失業増加を社会の変化の中でどう捉えていけばよいのだろうか

■「豊かさ・なんでもできる世の中」がむしろ人の孤独と
　疎外感を生んでいるようだ

非社員の失業者がまもなく８万人を超えるそうです。大変な問題です。それに、今年も、また３万人の自殺者だそうです。もう１０年も年間３万人以上の方が自殺されています。わたしなんか、最近の世の中が怖いです。

戦後を見て来たわれわれから見れば、豊かで、やれることもやれる世の中に、何が不満なのだろうと思ってしまう。しかし、世代や立場が違ってくると、物の考え、受け取り方の違うことを痛感させられる。豊かなこと、自由なことが、かえって重荷になっているのではないかと思われてしまう。

物は豊かになったけど個人が生きているという実感が持てなくなっていると思いますわ。私たちの小さい頃は田舎の山や海に囲まれて、自然の中に抱かれていたという実感がありました。自然は人が作ったものではない、という安堵感がありました。東京でも、昔は、せいぜい東京タワーが目立つていどでした。今は、大きな綺麗なビルが林立していますが、個人とは無縁の世界という疎外感です。大都会という別の生き物がいる感じです。たしかに、何をやるのも自由ですが、そこには必ず努力が必要です。昔なら、生きるのに一番、原点の食べることに努力しないと生きて行くことができませんでした。今は、ちょっとアルバイトすればお金が入り、それでコンビニで食べ物を買えば生きることはできます。簡単になんでもできること自体が人の基本である努力と、そして、努力の後の喜びというものを蝕んでいるようです。

■資源のない日本には「努力」なくして存在はできない、しかし人は努力を嫌がる

今日は、随分、重いことを言うね。その通りだね。便利が良くなったことで、努力がどこかに置き去りになった。しかも、社会が豊かになって、いろいろな立場の人が増えて、それぞれの土俵があちこちにできてしまった。良く言えば、それぞれの専門分野で活躍できるが、悪く言えば、人様の領域に余計な口出しするな、ということにもなっている。結果、怒られるより、自分のことだけやっていればよいということになっている。

それぞれの立場ということで言えば、今度の失業の問題は、企業家は安い賃金で収益を上げようとするのも当然ですから、非難されることではありません。資本主義という競争社会では、どうしても勝ち負けは出ます。運悪く負けた人を政治という立場の人が手を打つべきものですね。

そうだね。企業家は政治家ではないんだ。法律の枠の中で努力して、よい製品を開発して稼ぐことが使命なんだ。相撲取りは、土俵の中でいい相撲を取ることが使命と同じなんだ。昔は、コーヒーといえば喫茶店で高いものだった。今は１００円台で飲める。それを否定することはできない。安いコーヒーを提供する商売もある。それを飲んではいけないとも言えない。同じように安い賃金を提供しようとする人だっている。それが社会的に問題というなら政治の立場の人が手を打てばいい。企業がけしからんと言っているようでは高い給料を取っている政治家はいらないことになる。

時代の変化の中でそれぞれの立場で、人がどう存在価値を高めて行くかですね。昔は、企業に就職すれば企業が最後までなんとかしてくれるという思いがありました。今は、ちょうどその変化の境界のような時代ですね。戦後を生きてきたわたしたち世代には、今の変化に着いていけない。

企業は競争にさらされて生存をかけて戦っている。個人も努力しなくてはいけない時代であることは間違いない。努力は嫌だ、生活は面倒見て欲しいというのでは、仮に、社会主義国になってもそういう人が増えると国家は破綻する。人はこの世に生まれた以上は努力しなくてはいけないんだ。太古の昔なら、速く走って逃げないと肉食獣に食べられてしまう。今は天敵がいないから人間に緩みが出ていると思う。

■「努力」を「練習」の言葉に置き換える工夫も必要

人は、努力と言う言葉は嫌います。なにか他の言葉はありませんか。

「練習」に置き換えればいいと思う。体育系の人なら、「練習と成績の関係」、はよく理解している。それと同じで、「勉強」と思わないで、「本を読む練習」「物を考える練習」と思えば、ずいぶん、肩の荷が軽くなる。いまの若いお母さんでも、いまだに子供に、「勉強しなさい」、といっている。それを、「本を読む練習しなさい」ろ言い換えれば、子供は随分気が楽になるはずだ。「真央さんは練習したから世界１になれたのよ」といえば、子供は目を輝かせる。

そうね。真央さん自身も「練習はウソをつかない」と言ってるのですから。

僕も高校の頃は甲子園目指して野球に明け暮れていた。厳しい練習だったけど、練習の結果、「勘」がすごく働くようになる。「このバッターの打球はこっちの方向に来そうだ」という勘。なんでもそうだと思うよ。練習の成果としてヒラメキのようなものを神様はプレゼントしてくれる。今度の不況を日本が変わる、良きチャンスと捉え、「練習に打ち込む」国民にグレードアップすればいい。もちろん、それでも練習は嫌やだ、とう人は必ず何割かは残る。そこは、社会で政治がどう考えるかだ。仮に、「全員が練習は嫌やだ」と成ったら資源のない日本は破綻してしまう。

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