ＧＭ破綻でＮＹダウ採用銘柄はどうなった：妻と夫の株ロマン

■ＮＹダウに自動車株は１社もなくなった

　アメリカのＧＭは、破綻して上場廃止となりましたね。６月８日から新しい銘柄に替わったと思います。ＮＹダウの構成は３０銘柄でしたね。

　そう。１８９６年のスタートの時は１２銘柄だったと聞いている。１９２８年に３０銘柄となって、今も３０銘柄で来ている。正式には、「ダウ工業株３０種平均」と呼ぶけど、通常は「ダウ平均」という。

　工業株と言うのですから、物作りの製造企業が多いのですか。なんだか、アメリカにそぐわない感じですけど。

　厳密には分けられないけど、大きく見て物作り企業ということでは、アルミの『アルコア』、電機の『ＧＥ』、航空機の『ボーイング』、重機の『キャタピラー』、化学の『デュポン』、電機の『ヒューレットパッカード』、半導体の『インテル』、化学の『スリーエム』、飲料の『コカ・コーラ』、薬の『メルク』、『プロクター＆ギャンブル』、航空宇宙の『ユナイテッドテクノロジー』、石油の『エクソンモービル』などがある。

　最初からダウ平均に入っているのはどこですか。

　ダウ平均の算出が始まった、１８９６年５月２６日から現在まで続いているのは『ＧＥ』（ゼネラル・エレクトニック）のわずか１社だけなんだ。ＮＹダウは入れ替えの歴史とも言える。これはＮＹダウを、「強いアメリカの象徴」として位置づけしているため、常に、時代において強い企業・銘柄を選んで入れ替えている。

　じゃあ、弱い、『ＧＭ』がダウ平均から外されたのも当然ですね。

　そうだね。外すというよりも、破綻して上場廃止だから、そうするしかなかった。

　これで、ＮＹダウには自動車株は１社もなくなったのですか。

　そうだね、なくなった。自動車といえば、アメリカの代表的な産業だった。選らばれし３０銘柄から消えたことはアメリカの投資家にはショックだったと思われる。「トヨタ自動車を入れてはどうか」、という噂もあったようだけど、しかし、そこまではアメリカの投資家には耐えられないことだ。今朝の報道では、トヨタはＧＭとの合弁工場を清算意向と伝えられているが、仮に、トヨタ自動車がダウ銘柄に採用となっていたら、継続したかもしれないね。

■ＮＹダウは高株価銘柄の加入も低調

　ＧＭの代わりにどこが入ったのですか。

　６月８日から、『ＧＭ』と『シティグループ』が外れて、ＩＴの『シスコシステムズ』と、保険の『トラベラーズ』が採用されている。

　ＧＭは破綻前の株価は１ドルを切っていたと思います。当然、新たに入った銘柄は，ＧＭの株価よりは高いでしょうから、ＮＹダウは大きく動いてもよいと思われるのですが。そうでない印象です。

　その通りだね。ＧＭの株価は１ドル以下、シティグループも３ドル台ていどだった。シスコシステムズは入れ替えの頃は２０ドル近い株価だし、トラベラーズも４４ドルくらいだった。当然、安い株価の銘柄が消えて、値段の高い銘柄が入ればＮＹダウは、（１）振幅が大きくなっていい、（２）経営不振の銘柄が外れて、元気のよい銘柄が採用されたのだから上昇してもいい。しかし、６月８日のＮＹダウ８７６４ドルは、６月１０日現在では８１４６ドルに下がっている。

　どうしてですか。


■「除数」調整でＮＹダウの連動性をキープ

　ＧＭとシティグループの株価を合計すると約４ドルていど。これに対し、シスコとトラベラーズの合計は７０ドル近い。単純に考えれば銘柄入れ替え後は、ＮＹダウが大きく動いていいはず。実は「除数」というのがあって、ダウに連続性もたせるために除数で調整したことがある。

　なんですか、「除数」というのは。

　割り算での、「分子÷分母」の分母のことなんだ。ＮＹダウに採用されている３０銘柄の株価を合計して３０で割り算すれば単純平均が算出される。この時の３０が除数に当る。

　そうですわね。

　ところが、スタート当初はそうであっても、途中、株式分割があったりすると、「権利落ち」があって、株価に連続性がなくなる。たとえば、分かりやすくするためＡ、Ｂ、Ｃの３銘柄で、株価をＡ＝１００円、Ｂ＝２００円、Ｃ＝３００円としよう。３銘柄の平均は「１００＋２００＋３００」÷「３」＝２００円。仮に、Ｃ銘柄が１株→２株の分割をしたとする。分割後のＣの株価は１５０円となる。

　どうして。

　仮に、Ｃ株を１０００株所有して人は、権利付の時は３００円×１０００株＝評価額３０万円だった。分割後１０００株増えて２０００株となったのだから、権利落ち後の株価は１５０円でよいわけだ。権利落ち後に買う人は、分割の権利がないのだからその分引いてあげなくてはいけない。一方で権利を取って持っている人も権利落ちで損をしてはいけない。そこで、権利落ち後も同じ額となるようにして、２０００株×１５０円＝３０万円ということで、権利落ち前と変わらないようにする考え方なんだ。

　権利落ちしたままで３銘柄を計算すると　「１００＋２００＋１５０」÷「３」＝１５０円となって、権利付時点の平均２００円より５０円値下りするのですね。

　そうなんだ。経済情勢などの要因による値下りではなく、こうした分割等による株価の変動は、調整しなくてはいけない。このケースなら権利付の「１００＋２００＋３００」÷「３」＝２００円を、権利落ち後に、「１００＋２００＋１５０」÷「ｘ」＝２００円ということになって、ｘを求めると４５０÷ｘ＝２．２５となる。つまり、最初除数３だったものが、分割によって２．２５に下がったということなんだ。日経平均もＮＹダウもこうした除数の調整によって平均株価に連続性を持たせている。今度の入れ替えでも除数の調整が行われた。

■ＮＹダウは景気次第

　ややこしいけど、仕組みは一応分かりました。つまり、ＮＹダウは「一応」、連続性を維持している。後は、景気次第ということですか。

　まあ、そういうことになるだろうね。厳密には、今度のＧＭなどの入れ替えは株式分割ではないから、除数を調整する必要があったかどうか、ということはあるだろうね。もっとも、それ以上に、アメリカの景気が思ったほど回復して来ないことが心配だ。雇用情勢が依然、悪い。まだオバマさん支持は高いけど、景気がもたつくようだと日本の政局のように混迷の可能性も出てくる。追加の景気対策をすると財政赤字がさらに膨らむ。ドル紙幣を印刷すればよいと言う考えも、世界がドルを要らないと言い出し、ドル安に拍車が加わると、世界の経済化つども縮小に向かう心配がある。

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