクは、高い色純度と光の利用効率を持ち、消費電力の削減や超高精細な有機ELディスプレイの実現に貢献できると期待される。

 量子ドットは、高輝度で高い色純度の光を発光することのできる、直径数ナノメートルの半導体微粒子である。量子ドットを用いたディスプレイは色域が広く、表現力が高いとして注目されている。しかし、環境配慮の観点から、これまで代表的な材料であったカドミウム(Cd)を使用しないものへの関心が高まっている。

 同社は、Cdフリー材料としてInP(リン化インジウム)量子ドットと並んで注目されているペロブスカイト量子ドットに着目し、開発を進めてきた。ペロブスカイト量子ドットは、色純度と光の利用効率がともに高く、高輝度・広色域・高解像度を兼ね備えたディスプレイを実現できることが期待されているが、実用化においては耐久性の低さが課題となっていた。

 そこで、プリンターのインクやトナーの開発を通して培ってきた技術を応用し、独自の手法でペロブスカイト量子ドットに保護層を形成することで、色純度と光利用効率を保持したまま、実用可能な耐久性を実証したペロブスカイト量子ドットインクを開発した。

 キヤノンによれば、InP量子ドットインクがITU-R BT.2020色域を88%カバーしているのに対し、今回開発したペロブスカイト量子ドットインクは94%をカバーすることが可能だという。また、光の利用効率が高いため、消費電力を約2割削減することができると見込んでいる。同インクを用いることで、将来的にはこれまでは実現できなかった、量子ドットを用いた8Kなどの超高精細な有機ELディスプレイが実現できる可能性があるとアピールしている。

 なお、同インクの技術開発の成果および高品質なペロブスカイト量子ドットを量産可能な技術については、米国・ロサンゼルスで開催されたSID Display Week 2023において、2023年5月26日(現地時間)に口頭での発表も行われた。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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