【アナリスト水田雅展の銘柄分析】アーバネットコーポレーションは16年6月期増収増益基調、4%台の高配当利回りも評価して出直り本格化

銘柄分析

 アーバネットコーポレーション<3242>(JQS)は投資用マンションの開発・販売を主力としている。株価は7月の直近安値から切り返して戻り歩調の展開だ。16年6月期増収増益基調であり、4%台の高配当利回りも評価して出直りの動きが本格化しそうだ。

■投資用マンションの開発・販売が主力

 東京23区で投資用・分譲用マンションの開発・販売事業を展開している。収益基盤強化に向けて、15年3月に子会社アーバネットリビングを設立(7月操業)した。

 当社は投資用ワンルームマンションの開発・1棟販売や分譲マンションの開発などのBtoB卸売、子会社アーバネットリビングは当社開発物件の戸別販売、他社物件の買取再販、マンション管理・賃貸などのBtoC小売を基本事業とする。

 REIT、ファンド、海外投資家の参入などで投資用ワンルームマンションに対する投資・購入マインドは旺盛だ。日銀の異次元金融緩和、20年東京夏季五輪、脱デフレ、そして日本経済再生の流れも追い風となる。

■海外投資家への直接販売も強化

 都心部での事業用地取得難、土地価格上昇と建設コスト上昇による売上総利益率低下傾向という事業環境に対して、投資意欲旺盛な台湾・シンガポール・香港・中国本土の海外投資家への直接販売など販売手法の多様化、川崎市や横浜市など人口増加・優良地域への開発エリアの拡大、売上総利益率安定化に向けた分譲物件開発の平準化などの施策を強化している。

 海外投資家への直接販売については、14年7月売買契約締結した投資用ワンルームマンション「アジールコート銀座イースト」(39戸、15年6月期売上計上)が第一弾となり、14年11月に投資用ワンルームマンション「アジールコート新宿」(38戸、16年5月竣工・16年6月期売上計上予定)の売買契約を締結した。

 また15年2月に投資用ワンルームマンション「AXAS大森西アジールコート」(15年6月竣工、マンション74戸、店舗1戸)の店舗1戸の売買契約(15年6月期売上計上)を締結した。

■15年6月期は大幅増益、16年6月期も増収増益基調

 8月6日に発表した前期(15年6月期)連結業績(2月16日に2回目の増額修正)は、売上高が119億10百万円、営業利益が16億52百万円、経常利益が13億95百万円、純利益が8億73百万円だった。前期第3四半期から連結財務諸表を作成しているため単純比較はできないが、前々期の非連結決算との比較では13.6%増収、39.3%営業増益、40.8%経常増益、14.4%最終増益となる。

 配当予想(2月16日に2回目の増額修正)は前々期比1円増配の年間13円(第2四半期末5円、期末8円)で、配当性向は31.3%となる。配当性向については約30%を目安としている。またROEは21.1%、自己資本比率は32.6%だった。

 不動産開発販売は投資用ワンルームマンション11棟(507戸)、コンパクトマンション1棟(47戸)の売却で売上高が116億71百万円、不動産仕入販売は買取再販による分譲用コンパクトマンション(2戸)の販売で売上高が96百万円、その他(不動産仲介・賃貸など)の売上高が1億43百万円だった。

 売上総利益率は21.7%となり、前期非連結ベースの18.8%に対して2.9ポイント上昇した。販管費の圧縮も寄与して大幅営業増益、経常増益だった。純利益は税務上の繰越欠損金が前期で解消されて税金費用が増加したため、営業利益、経常利益に比べて小幅な伸び率だった。

 なお参考値として15年6月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(非連結7月~9月)29億47百万円、第2四半期(非連結10月~12月)18億84百万円、第3四半期(連結1月~3月)53億91百万円、第4四半期(連結4月~6月)16億88百万円で、営業利益は第1四半期3億63百万円、第2四半期1億33百万円、第3四半期9億51百万円、第4四半期2億05百万円だった。物件売上計上で四半期収益は変動しやすい収益構造である。

 今期(16年6月期)の連結業績予想(8月6日公表)は、売上高が前期比34.3%増の160億円、営業利益が同6.5%増の17億60百万円、経常利益が同3.2%増の14億40百万円、純利益が同3.1%増の9億円としている。

 売上面では投資用ワンルームマンション661戸、建売4戸、買取再販44戸の販売を予定して大幅増収見込みだ。売上総利益率の想定は同3.3ポイント低下の18.4%としている。前期に利益率の高い物件が含まれていたことに加えて、17年6月期売上計上予定の分譲マンション販売に係る販売促進費を計上するため、利益の伸び率は小幅にとどまるとしている。

 低金利と円安の継続、相続税増税による不動産投資の見直し需要の高まり、そして海外投資家が加わり、投資用ワンルームマンションに対する投資・購入マインドは旺盛であり、増収増益基調が期待される。

 なお配当予想(8月6日公表)は同1円増配の年間14円(第2四半期末7円、期末7円)としている。予想配当性向は38.8%となる。

■株価は7月の直近安値から切り返して戻り歩調

 株価の動きを見ると、全般地合い悪化も影響した7月9日の直近安値285円から切り返して戻り歩調の展開だ。8月6日に338円、そして19日には339円まで上伸した。

 8月19日の終値337円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS36円06銭で算出)は9~10倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間14円で算出)は4.2%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS203円43銭で算出)は1.7倍近辺である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線を突破した。そして25日移動平均線が上向きに転じた。週足チャートで見ると13週移動平均線に続いて26週移動平均線も突破の動きを強めている。16年6月期も増収増益基調であり、4%台の高配当利回りも評価して出直りの動きが本格化しそうだ。

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