ファーストコーポレーション、26年5月期も増益・連続増配予想、請負価格適正化で収益性向上へ
- 2025/8/18 07:15
- アナリスト銘柄分析

ファーストコーポレーション<1430>(東証スタンダード)は、造注方式を特徴として分譲マンション建設などを展開するゼネコンである。当面の目標である年商500億円の早期実現と、次のステージとなる年商1000億円へのステップアップに向けて、業容の拡大と利益水準の向上に取り組んでいる。26年5月期は減収ながら増益・連続増配予想としている。不動産事業において前期の反動減があるものの、完成工事高が堅調に推移するほか、請負価格適正化への取り組みなどにより売上総利益率の上昇を見込んでいる。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は戻り歩調の形だ。指標面の割安感も評価材料であり、出直りを期待したい。
■造注方式が特徴のゼネコン
東京圏(1都3県)中心に分譲マンション建設などを展開するゼネコンである。造注方式による大手マンション・デベロッパーからの特命受注と高利益率、品質へのこだわりによる安心・安全なマンション供給を特徴としている。
造注方式というのは、当社がマンション用地を開発し、マンション・デベロッパーに対して土地・建物を一体とする事業プランを提案し、マンション・デベロッパーから特命で建築を請け負うという受注方式である。入札方式に比べて好条件での請負が可能となる。
品質に関しては「安全と品質の最優先」を掲げて、施工品質管理標準・マニュアル類の整備、階層別研修会の実施、施工検討会による安全で堅実な施工計画の策定、巡回検査による正確性の担保など、良質で均一な品質を維持するための取り組みを推進している。また第三者機関による検査導入については、施主が第三者機関による検査を実施しない場合でも、建造物の安全性を確保するために重要な杭工事、配筋工事、レディーミクストコンクリートを対象として、当社が自前で第三者機関による検査を導入するなど、安心・安全なマンション供給に向けた体制を整備している。
■当面の目標は年商500億円企業
25年5月期は、建設事業の売上高が226億41百万円で営業利益(全社費用等調整前)が17億40百万円、不動産事業(共同事業収入を含む)の売上高が202億74百万円で営業利益が21億87百万円、その他(設計業務、不動産賃貸、マンション管理運営など)の売上高が2億78百万円で営業利益が2億34百万円の損失だった。不動産売上は大型案件によって変動する可能性がある。建設事業の受注高は8件合計266億29百万円(うち造注が85億13百万円、造注比率32.0%)で、期末受注残高は357億60百万円だった。なお22年11月に受注した千葉駅東口西銀座B地区優良建築物等整備事業新築工事(仮称:26年3月完成予定)については、補助事業として入札手続を経たため一般請負にカウントしている。
24年7月に公表した新中期経営計画「Innovation2024」(25年5月期~27年5月期)の経営目標値には、最終年度27年5月期の売上高400億円(完成工事高203億円、不動産売上166億円、共同事業収入24億円、その他売上7億円)、売上総利益49億40百万円(完成工事総利益22億30百万円、不動産売上総利益20億円、共同事業収入総利益6億20百万円、その他売上総利益90百万円)、売上総利益率12.4%(完成工事総利益率11.0%、不動産売上総利益率12.0%、共同事業収入総利益率25.8%、その他売上総利益率12.9%)、営業利益29億50百万円、経常利益28億円、親会社株主帰属当期純利益19億40百万円、受注高200億円(うち造注50億円)を掲げている。
当面の目標である年商500億円の早期実現と、次のステージとなる年商1000億円へのステップアップに向けて、業容の拡大と利益水準の向上に取り組み、持続的成長と中長期的な企業価値向上を目指すとしている。重点施策として、資本収益性の向上では造注比率の向上、建設事業の強化、再開発事業の推進により、数値目標の着実な達成を目指す。成長投資としてはM&Aの積極活用に加え、研究開発投資や人的資本投資も強化する。また市場評価の向上に向けて、連結配当性向30%以上や機動的な自己株式取得により株主還元を強化するほか、IR活動も強化する。
中核事業の造注方式の強化では、東京郊外の好立地アクティブ・シニア向けマンションなどを推進するほか、九州エリアへ進出した。21年9月には新ジャンルの分譲マンション「CANVAS」ブランドを立ち上げた。暮らす方々の身体的・精神的・社会的な健康状態がバランス良く調和の取れた状態であることを意味する概念「ウェルビーイング」をブランドコンセプトとして、子会社ファーストエボリューションが竣工後の管理・販売代理・入居者サービス提供を行う。24年12月には、長崎県大村市の(仮称)大村バスターミナル地区第一種市街地再開発事業に事業協力者として事業参画することを発表した。
M&A・アライアンスでは、23年9月に小林工業(群馬県前橋市)と共同住宅建設に係る請負工事受注に関して業務提携した。また23年12月に吉田組(群馬県桐生市)と共同住宅建設に係る請負工事受注に関して業務提携した。
またサステナビリティ経営に関しては24年7月にマテリアリティ(重要課題)を特定し、サステナビリティ基本方針およびサステナビリティ推進委員会のもとで取り組みを強化している。
■25年5月期大幅増収増益、26年5月期増益・連続増配予想
25年5月期の連結業績は売上高が前期比51.6%増の431億94百万円、営業利益が77.5%増の25億79百万円、経常利益が74.3%増の24億78百万円、親会社株主帰属当期純利益が76.7%増の16億69百万円だった。配当は前期比11円増配の42円(期末一括)とした。大幅増配で配当性向は30.1%となる。
大幅増収増益だった。不動産事業において共同事業による分譲マンションの販売収入が好調だったほか、事業用地の販売が当初想定を大きく上回った。建設事業は売上高が3.0%増の226億41百万円で営業利益(全社費用等調整前)が8.1%減の17億40百万円、不動産事業は売上高が222.6%増の202億74百万円で営業利益が113.1%増の21億87百万円、その他は売上高が27.4%増の2億78百万円で営業利益が2億34百万円の損失(前期は4億98百万円の損失)だった。
全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が76億92百万円で営業利益が5億64百万円、第2四半期は売上高が195億36百万円で営業利益が10億円、第3四半期は売上高が75億40百万円で営業利益が3億21百万円、第4四半期は売上高が84億26百万円で営業利益が6億94百万円だった。
26年5月期の連結業績予想は売上高が前期比7.4%減の400億円、営業利益が8.5%増の28億円、経常利益が2.1%増の25億30百万円、親会社株主帰属当期純利益が4.8%増の17億50百万円としている。配当予想は前期比2円増配の44円(期末一括)としている。連続増配で予想配当性向は30.1%となる。
26年5月期は減収ながら増益・連続増配予想としている。全社ベースの受注高は5件合計200億円の計画としている。不動産事業において前期の反動減があるものの、完成工事高が堅調に推移するほか、請負価格適正化への取り組みなどにより売上総利益率の上昇を見込んでいる。なお25年7月に販売用不動産の売却(東京都世田谷区、土地、引渡部25年7月30日)を発表している。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株主優待制度は毎年11月末の株主対象
株主優待制度(詳細は会社HP参照)については、毎年11月末現在の株主を対象として、保有株式数および保有期間に応じてクオカードを贈呈している。
■株価は戻り歩調
株価は戻り歩調の形だ。週足チャートで見ると26週移動平均線を回復した。指標面の割安感も評価材料であり、出直りを期待したい。8月15日の終値は924円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS146円42銭で算出)は約6倍、今期予想配当利回り(会社予想の44円で算出)は約4.8%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS816円73銭で算出)は約1.1倍、時価総額は約123億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)