☆株ロマン☆ 時々の話題を夫婦の会話でお届けします
「渡り」の功罪について
■世の中、「お金で判断する」時代に
高級官僚が、天下り先の会社を転々とする、「渡り」が批判されていますね。
そうだね。給与も多いうえに退職金を次々ともらって、役所にいたころより沢山の収入になると批判されているね。
天下り先が完全な民間企業ならまだしも、政府系であったり、政府からの仕事をもらうためだったりなら首をかしげたくなります。社会主義的な国と変わらないわ。
同年輩の元公務員と話をすると、当然とは言わないけど、彼らにすれば、当然に近いという意識が言葉の端に感じられる。
どうして。
ひとことで言えば、自分たちは勉強してきたという思いだ。若い頃、遊びたい時に、一生懸命に勉強してきたという思いがある。皆んなが、遊びほうけておきながら、歳をとってから役人を批判するのは筋違い、という思いだろう。分からないではない。体育会系でがんばった人は、アメリカのプロ野球に行ったり、海外のプロサッカーチームに行ったり、プロゴルファーになって、数億円稼いでいる。勉強した彼らは、一流の大学へ行って、高級官僚になって高収入を得て、どこがおかしいという思いだろう。
分からないではないけど、公務員は給料もそれなりに安定しています。退職金だって少なくないですわ。しかも、いちばん大切な点は、公務員は国民に奉仕することが目的でしょ。お金儲けをしたいなら、初めから民間企業に行けばよいのです。
そういうことだろうね。世の中、多くのことが、「お金で判断する」時代になっているから、いろいろなところに問題が出てくる。昨年だったかな、成田空港で検察庁の幹部が、「オレをだれだと思っている」と暴れた事件があったけど、完全に立場を勘違いしている。今、日本の政治は保守から野党へ変わろうとしてるけど、社会主義的な国になると、この手の話が増えてくる心配がある。もっとも、仮にそうなっても、われわれ国民が選挙選べば仕方がないけど。
■昔は「渡り職人」もいて腕磨きが大切な時代、今は、お金儲けのために「渡り歩き」が横行
「渡り」ですけど、かならずしも悪いばかりの言葉ではありませんわね。自然界では「渡り鳥」だっているのです。
昔は、「渡り職人」がいたようだね。腕を磨くためにあちこちの現場を歩いて修行する。歌にだってあるね、「包丁一本、旅へ出るのも板場の修業」が。そこには、お金儲けより、「職人」としての「腕を磨く」という筋が一本通っていた。今は、そこのところが欠けていると思われる。
今はお金のために、有利なところを求めて転職する時代ですもの。
そうだね。昨年倒産した広島の不動産会社が外資系証券の指示で重要事項を隠匿したまま多額の資金調達をして投資家をだました事件があったね。あれなんかは、悪い方の「金融の渡り人」ともいえる。身に着けた金融の知識で、会社を渡り歩いて荒稼ぎするやり方ともいえる。そういう人を雇って、あとで訴訟になれば、雇った会社が大変な打撃を受ける。
野村證券でもありましたわね。頭のいい中国人を雇ってM&Aの部署に配属したら、自分のお金儲けに利用されてしまって、あれで野村の印象がずいぶん悪くなり、野村の株価が下がり始めた原因にもなったと思いますわ。
そうだったね。企業も昔の日本のスタイルを見直す必要があるだろうね。
効率を重視して非正社員を雇うばかりでなくて、昔のように社員と一体感を強めることですか。
全部が、そういう方向ということではないだろうけど。グローバル化で競争が激しいから、企業が生き残って行くには、景気の波の中で人員の増減は必要だと思う。しかし、人を単なる部品として扱っていては、従業員の方も部品にすぎないのなら、会社を利用することしか考えなくなる。長い目で見れば会社の力を落とすことになる。会社という同じ船に乗っているのだから、運命共同体的なところも大切だね。ひとことで言えば、「愛社精神」であり、役人なら「愛国精神」も大切だろうね。昔の軍国主義に帰れということではないけど、今はあまりにも自己中心的で愛社精神が乏しくなっている。
■企業も個人も「お金ありき」から「社会に役立つこと」を見詰め直すところに来ているようだ
自己中心は企業だって同じでしょ。
もちろん、そうだね。たとえばM&Aだって、単にお金で会社を売買するような考えは見直すことも必要だろう。ある上場企業の社長が言っておられた。銀行に勧められてM&Aで、会社を買ったけど、外から見るのと随分違っていて、使える技術は何もかったと反省されていた。今の会社は、どこも持ち前の技術が薄れてきていることは間違いないと思われるよ。とくに、技術を持っていた団塊世代の大量定年で職人的な技術分野は薄れてきている。ソニーの元社員がこぼしていたけど、昔は、技術に対するこだわりがあったけど、今はSONYというブランドを切り売りしている商社みたいだと。
なるほどね。わたしたの子供たち、随分、難しい時代に生きてるわね。これから先、あなたは、どのように子供たちにアドバイスしますか。
お金は大切であることは否定しない。だけど、お金の前に、「社会に役立つ」という気持ちを持つように言いたい。昔の証券会社の優秀な営業マンは「手数料」よりも「顧客に儲けさせる」ことを優先した。お客さんが大きくなれば手数料も自然に大きく増える。先に手数料ありきで客殺しをやれば手数料も見込めなくなる。子供たちには、「好きこそ物の上手なり」で、好きな打ち込める仕事をやるように言いたい。聞いてくれるかどうかはわからないけど。
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