アステナホールディングスは25年11月期営業・経常減益予想だが高配当利回りや低PBRなどが支援材料

 アステナホールディングス<8095>(東証プライム)は、1月14日に24年11月期連結業績を発表した。当期純利益は減損損失計上で赤字だが、計画を上回る大幅営業・経常増益で着地した。ファインケミカル事業における事業効率化、医薬事業における同業他社の一部製品販売中止に伴う代替需要、研究開発費の次期への先送りなどが寄与した。25年11月期は不透明感等を考慮して営業・経常減益予想としているが保守的だろう。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。株価は水準を切り下げて昨年来安値圏に回帰の形となった。目先的には25年11月期営業・経常減益予想を嫌気する動きが優勢になる可能性もあるが、高配当利回りや1倍割れの低PBRなども支援材料であり、下値は限定的だろう。

■24年11月期大幅営業・経常増益、25年11月期営業・経常減益予想

 24年11月期の連結業績は、売上高が23年11月期比11.6%増の579億93百万円、営業利益が2.5倍の28億15百万円、経常利益が2.1倍の28億04百万円、親会社株主帰属当期純利益が25億25百万円の損失(23年11月期は11億62百万円)だった。配当は23年11月期と同額の18円(第2四半期末9円、期末9円)とした。

 親会社株主帰属当期純利益については岩城製薬佐倉工場の注射剤製造設備に係る減損損失40億92百万円を計上したため赤字だが、売上高が計画(575億円)を上回り、営業利益と経常利益は計画(24年10月11日付の2回目の上方修正値、営業利益20億円、経常利益20億円)を上回る大幅増益で着地した。ファインケミカル事業における事業効率化、医薬事業における同業他社の一部製品販売中止に伴う代替需要、研究開発費の次期への先送りなどが寄与した。

 ファインケミカル事業は、売上高(外部顧客への売上高)が6.4%増の211億27百万円で、営業利益(全社費用等調整前)が13.6%増の2億42百万円だった。医薬品原料部門の自社製造品の販売価格改定効果などが牽引した。CDMO(医薬品開発製造受託)部門は主要受託品目の受注量が増加したが、高活性注射剤製造設備受託案件の受注が遅れた。

 HBC・食品事業は売上高が7.8%増の151億62百万円、営業利益が2.3倍の7億42百万円だった。不採算だった一般用医薬品等卸売事業から撤退(23年11月)したことに加え、マルマンH&Bの自社企画化粧品「ピュレア」や輸入化粧品「Torriden」の販売が好調だった。

 医薬事業は売上高が21.3%増の114億69百万円で、営業利益が2.5倍の13億16百万円だった。抗真菌薬ルリコナゾール軟膏・クリームが伸長し、23年7月に帝人ファーマより承継したボンアルファ・ボンアルファハイも好調だった。また、同業他社の一部製品販売中止に伴う代替需要としてゲンタマイシン硫酸塩軟膏やピコスルファートナトリウム内用液などの販売も伸長した。24年4月の薬価改定で一部製品が不採算品再算定および基礎的医薬品指定を受けたことも寄与した。

 化学品事業は、売上高が18.6%増の101億95百万円、営業利益が9.6倍の7億12百万円だった。表面処理薬品部門では半導体・電子部品関連向けが伸長した。表面処理設備部門では工場拡張に伴って受注・生産件数が増加した。

 その他事業(人材事業、ふるさと納税事業、投資事業等の新規事業)は、売上高が38百万円(23年11月期は16百万円)で、営業利益が1億36百万円の損失(同1億03百万円の損失)だった。

 全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が134億26百万円で営業利益が4億54百万円、第2四半期は売上高が146億65百万円で営業利益が8億91百万円、第3四半期は売上高が139億86百万円で李業利益が6億56百万円、第4四半期は売上高が159億16百万円で営業利益が8億14百万円だった。

 25年11月期の連結業績予想は、売上高が24年11月期比8.6%増の630億円、営業利益が29.0%減の20億円、経常利益が28.7%減の20億円、親会社株主帰属当期純利益が減損損失一巡で11億円(24年11月期は25億25百万円の損失)としている。配当予想は24年11月期と同額の18円(第2四半期末9円、期末9円)としている。予想配当性向は65.9%となる。

 25年11月期は不透明感等を考慮して営業・経常減益予想としているが保守的だろう。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。

■株価は下値限定的

 株価は水準を切り下げて昨年来安値圏に回帰の形となった。目先的には25年11月期営業・経常減益予想を嫌気する動きが優勢になる可能性もあるが、高配当利回りや1倍割れの低PBRなども支援材料であり、下値は限定的だろう。1月14日の終値は452円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS27円33銭で算出)は約17倍、今期予想配当利回り(会社予想の18円で算出)は約4.0%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS624円60銭で算出)は約0.7倍、そして時価総額は約185億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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