【どう見るこの相場】九州銘柄は「ハイテク・バリュー株」人気で地方区から全国区銘柄にランクアップ

どう見るこの相場

■九州銘柄の隠れた魅力

 自画自賛めいて恐縮だが、前週10日付けの当特集で取り上げたアメイズ<6076>(福証)が、望外の値上がりで年初来高値追いとなった。同社は、九州を地盤に郊外型ビジネスホテルを展開する福岡証券取引所の単独上場会社である。高値追い加速のカタリスト(株価材料)は、今年7月12日に発表した今2023年11月期業績の上方修正だったが、このなかでも上方修正コメントの「九州地区における半導体工場の新設による宿泊需要の増加」が、投資家心理をいたく刺激したようである。福証単独上場の地方区銘柄が、このままいくとあるいは全国区銘柄としての認知度を高めるかもしれない。

 というのも九州地区は、「シリコンアイランドの復活」と騒がれるいま最もホットな半導体工場の集積地であるからだ。2021年11月のTSMC(台湾積体電路製造)の熊本県菊陽町への進出公表以来、半導体関連産業の企業立地が激増しており、九州地区の半導体関連の設備投資額は、今後3年間で1兆5000億円、雇用創出を含めた経済波及効果は、熊本県だけでも10年間で4兆3000億円にも達するとの試算もあるほどだ。

 岸田内閣も、経済安全保障政策の大きな柱として国内半導体拠点の整備に2年間で2兆円の予算措置を講じる「半導体・デジタル産業戦略」を推進し、TSMCの熊本工場の建設費の半分を補助する。さらに足元でこの追い風政策となっているのが、官民ファンドの産業革新投資機構が、9000億円超もの資金規模でJSR<4185>(東証プライム・監理)株式公開買い付けをして非公開化を進めていることや、7月11日には経済産業省が、SUMCO<3436>(東証プライム)が佐賀県に建設するシリコーンウエハ工場に最大750億円の助成をを公表したことだ。

 これだけの政策支援、経済波及効果が見込まれるとしたら、大分市に本社を置くアメイズのみでなく、九州銘柄には地銀株、関連製造業、消費関連、住宅株、サービス業まで幅広く業績の押し上げ要因になるのは有力となる。しかも、九州銘柄の認知度の低さから超割安水準に放置されているケースが多いのである。半導体関連の割安株ということから、ハイテク・バリュー株のポジションとなる。

 このハイテク・バリュー株は、あるいはこの7月後半相場では存在感を強める可能性もある。日米両市場とも、中央銀行の金融施策次第で7月相場入りとともにハイテク株とバリュー株とのどちらを選好するかで気迷いがみられるからだ。とくに米国では、7月26日、27日に開催予定のFRB(米連邦準備制度理事会)のFOMC(公開市場委員会)で政策金利の引き上げが打ち止めになるのか、それとも次回10月のFOMCでも利上げがあり長期化するのか、この動向が見定められるのは、8月25日から27日までカンザスシティ地区連銀が主催する年次経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」まで待たなくてはならないと先延ばしされている。

 投資セオリーでは、政策金利引き上げ打ち止めならハイテク株、政策金利長期化ではバリュー株となるが、今週の当特集では、どちらに転んでも間違いのないこのハイテク・バリュー株に注目することにした。まるで諺の「負うた子に教えられて浅瀬を渡る」のようになるが、格下の地方区銘柄に教えられて「第2のアメイズ」へのランクアップを先取りして九州銘柄にアプローチするのも一法となりそうだ。
(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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