クレスコは戻り試す、24年3月期増益予想

 クレスコ<4674>(東証プライム)は独立系のシステムインテグレータで、ビジネス系ソフトウェア開発や組込型ソフトウェア開発のITサービスを主力としている。成長戦略として顧客のDXを実現するデジタルソリューションを強化している。12月13日にはセキュアイノベーションとの資本業務提携を発表した。24年3月期は増益予想としている。第2四半期累計の営業利益進捗率はやや低水準だが、不採算プロジェクトに関する損失引当が第1四半期に完了して第2四半期の営業利益は前年比2桁増益に転じている。さらに下期は新入社員の戦力化も寄与する見込みだ。受注は好調であり、積極的な事業展開により通期ベースで収益拡大基調に変化はないだろう。株価は急反発の反動で上げ一服の形となったが、調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。

■ITサービスを主力としてデジタルソリューションも強化

 独立系のシステムインテグレータで、ビジネス系ソフトウェア開発や組込型ソフトウェア開発のITサービスを主力としている。さらに成長戦略として顧客のDXを実現するデジタルソリューションも強化している。

 セグメント区分は、ITサービス(エンタープライズ、金融、製造の各分野のコンサルティング・開発・保守の総合サービス)と、デジタルソリューション(自社製品Creage、インテリジェントフォルダなど、顧客のDXを実現する製品・サービスからなるソリューション群)としている。

 23年3月期のセグメント別業績は、ITサービス事業の売上高が22年3月期比7.7%増の456億12百万円で営業利益(全社費用等調整前)が11.1%増の63億54百万円(内訳は、エンタープライズの売上高が3.4%増の188億39百万円で利益が5.3%増の23億74百万円、金融の売上高が3.1%増の141億15百万円で利益が5.9%増の18億20百万円、製造の売上高が21.3%増の126億57百万円で利益が23.8%増の21億59百万円)、デジタルソリューション事業の売上高が30.7%増の27億55百万円で利益が14.3%増の1億65百万円だった。

 収益面では案件別の採算性が影響し、企業のIT投資関連のため年度末にあたる第4四半期の構成比が高くなる特性がある。配当方針は、連結経常利益をもとに特別損益を零とした場合に算出される親会社株主帰属当期純利益の30%相当を目途に、継続的に実現することを目指すとしている。

■M&A・アライアンスも活用

 M&A・アライアンスおよびグループ子会社再編では、20年2月に北海道大学公認AIベンチャーの調和技研と資本業務提携、20年4月にシステムインテグレータのエニシアスを子会社化、21年7月に組込型ソフトウェア開発に強みを持つOECを子会社化、22年5月に子会社クリエイティブジャパンの商号をクレスコ・デジタルテクノロジーズに変更、22年7月に子会社のアルスが同じく子会社のエヌシステムおよびネクサスを吸収合併して商号をクレスコ・ジェイキューブに変更、23年2月に日本ソフトウェアデザイン(大阪市)の全株式を取得して子会社化した。

 23年3月には、フォーラムエンジニアリング<7088>およびインドのSRM Globalとの3社共同で、フォーラムエンジニアリングのインド現地法人コフナビインディア社(22年10月設立)が行う第三者割当増資を引き受けて資本出資した。フォーラムエンジニアリングのエンジニアに特化した人材サービス「コグナビ」のインドでの展開を加速する。そして23年6月には、コグナビインディア社がインド初のAIテクノロジーマッチング機能を搭載したインド新卒学生向けジョブポータルサイト「コグナビ」をオープンした。

 23年9月には飲食業界のDX推進支援の拡大に向けて、ベトナムのレストラン&リテールテックスタートアップ企業CAPICHI社への出資および業務提携した。

 12月13日には、セキュリティ脆弱性診断サービスやSOC(セキュリティオペレーションセンター)構築・運用など情報セキュリティサービスを展開するセキュアイノベーションとの資本業務提携を発表した。

 なお、子会社クレスコワイヤレスに対する損害賠償請求訴訟(19年11月)について、東京地方裁判所において23年10月5日付で、原告(エヌティーシーアカウンティングサービス)の控訴が棄却された。

■働き方改革や健康経営を推進

 中期経営計画では24年3月期の目標値として売上高500億円、営業利益50億円、ROE15%以上を掲げている。新たなビジネスの柱を生み出すための重点戦略としてデジタルソリューションの強化、機動的経営の進化、人間中心経営の深化、コアビジネス領域をより強固なものにするための基本戦略としてITサービスの拡大、品質の強化、技術の強化を推進している。なお22年4月から第2創業期として会社ロゴを変更した。

 20年9月には社内デジタル変革(DX)を加速させるため「ニューノーマルな働き方」に舵を切ると発表した。テレワーク体制を強化して社員の生産性向上を目指すとともに、本社や開発センターのオフィススペースの最適化、在宅勤務手当新設や通勤手当見直しなどにより、コスト削減も推進する。

 健康経営関連では、21年6月に新型コロナウイルス感染症に係る支援(1億円の寄付)が評価されて日本赤十字社から「金色有功章」の楯を拝受した。21年11月には、働き方改革を通じて生産性革命に挑む先進企業を選定する日本経済新聞社「第5回 日経スマートワーク経営調査」で3つ星の評価を獲得した。22年4月には株式会社ワーク・ライフバランスが主催する「男性育休100%宣言」に賛同すると発表した。22年6月には、さらなる健康経営の促進に向けて社員642名に「健康増進手当」を初支給した。22年9月にはスポーツ庁「FUN+WALK PROJECT」に参画した。23年3月にはスポーツ庁が認定する「スポーツエールカンパニー2023」に認定された。また、経済産業省と日本健康会議が選定する健康経営優良法人認定制度に基づく「健康経営優良法人2023」に選定された。

 社会貢献関連では、22年9月に一般社団法人全国高等専門学校連合会主催の「第33回 全国高等専門学校プログラミングコンテスト」に協賛した。また23年7月には、全国新聞社事業協議会が主催する「全国選抜小学生プログラミング大会」に協賛した。23年8月には、公益社団法人計測自動制御学会システムインテグレーション部門とソニーセミコンダクターソリューションズが主催する「Sensing Solution アイデアソン・ハッカソン 2023」に協賛しているとリリースした。今後も様々な活動を通じて社会の発展に貢献する方針だ。

 23年10月にはベトナムの子会社CRESCO VIETNAMが、ベトナムで活動している教育型スポーツアカデミーの「さくらスポーツアカデミー(通称:SSA)」とスポンサー契約を締結した。

■デジタルソリューションや自社オリジナル製品を拡大

 中期成長に向けて、デジタルソリューションや自社オリジナル製品の拡大を推進している。オリジナル製品・サービスではIoTのKEYAKI、AIのMinervae、クラウドのCreageを3大ブランドと定義し、ソフトウェア開発・システム開発の需要喚起を推進している。

 22年10月には、大容量ファイル共有サービス「インテリジェントフォルダ」のiOSアプリをリリース、ベトナム子会社におけるフードデリバリー市場向け最新POSシステムの販売開始リリース、企業のDX人材を育成するDX研修サービスの提供開始をリリースした。22年11月には、画像認識AIの画像分類根拠を可視化する手法の特許を取得した。

 22年12月には、セキュリティおよびネットワークソリューションの新サービスとして、脆弱性情報提供サービスとネットワーク調査サービスの提供を開始した。また、日本航空(JAL)と共同で、医療AIによる画像認識技術を活用した「航空機エンジン内部検査ツール」を開発すると発表した。23年3月にはビジネスパートナー契約を締結しているUiPath社のダイヤモンドパートナーに認定された。23年4月にはUiPath社の「UiPath Japan Partner Awards 2022」において「Revenue Growth Partner of the Year」を受賞した。

 23年10月には、新たに開発したホテルの部屋割り業務最適化ツール「RooMagic」をリリースした。九州・東京・京都に展開するJR九州ホテルズでの導入が決定している。JR九州ホテルズ傘下ホテルの総計で、部屋割り業務に要する時間を年間1200時間削減(現状の業務時間の30%)する効果が見込まれるとしている。

■24年3月期増益予想

 24年3月期の連結業績予想は売上高が23年3月期比8.5%増の525億円、営業利益が5.0%増の52億50百万円、経常利益が4.6%増の53億70百万円、親会社株主帰属当期純利益が7.6%増の35億82百万円としている。配当予想は23年3月期と同額の50円(第2四半期末25円、期末25円)としている。22年3月期の50円には記念配当4円が含まれているため普通配当ベースでは4円増配の形となる。予想配当性向は29.4%である。

 第2四半期累計は、売上高が前年同期比10.0%増の256億31百万円、営業利益が11.9%減の19億78百万円、経常利益が15.3%増の24億40百万円、親会社株主帰属四半期純利益が13.5%増の16億65百万円だった。

 期初計画(売上高249億円、営業利益20億80百万円、経常利益21億70百万円、親会社株主帰属四半期純利益14億18百万円)に対して、営業利益はやや未達だが、売上高、経常利益、親会社株主帰属四半期純利益は、いずれも計画を超過達成する水準で着地した。

 売上面は受注が好調に推移して増収だが、営業利益は人件費・教育費増加や複数の不採算プロジェクト発生により減益だった。不採算プロジェクト発生に伴って他の案件受注を控えるという機会損失も影響した。経常利益はデリバティブ評価損益が6億38百万円改善(前年同期は評価損3億72百万円、当期は評価益2億66百万円)したことなどにより増益、親会社株主帰属四半期純利益は前年同期の特別損失に計上したコーポレートロゴ等変更費用(1億13百万円)の剥落なども寄与して増益だった。

 ITサービス事業は、売上高が5.9%増の236億05百万円で、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が7.2%減の27億48百万円だった。

 このうちエンタープライズ区分は、売上高が10.0%増の97億91百万円、利益が16.3%減の9億26百万円だった。売上面は情報・通信・広告分野と建設・不動産分野において一部の連結子会社の売上が大幅伸長するなど受注が好調に推移したが、不採算プロジェクト3件(人材紹介・人材派遣分野で1件、流通サービス分野で2件)の発生により減益だった。

 金融区分は、売上高が2.0%減の70億27百万円、利益が16.6%減の7億21百万円だった。売上面では保険分野およびその他分野における大型案件の収束が影響し、利益面では不採算プロジェクト1件(銀行分野で1件)の発生も影響した。

 製造区分は、売上高が9.1%増の67億86百万円、利益が11.1%増の11億円だった。機械・エレクトロニクス分野の好調により増収増益だった。

 デジタルソリューション事業は、売上高が99.3%増の20億25百万円、利益が118.2%増の90百万円だった。主力のクラウドサービス「Creage」やRPAライセンスの販売が増加して大幅増収増益だった。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高が前年比4.4%増の118億81百万円で営業利益が47.3%減の4億70百万円、第2四半期は売上高が15.3%増の137億50百万円で営業利益が11.4%増の15億08百万円だった。第2四半期は不採算プロジェクトの影響が概ね一巡し、2桁増収・2桁営業増益となった。

 通期連結業績予想は据え置いている。受注が高水準に推移し、人材投資(教育研修プログラムの実施・強化、給与水準の引き上げ、過去最大規模の新卒社員採用など)による費用増加を吸収する見込みとしている。

 第2四半期累計の進捗率は売上高49%、営業利益38%、経常利益45%、親会社株主帰属当期純利益46%である。営業利益進捗率がやや低水準の形だが、不採算プロジェクトに関する損失引当が第1四半期に完了して第2四半期の営業利益は前年比2桁増益に転じている。さらに下期は新入社員の戦力化も寄与する見込みだ。受注は好調であり、積極的な事業展開により通期ベースで収益拡大基調に変化はないだろう。

■株価は戻り試す

 株価は急反発の反動で上げ一服の形となったが、調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。12月15日の終値は1829円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS174円02銭で算出)は約11倍、今期予想配当利回り(会社予想の50円で算出)は約2.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1160円39銭で算出)は約1.6倍、そして時価総額は約402億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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