「５月危機説」について

■５月の決算発表は最大の注目材料、大病患い退院後１ヶ月の検診と同じ

日経平均は３月に７０００円を割って、底抜けになると心配されていました。それが、１０日（金）には一時９０００円台です。様変わりですね。

まったくだね。９０００円台は３ヶ月ぶり。わずか１ヶ月間で２９％の上昇だから、これからは、強弱感が対立してくると思われる。

１ヶ月で３０％も上昇することは、上げのピッチが速いからでしょ。それに、あなたがお得意の相場格言の『３割高下に向かえ』に、当てはめると、いったんは調整が予想されるのではありませんか。

そうだね。仮に、先は高いとしても調整は、むしろ望ましいと思う。特に、ここからは、「買い方」と「売り方」の心理がポイントとなりそうだ。

売り方、というのは空売り（からうり）のことですね。

そうだよ。

売り方はかなり動揺したと思います。２月頃に、こんな話が流れていました。「大手証券が３月末の日経平均は５５００円になる」というお話です。わたしたち主婦の株談義仲間の間で、ずいぶん話題になりました。相場は大変なことになるって。

そうだったね。僕も聞いた。大手証券の勉強会に出た人が、「大変なことになる」と騒いでいた。日本には、まだ、大手証券崇拝が残っているから、信じて、かなり空売りした人は多かったようだ。

そうはなりませんでした。しかし、相場見通しは間違ったのに、自分のところの株価は急落しました。その大手証券は、多分、自分のところの台所が苦しいから相場全体も下がると思ったのではありませんか。

あの時は全員が７０００円は割れると思った。僕もそう思った。今にして思うと、見方が一致すると、相場は反対に動くものだと思い知らされた。ところが、金融サミットで世界が景気テコ入れで一致し、相場の様子が、がらりと変わった。

ちょうど同じ頃、アメリカＧＭが破綻整理されるかもしれないという話が出ました。しかし、今のアメリカは金融業のウエートが高くなっているため、競争力を失った自動車より金融が大切という受け取りでしたね。

そうだね。かつて、アメリカが製造業の盛んな頃は、自動車産業は大切な地位にあった。もちろん今も大切なことに変わりはないけど、しかし、今は誰の目にもアメリカの自動車は負け組みと映っていると思う。このことが、トヨタ自動車など日本の自動車株見直しにつながったと思う。

しかも、麻生内閣の政策ヒットもありました。高速道路の休日料金引き下げ、新車買い替え支援です。なかなか、総理もやりますね。高速道路の渋滞はどうかとは思いますが、国民が家に引きこもっていることに比べると活気があってよいと思います。ただ、「家の外」銘柄が元気となった半面、「家の内」銘柄は、すっかり元気がなくなりました。

そうだね。今のマーケットは資金量に限界があるから、何もかも一斉に買うだけの力はない。一方を買うためには、一方を売らなくてはいけない。さて、もう一度、最初の話に戻るけど、買い方と売り方の心理状況についてはどのように思う。

そうね。売り方はかなり急いで買い戻したと思われます。一方、買い方は、世の中が一大変化したような、桜満開の気持ちだと思うわ。日経平均の１万２０００円は当然といった声も聞かれます。

■日経平均の１株利益は赤字転落の可能性、銀行の貸し出し抑制で倒産件数増加懸念

売り方は７０００円を割れることは間違いないと自信を持った。今度は買い方が１万円以上は間違いないと自身を持ち始めている。買い方も、売り方も、お互いに絶対的な自信を持ったところは注意が大切だ。ところで、「５月危機説」を耳にしたことがある？

いいえ、ありませんわ。５月が危険なのですか。

そうなんだ。「３月危機説」の次は「５月危機説」が言われている。

また、同じ大手証券が言っているのですか。

そうではないようだ。今度は大手の銀行あたりのようだよ。５月の企業の決算発表では、そうとう悪い数字が予想される。それによって、銀行が企業への貸し出しにシビアになると言われている。このため、企業倒産が、また増えそうだということなんだ。もうひとつは、５月に発表される企業業績の悪化が、株価には大きな重石となって、株価急落の引き金になる、ということだ。

しかし、政府の景気テコ入れで、景気も企業業績も上向くのでしょ。

そうなんだけど、効果が出るまでは時間差がある。今年５月の決算発表時点で、直ちに企業業績が上向くことにはならない。上場会社の経営者は、内心では政府の景気刺激策に期待を持っていると思う。２０１０年３月期の企業業績は下期あたりから回復すると見ていると思われる。しかし、今の時点で、そのことを公表することは早すぎるから、慎重な見通しになると思われる。日経平均の１株利益は１０日（金）現在では、わずか５０円へ急低下している。つい最近までは４００円程度あった。

そんなに下がってるの。じゃあ、ＰＥＲ（株価収益率）は高いでしょ。

１７７倍くらいになっている。

日経平均が７６００円台に下がった２００３年頃の１株利益はどのくらいでした。

実は、大手銀行などの赤字転落などが響いて、１株利益はマイナス（赤字）になってＰＥＲは計算できなかった。今度も５月時点では１株利益が６〜７年ぶりの赤字の恐れが強くなっている。このことも「５月危機説」の背景にあると思うよ。

今の相場は９０００円に乗せたりして、一見、元気そうに見えるけど、まだ「病み上がり」であることを忘れてはいけませんわね。

まったくその通りだね。１００年に一度と言われるほどの大病を患ったのだから、あなどってはいけない。無理はできない。「５月危機説」は、言い換えれば、退院後１ヶ月目の検診に来てくださいということだと思うよ。そこで、どのくらい体力が回復しているかが分かると思う。

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