金融不安の正体とは

■「金融」はお金、「不安」は先行きの心配

すごい下げだね。正直、ここまで下げるとは思わなかった。

グローバル化というのは恐ろしいわね。良くなるときは一斉に良くなるけど、悪くなれば一斉に悪くなるのですから。砲弾の飛び交う世界戦争になるよりはましでしょうけど。ところで、「金融不安」という言葉が飛び交っていますが、金融不安は簡単に言うと、どういうことですか。

そうだね。「金融」と「不安」に分けてみようよ。金融はマネーのこと、不安は心配なことということで、「お金に対し心配なこと」ということになるね。

ですけど、「金融」という言葉は、単にマネーというお金だけを意味するのではないのでしょ。

金融の「融」は、融通するということだから、お金の貸し借り、ということになるね。お金が、うまく回ることを意味している。

家庭で言えば、病気になって、急にお金が必要になる場合ですね。生憎、銀行はお休みで、親戚とか親しい人に、ちょっと貸して、というお話よね。

こういった場合は、短期間の貸し借りだから「短期金融」ということになる。銀行同士での、こうした貸し借りがコール市場と言われている。当然、貸し借りには、必ず返してもらえるという「信用」があるから成り立っている。

コール市場というのですか。

マネー・アット・コールというんだ。呼べばすぐに「はーい」と応えてくれる、お前のような存在なんだ。

用事のあるときだけでしょ。

お金を扱っている銀行だって、お金の過不足は必ず発生する。不足した銀行は、今日明日のうちには返すから、ちょっとだけ貸して。一方、手持ちに余裕のある銀行は遊ばせておくより、貸す側に回って、少しでも金利を稼ぐ。担保を取らないで貸す「無担保コール」が活発になっている。

■問題企業に資金注入で最悪は脱す

金融不安というのは、無担保コール市場が機能しなくなることね。どうして。

親しい知人に借りたお金は、銀行の開く月曜日には返すね。だけど、あの人、最近、苦しいらしいよ、という噂があったりすると誰だって貸すのをためらう。それと同じで、今のアメリカは証券会社、保険会社、銀行が次々と破綻するから、怖くなって誰も貸そうとしなくなる。その結果、資金繰りに困っている金融機関が行き詰まる。さらに、金融とは関係のないモノ作りの企業に対してもお金を貸さなくる。これが、金融不安の構図といえる。

だけど、どこの国でも、自分たちの通貨を持っているのでしょ。それでまかなえばいいのではないのですか。

ところが、「ドル」が世界で唯一、決済できる通貨ということになってしまっている。決済するためには、どうしてもドルが必要になる。しかし、ドルを貸してもらえない。したがって、各国の政府が、民間の金融機関に代わって、ドルを金融市場に供給することになった。

それでもＮＹ株は下がりました。

民間に代わって政府が市場に資金を出しても、それだけで金融機関が立ち直ることができるだろうか、ということがある。そこで、今度は問題の銀行などに政府が直接、資金を注入することになった。これは効果があると思う。

■ドルを持つことを嫌がる人は増えそうだ

不安は一応、なんとかなるとして、先行き、ドルは嫌だという話が出てきませんか。ドルに変わるものとか、また金に戻るとか。

考えられることだね。たとえば、どこかの商店街が、その商店街だけで通用する通貨に似たものを出したとする。その商店街にすごく魅力があれば問題ないけど、そういうものを発行することは、どちらかといえば苦しい場合も多いと思う。買いたい物がない、あるいは、その商店街自体が先行き不安ということになれば、誰もその券は持ちたいと思わない。これから、アメリカが魅力ある国家として引き続きドルを発行できるかどうかだろうね。それが、無理となれば、地域ごとの通貨ということになって経済活動は縮小することになる。

今度のサブプライム問題は大きな内容を含んでいるのですね。

そうだね。東西冷戦の後、アメリカの勝利でドルが中心となってグローバル化している。反省もあると思う。世界がドル離れを引き起こすのではないかという心配はある。そのことも今度の下げに大きく影響していると思われる。

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