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■日本株は出遅れているというけど本当?:妻と夫の株ロマン
■日本株は「出遅れ」ているのか?
新聞、雑誌、ネットなどで、日本市場は世界のマーケットに比べて、「出遅れ」ている、と指摘されています。あなた、どう思います。
このことについては、3つの視点があるように思うよ。(1)『期間設定をどこに置くか』、(2)『NYダウに割高感はないのか』、(3)『本当に日本株は割安なのか』、という3点を挙げたい。
順番に聞きますが、その前に、もし、3つ目の、「日本株が割安でない」、ということなら、単に、AとBを比較する発想法が根本から違ってきますね。
そうだね。割安とか出遅れという時には、それなりの理由があると思う。その点を考えなくてはいけない。特に、昔から、『割安に買いなし』、『出遅れ株は深追いするな』、『安物買いの銭失い』、などの教えもある。
それでは、最初から聞きますわ。「期間設定」は、どういうことなの。
たとえば、今年3月からの期間で見ると、日経平均は高値まで53%上昇。これに対し、NYダウは62%上昇している。日経平均の上昇率は確かに小さい。この3月安値から高値までの比較では、日本株の出遅れという見方は間違いではないと思う。このため、日経平均は、夏場以降、上値でモミ合って、チャンスをうかがっていたと思う。
今は、違うのですか。
そうなんだ。期間設定を、「8月末から前週末まで」の3カ月弱に置き換えてみると、NYダウは15%上昇しているが、日経平均は逆に12%下落している。
なおさら、日本株の出遅れが目立つのでありませんか。
僕は、そう見ていないよ。本当に出遅れているのなら、日経平均は下がってはいけないんだ。マラソンにたとえると、スタート起点から20キロくらいまでは、走りが良くて、今日はいけそうという印象。しかし、30キロ過ぎくらいでペースダウンして、先頭集団から脱落して遅れ始めたのと似ている。期間の取り方で、このように見方はガラリと変わってくる。8月末から日経平均は、しばらく、高値でモミ合っていたけど、最近は先頭集団について行くことができないで、脱落し始めた。それに、二つめの、アメリカNYダウの問題にもつながる話だけど、逆に、NYダウこそ、出遅れていたのではないかと思っているんだ。
えつ、逆なんですか。どうして、そういうことが言えるの。
期間を、もう少し長くとってみよう。NYダウが1万4198ドルの高値をつけたのは2007年9月、その後の安値か09年3月の6469ドル。これに対し、日経平均は1万8300円の高値をつけたのが2007年2月、同安値は08年10月の6994円となっている。比較して、分かるように、日経平均がNYダウに対し、天井も底値も半年ていど早いんだ。つまり、NYダウは日経平均に比べ、遅れて動いている見ることができるんだ。つまり、NYダウこそ出遅れといえる。
なるほどね。それで、NYダウのほうが割高ではないかということは、どのように説明するわけ。
日本が1990年代に経験したバブル崩壊を思い出すと参考になると思うんだ。表面的にはバブルの後片付けは終わったように見えても、日本では10数年という長い時間がかかった。アメリカの金融バブル崩壊も、なんとなく一巡したように見えても、実際は片付いていない。相変わらず、アメリカでは地方銀行の破綻が続いているし、大手銀行だって、会計処理の変更で含み損が表に出ない。実際は、隠れ含み損は大きいといわれている。失業率も改善どころか、さらに悪化している。財政赤字が大きいから、財政出動も難しい。最悪期から見れば企業業績はよくなっているけど、さらに、上向くということではない。そう考えるとNYダウの3月安値からの62%上昇は割高に見えてくる。
■日本株の一段安は避けられない
GMも回復はしてるようですが、まだ、一人立ちは難しいようですね。三つめの、日本株は割安なのか、という点についても今の話と似てるのですか。
そうなんだ。前自民党政権の景気テコ入れでGDPと企業業績は上向いた。しかし、さらに上に行くだろうか、というと難しい。
新政権の政策が景気に対してはマイナス圧力ということですか。
そういうことだね。それに、日本には構造的な問題がる。需要と供給のアンバランスなんだ。
どのくらいあるのですか。
40兆円程度と言われているよ。それは、需要が40兆円不足ともいえるし、逆に、供給が40兆円多すぎるともいえる。
どうして、そんなに大きいギャップがあるの。
需要側からみれば、少子高齢化に加え、日本の人口そのものが減少に向かい始めている。たとえば、「胃袋論」で言えば、胃袋の数が減るから、食べる物、飲む物は減って行く。しかも、高齢化になれば食べる量も減る。同じようなことが消費の世界では、いろいろなところで起きている。百貨店も団塊世代の大量定年で「包装紙」を使った贈り物をしなくなる。企業も不景気だから、贈り物は控える。その結果、全国百貨店の月別売上は20ヶ月も連続で減少している。
政府が需要を増やせばいいのではありませんか。
そうだけど、今は、逆のことをやっているよ。経済の営みは「政府部門」、「企業部門」、「家計部門」の大きくは3つの部門で動いている。新政権は、「家計部門」を刺激すれば、すべて上手く行くと思っているようだ。家計支援に力を入れているけど、しかし、家計部門が工場を建て、製品を開発し作って、海外へ売って稼いでくれるわけではない。そこに、勘違いがある。「政府部門」と「企業部門」を締め付けていては、経済活動がうまく行くわけがないんだ。
需要が増えないのなら、供給側を減らすしかありませんわね。
そうだね。政府を頼りにできないとなれば、供給側が淘汰されるか、企業合併が、ますます増えることになるだろう。既に、すべての業界で経営統合が進んでいるけど。
政府の政策変更があるまでは、だめということですか。
しばらく期待できないだろうね。新政権は景気の重要性は十分に分かっていると思うけど、前政権との違いを出すことに懸命だ。結局、新政権を選んだ国民側から、マニフェストを修正してもよいから、景気のテコ入れをして欲しい、というまでは手を打たないだろう。今の政権政策に対して、日本の株価の割安感はないと思うよ。しかも、NYダウが出遅れではなく、割高ということになって下げることにでもなれば、日本株の一段安は避けられないだろう。恐らく、日本株を外国人投資家が投げてくると思う。そうなれば、これまで、慎重に動いてきた個人投資家にとってはいいチャンス到来といえる。
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