【アナリスト水田雅展の銘柄診断】ジェイテックは16年3月期の収益改善を見直す動き

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

ジェイテック<2479>(JQS)は技術職知財リース事業を主力として人材サービス事業を展開している。株価は300円近辺でのモミ合いから一旦下放れの形となったが、20日は前日比34円高の313円まで急伸する場面があった。調整が一巡して16年3月期の収益改善を見直す動きのようだ。

製造業の開発・設計部門向けに技術者を派遣する技術職知財リース事業(特定派遣事業および請負事業)を主力として、子会社ジオトレーディングは製造業向け一般派遣・エンジニア派遣事業を展開している。12年10月にエル・ジェイ・エンジニアリング(旧トステム・エンジニアリング・オフィス)を子会社化して建築設計分野にも事業領域を広げた。

専門教育による知識を基盤として新たな付加価値を顧客に提供する社員を「テクノロジスト」と呼称し、一般的な「エンジニア」と区別していることが特徴だ。そして「技術商社」を標榜し、当社のテクノロジストが保有する知恵を提供(リース)することで、顧客とともに新たな価値を創造する「技術職知財リース事業」としている。

技術職知財リース事業では、機械設計開発、電気・電子設計開発、ソフトウェア開発の3分野に加えて、建築設計分野を第4の柱として育成している。顧客は自動車関連、産業用機器関連、電子・電気機器関連、精密機器関連、情報通信機器関連、情報処理関連、建築関連など多岐にわたり、特定の業界・企業への依存度を低くして業種別・顧客別売上構成比のバランスを維持していることも特徴だ。

15年3月には飲食店向け多言語対応注文支援システム「グルくる」を発表した。NFC(近距離無線通信技術)など先端IT技術を活用し、飲食店の運営効率化を支援するために提供するサービスで、スマートフォンからNFCタグまたはQRコードを読み取るだけで注文できる。約十カ国後の多言語対応のため外国人旅行客もスムーズに注文できるとしている。

5月8日に発表した前期(15年3月期)の連結業績は、売上高が前々期比1.7%減の33億48百万円、営業利益が同16.7%減の79百万円、経常利益が同17.6%減の78百万円、純利益が同10.9%減の57百万円だった。

配当予想については前期と同額の年間1円(期末一括)とした。配当性向は14.6%となる。なおROEは同2.9ポイント低下して9.9%、自己資本比率は同3.2ポイント上昇して45.9%となった。

契約単価の大幅上方改定に伴う一時的な稼働率低下、テクノロジストの退社増加でなどで計画を下回り減収減益だった。ただし下期には稼働率が安定し、契約単価改定も利益に寄与しているようだ。

セグメント別売上高は、技術職知財リース事業が同1.6%減の32億42百万円、一般派遣およびエンジニア派遣事業が同4.3%減の1億05百万円だった。

なお四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)8億27百万円、第2四半期(7月~9月)8億18百万円、第3四半期(10月~12月)8億46百万円、第4四半期(1月~3月)8億57百万円、営業利益は第1四半期45百万円の赤字、第2四半期18百万円の黒字、第3四半期37百万円の黒字、第4四半期69百万円の黒字だった。

期前半は新卒テクノロジストの研修期間中の人件費や教育・研修費用が先行するため利益が出にくい収益構造だが、期後半に向けて新卒テクノロジストの戦力化も寄与する。売上高の回復に伴って営業損益は改善基調のようだ。

今期(16年3月期)の連結業績予想(5月8日公表)については売上高が前期比8.2%増の36億21百万円、営業利益が同68.0%増の1億33百万円、経常利益が同69.8%増の1億32百万円、純利益が同89.7%増の1億10百万円、配当予想が前期と同額の年間1円(期末一括)としている。

技術職知財リース事業の稼働率回復や契約単価改訂効果に加えて、前期から販売開始した飲食店向け多言語対応注文支援システム「グルくる」の代理店開拓も寄与して増収増益見通しだ。

なお5月8日に事業譲受を発表した。ベンチャー総研およびベンチャービジネスサポートのヒューマンリソース事業およびポスティング事業の一部を6月30日(予定)付で譲り受ける。一般派遣事業の業務領域の拡大によって新たな人材サービス事業を掘り起こす方針だ。なお16年3月期連結業績予想に今回の事業譲受の影響を織り込んでいない。

中期経営計画では、今後数年間を人材採用・教育など基盤強化の期間と位置付け、経営目標値として17年3月期売上高41億23百万円、営業利益1億76百万円、経常利益1億76百万円、純利益1億20百万円を掲げている。

主要取引先の大手製造業では新製品開発など高水準の研究開発投資を継続しているため、自動車関連、産業機器関連、電機・精密機器関連などを中心に、技術開発や製品設計に対応可能なスキルを持つ技術者に対して派遣需要が一段と高まっている。中期的に受注環境は良好だ。

株価の動きを見ると、15年3月期の減収減益も嫌気して300円近辺でのモミ合いから下放れの形となり、5月14日の277円まで調整した。ただし20日は前日比34円(12.19%)高の313円まで急伸する場面があった。調整が一巡して16年3月期の収益改善を見直す動きのようだ。

5月21日の終値301円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS12円87銭で算出)は23~24倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間1円で算出)は0.3%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS75円66銭で算出)は4.0倍近辺である。

日足チャートで見ると戻りを押さえていた25日移動平均線を突破した。また週足チャートで見ると13週移動平均線近辺で下げ渋る動きだ。調整が概ね一巡したようだ。16年3月期の収益改善を評価して切り返し展開が期待される。

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