ヒーハイストは調整一巡、24年3月期は収益改善基調

ヒーハイスト<6433>(東証スタンダード)は小径リニアボールブッシュの世界トップメーカーである。工作機械や半導体製造装置などに使用される直動機器を主力として、精密部品加工やユニット製品も展開している。成長戦略として、中長期的な自動化関連の需要増加に対応するため、直動機器の「スマート生産プロジェクト」の一環とする設備投資や開発投資を推進している。24年3月期は営業黒字転換予想としている。自動化関連の需要に向けて直動機器のスマート生産体制を確立し、生産増強および販売拡大を図るとしている。積極的な事業展開で収益改善基調だろう。株価は安値圏でモミ合う形だが、地合い悪化の状況でも大きく下押すことなく推移して調整一巡感を強めている。1倍割れの低PBRも評価材料であり、出直りを期待したい。

■小径リニアボールブッシュの世界トップメーカー

小径リニアボールブッシュの世界トップメーカーで、20年7月に商号をヒーハイスト精工から現在のヒーハイストに変更した。リニアボールブッシュは機械装置の稼働部に用いられる部品で、金属と金属の接触面を鋼球が転がりながら移動することで摩擦による影響を低減し、機械装置の寿命を延ばす役割を担っている。

独自の球面加工技術や鏡面加工技術をコア技術として、工作機械や半導体製造装置などに使用されるリニアボールブッシュや球面軸受けなどの直動機器、レース用部品や試作部品の受託加工などの精密部品加工、液晶製造装置向けなどのユニット製品を展開している。直動機器の「スマート生産プロジェクト」の一環とする設備投資や開発投資を推進し、23年5月には埼玉工場の新工場A棟が稼働開始した。

23年3月期の品目別売上高は、直動機器が22年3月期比12.5%減の15億25百万円、精密部品加工がレース用部品の減少で14.5%減の6億74百万円、ユニット製品がリピート需要の増加などで2.0%増の2億13百万円だった。主要販売先はTHK<6481>および本田技研工業<7267>である。収益面では産業機械・電子部品・自動車関連の設備投資動向の影響を受けやすく、設備投資関連のため四半期業績が変動しやすい特性もある。

■生産能力向上と採算性向上を推進

中期的に目標とする経営指標としては営業利益率10%以上、ROE8%以上、自己資本比率70%以上、配当性向20~30%を掲げている。

中期経営計画(毎期更新するローリング方式)では、24年3月期の計画として売上高24億56百万円、売上総利益5億16百万円、売上総利益率21.0%、営業利益15百万円、営業利益率0.6%、そして27年3月期の計画として売上高30億44百万円、売上総利益8億69百万円、売上総利益率28.6%、営業利益3億83百万円、営業利益率12.6%を掲げている。

品目別売上高の計画は、24年3月期の直動機器16億47百万円、精密部品加工5億50百万円、ユニット製品2億59百万円、27年3月期の直動機器21億44百万円、精密部品加工6億円、ユニット製品3億円としている。

基本戦略としては、17年および21年の直動機器の需要増加に対して生産が追いつかず機会損失が発生した教訓を踏まえ、21年~24年は減価償却を大きく上回る設備増強を実施し、トップライン(売上高)の向上を図っている。

事業別成長戦略としては、直動機器についてはスマート生産プロジェクトによる安定生産・原価低減、市場シェアの低い形番の生産増強によるシェア拡大、新製品(LMHB)の原価低減と販売数増加、システム化による納期対応強化、設備投資ピークアウト・減価償却費減少やコスト削減による利益率向上などを推進する。精密部品加工についてはホンダグループのモータースポーツ参戦のレース用部品供給継続によって収益を確保する。ユニット製品については仕様標準化による設計効率化、新製品NAF HWシリーズの拡販・ラインナップ拡充、海外市場への展開などを推進する。

■上場維持基準適合に向けた計画書

なお、23年3月末時点において流通株式時価総額がスタンダード市場の上場維持基準に適合しない状況となったため、23年6月27日付で上場維持基準適合に向けた計画書を作成・開示した。

25年3月末までを計画期間として、中期経営計画で掲げた基本戦略および事業別成長戦略の着実な実行によって業績の向上を図るとともに、ESG経営、株主還元、IR活動も強化して企業価値の向上(株価上昇による時価総額向上)を図り、上場維持基準の適合を目指す方針としている。

■24年3月期営業黒字転換予想で収益改善基調

24年3月期の連結業績予想は、売上高が23年3月期比1.8%増の24億56百万円、営業利益が15百万円の黒字(23年3月期は5百万円の損失)、経常利益が317.7%増の15百万円、親会社株主帰属当期純利益が6百万円の黒字(同2百万円の損失)としている。配当予想は23年3月期と同額の1円(期末一括)としている。

第1四半期は売上高が前年同期比10.4%減の5億07百万円、営業利益が64百万円の損失(前年同期は7百万円の損失)、経常利益が62百万円の損失(同0百万円の損失)、親会社株主帰属四半期純利益が42百万円の損失(同2百万円の損失)だった。

精密部品加工においてレース用部品の出荷が第2四半期にずれ込んだため減収・赤字拡大だった。部門別売上高は直動機器が3.3%増の4億11百万円、精密部品加工が55.4%減の57百万円、ユニット製品が1.4%減の38百万円だった。

通期の連結業績予想は据え置いて、増収、営業黒字転換、経常大幅増益、最終黒字転換の見込みとしている。23年4月に新工場棟(埼玉工場A棟)が完成したことを受けて、自動化関連の需要に向けて直動機器のスマート生産体制を確立し、生産増強および販売拡大を図るとしている。中長期的に直動機器の需要拡大が予想され、積極的な事業展開で収益改善基調だろう。

■株価は調整一巡

株価は安値圏でモミ合う形だが、地合い悪化の状況でも大きく下押すことなく推移して調整一巡感を強めている。1倍割れの低PBRも評価材料であり、出直りを期待したい。11月2日の終値は252円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS1円01銭で算出)は約250倍、今期予想配当利回り(会社予想の1円で算出)は約0.4%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS515円74銭で算出)は約0.5倍、そして時価総額は約16億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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