【業績でみる株価】日立マクセルはサムスンショック一巡と円安効果、業績持ち直しへ、株価ジリ高

業績で見る株価

日立マクセル<6810>(東1・売買単位100株)は、スマートフォン用電池の受注急減を受けて2015年3月期は減額修正を余儀なくされると会社側が発表した。しかし、人員削減やコスト構造の改善、さらに予想外の円安で業績は来期以降、持ち直してくる可能性が強い。つれて株価は目先、1900円どころの高値圏ではヤレヤレの売りを浴びるものの、ジリ高傾向を強めてこよう。

同社は自動車向けコイン形リチウム電池、スマホ向け角形リチウムイオン電池を主力製品としたエネルギー部門(売上高構成比20%)、車載用カメラレンズなど光学商品を主体とした産業用部材料部門(同32%)、プロジェクター関連の電器・コンシュマー部門(同48%)に分かれている。

この中で、稼ぎ頭であるエネルギー部門が2015年3月期、韓国のサムスン製造スマホ向け受注の減少を受けて、同部門の売上高は310億円(前期比20.5%減)と減少する見通しだ。この影響を受けて2015年3月期の業績は下方修正をした。売上高は1540億円(従来予想1670億円)、営業利益51億円(同85億円)、経常利益49億円(同81億円)、当期純利益67億5000万円(同67億5000万円)と前期比で売上高は3.7%増と伸び悩み、営業利益は30.7%減、経常利益は39.3%減、当期純利益9.2%減と営業、経常利益ともに3割を超す減益へ下方修正した。正直に言えば、韓国サムスンは中国の低価格スマホの販売攻勢により、さらに打撃を受け、同社のサムスン向けは一段と厳しい状況下に置かれることになりそうだ。

これに対して同社は、リチウムイオン電池の立て直し策として、定置型電池やウェアラブル用電池の需要開拓を急ぎ、高級スマホ向けに依存した収益体質の改善を図るとともに、国内社員約250人の人員削減を実施する。さらに、車載用光学部品の生産能力を今後、3年間かけて倍増する計画だ。

また、同社の輸出比率は62.9%(2014年9月末)と高い。米国が13.2%、欧州が10.7%、アジア他が39%となっている。このため、最近の円安傾向は間違いなく同社の業績に対してプラスへ働くものと期待される。

確かに、サムスンショックはこれからも、同社にまだ悪影響を及ぼすことになりそうだ。しかし、徐々に経営体質は改善されつつある。この点を考慮すると極端に悲観する必要はないだろう。最近の株価はこうした評価を先取りした展開となっている。

チャート的に判断すると1900円どころが、上値のフシ目であり、この水準に近づいてくると売り物が出てくるため、再び軟調な動きとなる公算が強い。このために、このフシを一気に払い2000円台での活躍局面に突入するには、まだ多少時間がかかろう。当面は二進一退の足取りが予想される。同社株に新規投資を考えている投資家は、下押した局面を丹念に拾う事を薦めたい。

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