ヤマシタヘルスケアホールディングス、積極的な先行投資で成長加速、保守的な予想を上回る期待で株価は最高値更新
- 2025/8/20 07:28
- アナリスト銘柄分析

ヤマシタヘルスケアホールディングス<9265>(東証スタンダード)は、経営理念に「地域のヘルスケアに貢献する」を掲げ、九州を地盤とする医療機器専門商社(山下医科器械)を中心に、継続的な収益拡大に向けてヘルスケア領域でのグループ力向上を推進している。26年5月期は人件費の増加や物流センターリニューアルに係る費用の計上などで減益予想としている。ただし保守的だろう。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。株価は急伸して最高値を更新した。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。
■九州を地盤とする医療機器専門商社
経営理念に「地域のヘルスケアに貢献する」を掲げ、九州を地盤とする医療機器専門商社(山下医科器械)を中心に、継続的な収益拡大に向けて、ヘルスケア領域でのグループとしての収益力向上を推進している。
中核の事業子会社である山下医科器械は、九州を地盤とする医療機器専門商社で、医療機器卸売・メンテナンス、設備設計・施工、消耗品管理・物流などを展開している。26年8月には創業100年を迎える。またイーピーメディックは整形外科領域の体内埋没材料(インプラント)の製造・販売、トムスは人工腎臓関連分野に強みを持ち透析装置・関連消耗品を中心とする医療機器卸売・メンテナンス、アシスト・メディコは医療機関の経営・事業承継支援などのコンサルティングサービス、イーディライトは病院向け予約ソリューション、エムディーエックスはDX技術関連製品・サービスの提供、クロスウェブは医療機関向けネットワーク構築・ソフトウェア受託開発、鹿児島オルソ・メディカルは鹿児島県で整形外科分野に特化した医療機器・関連消耗品の販売、マイクロソニック(24年6月子会社化)は乳がんの早期発見を目的とした超音波画像診断装置「ブラストスキャン」など医療用機器の開発・販売を展開している。
25年5月期のセグメント別売上高は、医療機器販売業が644億487百万円で内訳は一般機器分野(一般医療機器備品、放射線診断装置等)が94億13百万円、一般消耗品分野(汎用消耗品、手術関連消耗品等)が258億35百万円、低侵襲治療分野(内視鏡・サージカル備品等)が147億17百万円、専門分野(眼科、整形外科透析等)が127億56百万円、情報・サービス分野(電子カルテシステム、設備保守メンテナンス等)が17億64百万円、医療機器製造・販売業(整形外科用インプラント製造・販売、超音波を用いた医療用機器の開発・販売等)が2億19百万円、医療モール事業(賃料収入)が72百万円だった。
なお医療機関の設備投資関連のため、第2四半期(9月~11月)および第4四半期(3月~5月)の構成比が高い傾向がある。
■積極的投資とグループ機能向上によるバランス経営の実行
中期経営計画(25年5月期~27年5月期)では、基本方針に「積極的投資とグループ機能向上によるバランス経営の実行」を掲げ、目標値は最終年度27年5月期の売上高730億円、営業利益9億50百万円、営業利益率1.3%以上、経常利益10億円としている。資本コストや株価を意識した経営としては、PBR(株価純資産倍率)1.0倍以上、ROE(自己資本当期純利益率)10%以上を目指し、株主還元としては配当性向30%以上としている。
重点施策として人的資本経営、グループ間連携による新たな価値の創出と生産性向上、持続的成長に向けた投資、ESG経営による地域社会への貢献、ガバナンス最優先の風土醸成などを推進する。
サステナビリティ経営への取り組みでは21年8月にESG基本方針を策定、22年7月に長期ビジョン「マルティプライビジョン2030」を策定し、24年8月に「ESG経営に関わる実績および目標」を公表した。また25年3月には山下医科器械が、経済産業省と日本健康会議が選定する健康経営優良法人認定制度において、4年連続で健康経営優良法人2025(大規模法人部門)に認定された。
■26年5月期はコスト増加で減益予想だが保守的
26年5月期の連結業績予想は売上高が前期比4.9%増の676億47百万円、営業利益が29.6%減の5億90百万円、経常利益が30.5%減の6億32百万円、親会社株主帰属当期純利益が42.6%減の3億54百万円としている。配当予想は前期比5円減配の70円(期末一括)としている。予想配当性向は49.0%となる。
需要が堅調に推移して増収だが、人的資本投資に係る人件費関連コストの増加、山下医科器械の物流センターリニューアルに係る費用の計上、マイクロソニックにおいて開発中の超音波画像診断装置「ブラストスキャン」に係る研究開発費・広告宣伝費の計上などで減益予想としている。
営業利益の前期比2億48百万円減少の要因分析(見込み)については、人件費他固定費の増加で2億17百万円減益、販売促進費および発送運賃他の増加で44百万円減益、修繕費他設備管理費および消耗品費等の増加で2億27百万円減益、売上総利益の増加で2億40百万円増益としている。
重点施策として、人的資本経営の実践(グループ10社の人材情報を総合的にマネジメントする体制の構築、資本政策と連携したグループ全社のワークエンゲージメント向上など)、グループ間の連携と協業による事業の活性化(各事業会社間の販売チャネル活用や商材共有の促進など)、事業会社等の継続支援とM&Aによる事業領域の拡充(超音波画像診断装置「ブラストスキャン」の上市と拡販に向けた継続支援、長期ビジョン「マルティプライビジョン2030」に準じたM&Aの継続など)、ESG経営を踏まえた安定的な商品供給体制の構築(グループBCM体制の検討と構築、物流構想プロジェクト稼働による競争力強化など)、ガバナンスとコンプライアンスのさらなる意識向上と深化、グループ管理機能の充実を推進する。
26年5月期はコスト増加で減益予想としているが保守的だろう。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。
■株主優待制度は5月末の株主対象
株主優待制度は毎年5月31日現在の1単元(100株)以上保有株主を対象に、保有株式数および継続保有期間に応じてオリジナルクオカードを贈呈(詳細は会社HP参照)している。
■株価は急伸して最高値更新
株価は急伸して最高値を更新した。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。8月19日の終値は3195円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS143円58銭で算出)は約22倍、今期予想配当利回り(会社予想の70円で算出)は約2.2%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS3640円22銭で算出)は約0.9倍、そして時価総額は約82億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)