【中期経営計画と株価】大日本住友製薬は期待の抗がん剤開発が遅れているものの、非定型抗精神病薬「ラダーツ」の好調と円安効果で第三期中期経営計画の目標は変更なし

中期経営計画と株価

大日本住友製薬<4506>(東1部・売買単位100株)は2017年度を目標にした第三期中期経営計画を推進中である。今年5月に新抗がん剤「BBI608」が米国での新規患者登録の中止を受けて、単剤としての開発が事実上見送られた。2015年度に北米での販売を計画していただけに、このニュースは株価に響き、ご承知の通り同社株は5月に急落した。

しかし、ここで括目したいのは、会社側はこうした事態となっても、現在、推進中である第三期中期経営計画の目標値を変更しなかったことだ。2017年度に売上高4500億円(前期比16.1%増)、営業利益800億円(同89.8%増)の達成を目指している。

この理由について会社側は北米での「ラダーツ」販売の好調に加えて円安効果と説明をしている。しかも、「BBI608」は依然として将来、有望新薬として実用化される期待が大きい。この新薬はがん幹細胞を直接ターゲットとすることを最大の特色としており、単剤より通常の抗がん剤との併用の方が薬効は高いのである。単剤としての結腸直腸がん薬は開発を今回は中止したが、併用薬として胃がん、結腸直腸がん、固形がん、肝細胞がんなどの臨床試験は順調に進行している。2016年度中には日本と北米で胃がん、食道胃接合部腺がん治療薬として上市が見込まれている。

さらに、同社は糖尿病合併症薬「AS-3201」や総合失調症薬「SM-13496」など注目の新薬が相次いで登場する予定である。

加えて同社が新規結核ワクチンを開発している点にも注目したい。結核は世界中で1年間に患者が新たに約860万人発生し、約130万人が死亡し、日本でも年間2万人以上が感染し、2000人以上が死亡している恐ろしい病である。既存のワクチンは乳幼児に対しては効果が高いものの、成人には効果が乏しい。それに対して同社は成人にも効果が高い新規結核ワクチンを独立行政法人医薬基盤研究所と共同開発中なのだ。こうした新薬の開発は高く評価できる。

ただ、今期の業績はおもわしくない。国内の薬価改定の影響を受けて売上高3660億円(前期比5.6%減)、営業利益200億円(同52.5%減)、経常利益195億円(同52.0%減)、当期純利益140億円(同30.2%減)と減収大幅減益を余儀なくされる見込みだ。予想一株当たり利益も35.2円(前期50.5円)に低下する。

このため、株価は1200円どころでさえない展開となっている。しかし、今期業績の不振は完全に織り込みつつあり、これからはむしろ、来期以降の業績に関心が集まってこよう。当然、強気の中期経営計画は評価され直す局面が早晩にも到来すると考えられ、新年に向けての期待株のひとつとして注目してのではないかと思う。2014年1月に付けた年初来高値1947円奪回から上値指向を強めるものと見られる。

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