アメリカ経済の病状と治療法

■危篤状態は乗り越えたアメリカ経済

アメリカの下院で金融安定化法案が通りました。金融機関の持っている不良債権を買い上げるということですね。以前の日本と似ていますが、これで良くなりますか。

そうだね、かつての日本と似ているね。２つのことが言えると思う。１つは、日本でもそうだったけど、多くの金融機関が破綻や経営難になってはじめて、なんとかしなくてはいけないという世論の高まりがみられたこと。この意味では、「政府が乗り出す時は金融不安の最終局面である」ということは言えると思うよ。

よく言われますけど、「新聞記者は世論より半歩先を行き、政治は半歩後を行く」。ＮＹダウも最終的な調整局面ですか。

現在が即、底値ということではないと思う。しかし、国全体がなんとかしなくてはいけない雰囲気になったことは確実で、この点は大きいと思う。民主主義の国家だから国民のコンセンサスを得ることは大切。一旦、方向が決まったら政府は次々と手を打ってくるだろうね。そうしないと、国民側から、「政府はやるといったのに何をやっているのだ」ということになってしまう。日本のバブル崩壊では、日経平均は、対策が出たものの結果的には１万円を割った。２００３年に７６００円台まで落ちたけど、最高値の３万８９１５円（８９年末）から１万円まで落ちたことと、１万円から７６００円台まで落ちたことを比べると内容は違ったと思う。

■退院後の生活が見所

もうひとつは、どんなことですか。

１０年前に起きた日本と，今度のアメリカの金融不安対策は、病人で言えばＩＣＵ（集中治療室）に担ぎ込まれて治療を受けたのと似てる。

そうね、あなたもそうだったでからね。

面目ない。あの時は、どうして、こうなったという原因調査をやっている時ではなかったね。酒を飲みすぎたから、こうなった、そういう理由は後回しで、ともかく緊急手術が必要だった。このこととよく似ていると思う。

つまり、対症療法と退院してからの根本的治療の違いですね。あなたは、すっかりお酒を止めました。

あれだけ辛い思いをすれば酒くらい止められる。今度のアメリカも痛い目に遭ったと思うよ。アメリカ経済の退院がいつになるかは、まだ分からない。ＩＣＵから一般病棟に移って経過を診て、リハビリも必要になる。体力が回復してきたら、なぜこのような症状になったか、再発を防ぐには退院して、どのような生活態度が必要かということになる。

■ビジネスモデルの再構築が大切

アメリカの病状は、なんだったのですか。

「マネーゲーム依存症」による心不全、といったところだろう。

退院して、アメリカはマネーゲームを止められるかしら。

これだけ痛い目に遭えば１００年くらいは大丈夫じゃあないかな。

言い方を変えると、アメリカのビジネスモデルの変更が迫られているということかしら。

その通りだね。狩猟民族の国民性格は変えられないだろうけど、金融に偏ったビジネスモデルから、もの作りを大切にする国に変わるんじゃあないだろうか。また、アメリカ一国で世界を支配するという考えも変わると思うよ。会社でいえば連結グループの見直しだろう。

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