Jトラストは下値切り上げ、24年12月期も収益拡大基調

n Jトラスト<8508>(東証スタンダード)は日本、韓国・モンゴル、およびインドネシアを中心とする東南アジアにおいて金融事業を展開し、成長に向けて継続的にポートフォリオ再編や事業基盤拡大を推進している。23年12月期は最終大幅増益予想としている。日本金融事業の堅調推移、東南アジア金融事業の収益改善に加えて、不動産事業における負ののれん発生益計上も寄与する見込みだ。24年12月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は上値が重く小幅レンジでモミ合う形だが、一方では下値を徐々に切り上げている。指標面の割安感も支援材料であり、調整一巡してモミ合いから上放れの展開を期待したい。なお2月13日に23年12月期決算発表を予定している。

■日本、韓国・モンゴル、東南アジアで金融事業を展開

 日本、韓国・モンゴル、およびインドネシアを中心とする東南アジアにおいて金融事業(銀行、信用保証、債権回収、その他の金融)を展開し、さらなる成長に向けて継続的にポートフォリオ再編や事業基盤拡大戦略を推進している。

 22年12月期のセグメント別利益(全社費用等調整前営業利益)は、日本金融事業が販管費増加などで21年12月期比14.3%減の39億31百万円、韓国およびモンゴル金融事業がJT親愛貯蓄銀行の連結取込や負ののれん発生益の計上などで349.9%増の144億37百万円、東南アジア金融事業が優良な貸出金積み上げや預金金利低下による資金調達コスト減少などで58百万円の黒字(21年12月期は63億72百万円の赤字)だった。投資事業は前期のシンガポール控訴裁判所における勝訴判決全額履行(受領額78億47百万円)の剥落で22億05百万円の赤字(同54億45百万円の黒字)だった。その他事業は52.9%減の2億02百万円だった。収益はM&A・事業再編・不良債権処理などで変動する可能性がある。

■成長加速に向けて事業基盤拡大

 日本金融事業は日本保証が保証事業、パルティール債権回収が債権回収事業、Frontier Capitalがファクタリング事業を展開している。また、20年11月にNexus Bank(旧SAMURAI&J PARTNERS)と株式交換によってJトラストカードおよびJトラストカードの子会社である韓国・JT親愛貯蓄銀行を連結除外としたが、その後22年4月にNexus Bankを株式交換によって完全子会社化し、Nexus Bank傘下の子会社3社(SAMURAI TECHNOLOGY、Nexus Card、JT親愛貯蓄銀行)も連結子会社となった。SAMURAI TECHNOLOGYは22年4月に全株式を譲渡して連結除外、Nexus Bankは23年4月に吸収合併した。

 23年10月には西京カードを子会社化した。割賦事業を日本金融事業の新たな成長ドライバーと位置付けて、Nexus Cardとの経営資源の共有・最適配分などグループシナジーを推進する。

 Jトラストグローバル証券(JTG証券)(22年3月に子会社化したエイチ・エス証券が22年10月に商号変更)については、22年12月に主幹事を担当したアップコン<5075>が名証ネクストに上場した。TOKYO PRO Market上場支援と、一般市場へのステップアップ上場支援を1社完結で実現させた実績を持つ国内唯一の証券会社である。23年7月にはIFA事業者の事業拡大支援サービスを本格的に開始した。

 韓国およびモンゴル金融事業では、韓国・JT親愛貯蓄銀行を直接親会社のJトラストカードと一緒に売却したが、Nexus Bankを完全子会社化したことに伴ってグループに復帰した。韓国・JTキャピタルについては21年8月に全株式の譲渡を完了して連結除外した。韓国・JT貯蓄銀行については、株式売買契約締結期限までに契約内容の合意に至らなかったため株式譲渡を中止した。

 この結果、韓国およびモンゴル金融事業は、韓国・JT貯蓄銀行、韓国・JT親愛貯蓄銀行、および債権回収業務の韓国・TA Asset、割賦業務のモンゴル・JトラストクレジットNBFIが展開している。JT貯蓄銀行とJT親愛貯蓄銀行を合計すると、総資産および貸出金で韓国の貯蓄銀行79行のうち7位規模(21年9月現在)となる。なお23年12月にはJT貯蓄銀行が、大韓民国障害者体育発展への貢献が認められて大韓障害者体育会の会長賞を受賞した。

 東南アジア金融事業は、Jトラスト銀行インドネシア(BJI)が銀行業務、Jトラストインベストメンツインドネシア(JTII)が債権回収業務、カンボジアのJトラストロイヤル銀行(JTRB)が銀行業務を展開している。

 23年6月には第4回インドネシアトップバンクアワード2023において、コンベンショナル-KBMI 1カテゴリーでの「2023年度トップバンクアワード」を受賞した。23年9月にはBJIがJKT48を運営するIDN MEDIAと、JKT48のブランドアンバサダー契約を締結した。23年10月にはBJIが西京銀行と業務提携した。インドネシアに進出している、又は進出を予定している西京銀行の取引先事業者をBJIへ紹介する。

 なお23年6月に、Jトラストアジアが保有するJトラストオリンピンドマルチファイナンス(JTO)の株式を譲渡(譲渡実行日はインドネシア金融庁の承認後)する株式売買契約を締結した。これによりJTOは連結除外となる。また23年12月には第2回シモーネアジアパシフィックカップ2023(インドネシア)にスポンサーとして参加した。

 投資事業はJトラストアジアが展開している。なおJトラストアジアは販売金融事業のタイGL社に出資したが、17年10月にタイGL社CEO此下益司氏がタイSECから偽計および不正行為で刑事告発された。このため現在はタイGL社、此下益司氏、およびGLの関連取締役に対して、刑事告発手続き、会社更生法申し立て・補償請求・賠償請求などの訴訟を提起している。

 GL社に対する訴訟の解決・債権回収が課題となっていたが、勝訴判決に基づいて履行を受けるなど解消に向けた動きが進展している。

 タイにおいては、21年3月の控訴審判決でJトラストアジアによる権利行使は適法であるとしてGLの請求を全面的に棄却したが、この控訴審判決を不服とするGLの上告受理の申し立てが最高裁判所において22年8月31日付で受理の決定がなされた。ただし最高裁判所における審理においても、引き続き主張が認められるよう尽力するとしている。また、GLに対する会社更生の申し立てについては、最高裁判所において21年12月に申し立てが却下されたが、民事訴訟については第1審の審理が継続している。

 英領バージン諸島においては21年5月に、控訴裁判所が昭和ホールディングスによる上訴を棄却した。そして22年5月には、民事訴訟における支払命令(約95百万米ドル、1ドル=127円換算で約121億円)判決が確定した。キプロスにおいては21年8月に、此下益司氏ならびにキプロス所在4社に対して約130百万米ドルの賠償を求める訴訟を提起し、裁判所が被告らに対する全世界的資産凍結命令を発令した。

 日本では21年6月に、A.P.F.GROUP、昭和ホールディングス、ウェッジホールディングスに対して、約24百万米ドルの支払いを求める損害賠償請求訴訟を東京地裁に提起した。日本における損害賠償請求訴訟については、22年3月の東京地方裁判所による第一審判決で損害賠償請求が認められなかったが、判決内容を十分に精査し、弁護士とも協議のうえ今後の対応を検討するとしている。

 シンガポールにおいては、控訴裁判所判決(20年10月)では、総額210百万米ドルの転換社債の引受等によって生じた損賠賠償請求のうち、その時点で償還期限が未到来であった130百万米ドルの損賠賠償請求が認められなかったため、償還期間経過後の21年8月に改めて訴訟を提起していたが、23年4月にシンガポー高等法院が被告らに対して連帯で約165億55百万円(1米ドル=133円で換算)および21年8月1日からの利息の支払い等を命じる判決(第1審判決)を言い渡し、さらに控訴審においてシンガポー高等法院上訴部が23年11月22日付で第1審判決を維持する判決を言い渡した。さらに24年1月11日付で控訴裁判所が控訴を棄却し、23年4月の第1審判決が確定した。

 その他事業は主にJ Sync(旧Robotシステム)がグループのシステム開発・運用・管理業務、Jグランドが不動産事業を展開している。J Syncは22年3月に不動産クラウドファンディングシステム「fundingtool」の提供を開始した。23年2月には不動産事業や再生可能エネルギー事業を展開するミライノベートを吸収合併した。23年3月には電子決済等代行業の登録が完了した。23年5月には子会社のJグランドが、東京の城西地区を中心に不動産業を展開するライブレントの全株式を取得して子会社化した。

 KeyHolder<4712>については、保有する同社株式の一部を、ミクシィ<2121>が設立したミクシィエンターテインメントファンド1号投資事業有限責任組合など5社に譲渡(20年12月)した。引き続き当社が筆頭株主だが、KeyHolderおよび同社の連結子会社は持分法適用関連会社となっている。

 23年10月には、遊戯場運営のガイア(23年10月30日付で民事再生手続きの開始申立)との間で、ガイアグループの再建支援を目的とする基本合意書を締結した。そして1月26日にはKeyHolderが、ガイアの子会社であるトポスエンタープライズに対して民事再生支援(スポンサー支援)を行うと表明した。

■23年12月期は再上振れの可能性、24年12月期も収益拡大基調

 23年12月期連結業績予想(JTG証券の金融商品取引業を含まず、8月8日付で上方修正)は、営業収益が22年12月期比43.2%増の1180億円、営業利益が27.1%減の105億円、親会社の所有者に帰属する当期利益が30.6%増の165億円としている。配当予想は22年12月期比4円増配の14円(第2四半期末1円、期末13円)としている。連続大幅増配予想で予想配当性向は11.7%となる。

 前回予想(2月14日公表)に対して営業収益を30億円、営業利益を20億円、親会社の所有者に帰属する当期利益を35億円、それぞれ上方修正した。日本金融事業ではNexus Cardの割賦売掛金残高が拡大していることに加えて、債権回収が想定以上に進捗している。韓国およびモンゴル金融事業では、貯蓄銀行において預金金利上昇による収益悪化を想定していたが、韓国銀行による基準金利引き上げが一段落して懸念したほどの損失とならず、底打ちが期待できる状況となっている。東南アジア金融事業では利息収支が想定を上回って推移している。親会社の所有者に帰属する当期利益は18年3月期のIFRS移行後の最高を2期連続で更新する見込みとなっている。

 第3四半期累計は、営業収益が前年同期比48.4%増の845億77百万円、営業利益が25.5%減の111億34百万円、親会社の所有者に帰属する四半期利益が28.6%増の183億40百万円だった。

 韓国およびモンゴル事業における前期の負ののれん発生益の反動で営業減益(四半期純利益は法人所得税費用の減少で増益)だが、日本金融事業の堅調推移、東南アジア金融事業の収益改善、不動産事業における負ののれん発生益計上などにより、各利益は通期予想を超過達成して着地した。

 日本金融事業の営業利益は5.0%増の34億69百万円だった。営業収益はJTG証券およびNexus Cardの連結、債権回収や保証事業の好調推移などにより大幅増収となり、利益面は増収効果に加えて、証券業務における外国為替売買・換算損の減少などにより、販管費の増加、前期のJTG証券の取得に伴う負ののれん発生益の反動影響などを吸収した。

 韓国およびモンゴル金融事業の営業利益は、16億52百万円の損失(前年同期は141億27百万円の利益)だった。JT親愛貯蓄銀行の連結も寄与して大幅増収だが、前期の負ののれん発生益(JT親愛貯蓄銀行の取得に伴う負ののれん発生益)の反動、貯蓄銀行業における預金利息費用の増加、景気悪化および債権不良化による貸倒引当金(損失評価引当金)繰入額の増加などにより大幅減益だった。

 東南アジア金融事業の営業利益は65.9%増の12億25百万円だった。銀行業における貸出金増加や保有有価証券増加に伴う利息収支増加などで大幅増収となり、貸出債権のリスク低下なども寄与して大幅増益だった。

 不動産事業(セグメント新設)の営業利益は100億96百万円(前年同期は66百万円の損失)だった。Jグランドの不動産販売収益の増加、グローベルスの連結、吸収合併したミライノベートの取得に係る負ののれん発生益計上が寄与した。

 投資事業の営業利益は15億83百万円の損失(同15億75百万円の損失)で、その他事業の営業利益は22百万円の損失(同1億31百万円の利益)だった。

 四半期別に見ると、第1四半期は営業収益が261億36百万円、営業利益が92億93百万円、純利益が91億24百万円、第2四半期は営業収益が275億13百万円、営業利益が6億88百万円の損失、純利益が69億07百万円、第3四半期は営業収益が309億28百万円、営業利益が25億29百万円、純利益が23億09百万円だった。なお収益はM&A・事業再編・不良債権処理などで変動する可能性がある。

 通期連結業績予想については8月8日付の修正値を据え置いている。セグメント別営業利益計画は、日本金融事業が57億64百万円、韓国およびモンゴル金融事業が2億40百万円の損失、東南アジア金融事業が10億78百万円、不動産事業が99億76百万円、投資事業が20億66百万円の損失、その他事業が20百万円としている。

 第3四半期累計の各利益が通期予想を超過達成していることを勘案すれば、通期会社予想に再上振れの可能性があり、さらに24年12月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待制度を再開、配当と合わせて株主還元を強化

 株主優待制度(23年3月末対象から再開、詳細は会社HP参照)は、毎年3月末および9月末日時点で1単元(100株)以上保有株主を対象に、保有株式数および継続保有期間に応じて、オリーブスパが運営するリラクゼーションサロンで利用できるチケット、またはクリアグループが運営する各施設の金券を贈呈する。配当と合わせて株主還元を一段と強化する方針としている。

■株価は下値切り上げ

 株価は上値が重く小幅レンジでモミ合う形だが、一方では下値を徐々に切り上げている。指標面の割安感も支援材料であり、調整一巡してモミ合いから上放れの展開を期待したい。1月26日の終値は483円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS120円17銭で算出)は約4倍、前期推定配当利回り(会社予想の14円で算出)は約2.9%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結1株当たり親会社所有者帰属持分1004円59銭で算出)は約0.5倍、そして時価総額は約710億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)
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