加賀電子、26年3月期は上方修正して増収増益・増配予想、株価は最高値に接近、指標面の割安感も評価材料

 加賀電子<8154>(東証プライム)は独立系の大手エレクトロニクス総合商社である。半導体・電子部品等の商社ビジネス、および電装基板製造受託サービスのEMSビジネスを主力に、成長戦略として収益力強化、経営基盤強化、新規事業創出、SDGs経営を推進している。26年3月期は8月7日付で上方修正して増収増益・増配予想としている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は急伸して24年1月の最高値に接近している。指標面の割安感も評価材料であり、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。

■独立系の大手エレクトロニクス総合商社

 独立系の大手エレクトロニクス総合商社である。M&Aも活用し、半導体・電子部品等の商社ビジネス、および電装基板製造受託サービスのEMSビジネスを展開している。なお25年7月に協栄産業<6973>を子会社化した。

 25年3月期は、電子部品事業の売上高が4729億10百万円で営業利益(連結調整前)が169億27百万円、情報機器事業の売上高が426億52百万円で営業利益が33億07百万円、ソフトウェア事業の売上高が33億87百万円で営業利益が5億09百万円だった。その他事業(エレクトロニクス機器修理・サポート、アミューズメント機器製造・販売、スポーツ用品販売など)の売上高が288億29百万円で営業利益が27億07百万円だった。会社別には加賀電子の売上高が3195億27百万円で営業利益が198億55百万円、加賀FEIの売上高が1978億68百万円で営業利益が18億60百万円、エクセルの売上高が303億83百万円で営業利益が16億45百万円だった。

 中期経営計画に沿ったセグメント区分は電子部品事業、EMS事業、CSI事業(情報機器事業)、その他事業(ソフトウェア事業、その他)としている。25年3月期は電子部品の売上高が3477億40百万円で営業利益が102億34百万円、EMSの売上高が1345億44百万円で営業利益が73億72百万円、CSIの売上高が426億52百万円で営業利益が33億07百万円、その他の売上高が228億41百万円で営業利益が25億37百万円だった。

■売上高1兆円企業を見据えた中期経営計画2027

 24年11月策定の中期経営計画2027(26年3月期~28年3月期)では重点施策として更なる収益力の強化、経営基盤の高度化、SDGs経営の推進を掲げ、売上高1兆円企業を見据えた最終年度28年3月期の目標値を、新規事業やM&Aを含めて売上高8000億円以上、営業利益360億円以上としている。オーガニック成長による目標は売上高7000億円以上、営業利益350億円以上、資本効率性の指標はROE12.0%以上(株主資本コスト10%前後)としている。オーガニック成長による収益目標のセグメント別内訳は、電子部品事業が売上高4000億円で営業利益165億円、EMS事業が売上高2300億円で営業利益135億円、CSI事業が売上高550億円で営業利益40億円、その他事業が売上高150億円で営業利益10億円としている。

 事業戦略としては、商社ビジネスの拡大を高付加価値のEMSビジネスにつなげ、収益性の向上を推進する。また創業60周年を迎える29年3月期での売上高1兆円達成に向けて、M&Aの活用により当中期経営計画期間中に1000億円超の新たな事業収益の獲得を目指す。さらにエネルギー、インフラ、交通、環境を重点テーマとして新規事業を探索する。

 株主還元については連結配当性向の目安を30~40%に引き上げ、中長期的な利益成長を通じた配当成長に努める。普通配当については安定的かつ継続的な配当の目安をDOE4.0%とし、さらに利益水準や資本効率性に応じた追加施策として、特別配当や自己株式取得を機動的に実施する。

 SDGs経営についてはサステナビリティ中長期経営計画(21年11月公表)に基づいて、持続可能な社会の実現に積極的な役割を果たすとともに、企業価値の持続的成長に取り組むとしている。25年2月にはCDP「気候変動レポート2024」において「B」スコアを獲得した。25年3月には経済産業省と日本健康会議が進める健康経営優良法人認定制度において健康経営優良法人2025(大規模法人部門)の認定を受けた。3年連続の認定となる。

 なお24年4月には子育て世帯に様々なサービスを提供するTIMERS(タイマーズ)への出資を発表、24年5月にはノーコードIoT・DXプラットフォーム事業を展開するミークへの出資を発表した。25年3月には子会社のデジタル・メディア・ラボが、世界最大級のゲームアウトソーシングおよびゲーム開発スタジオであるWinking Studios(本社:シンガポール)と、CG制作全般の受託業務拡大を図ることを目的とした戦略的パートナーシップ契約を締結した。

■26年3月期は上方修正して増収増益・増配予想

 26年3月期の連結業績予想(協栄産業を子会社化したことに伴い25年8月7日付で上方修正)は、売上高が前期比4.8%増の5740億円、営業利益が1.7%増の240億円、経常利益が5.3%増の238億円、親会社株主帰属当期純利益が41.7%増の242億円としている。

 前回予想(25年5月14日の期初公表値、売上高5300億円、営業利益230億円、経常利益230億円、親会社株主帰属当期純利益165億円)に対して、売上高を440億円、営業利益を10億円、経常利益を8億円、親会社株主帰属当期純利益を77億円、それぞれ上方修正した。25年7月に子会社化した協栄産業の第2四半期以降の業績予想(売上高440億円、営業利益10億円、経常利益8億円、親会社株主帰属当期純利益5億円)を加えたほか、負ののれん発生益72億円(第1四半期末において暫定的に算出された金額)を織り込んだ。

 なお織り込みリスクとして、米国関税政策の影響は売上高で100億円減収、営業利益で5億円減益、為替影響(為替想定1米ドル=140円)は売上高で170億円減収、営業利益で5億円減益を見込んでいる。

 修正後のセグメント別の計画は、電子部品事業の売上高が5.9%増の5010億円でセグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が3.4%増の175億円、情報機器事業の売上高が5.5%増の450億円で利益が5.8%増の35億円、ソフトウェア事業の売上高が11.4%減の30億円で利益が1.9%減の5億円、その他事業の売上高が13.3%減の250億円で利益が7.7%減の25億円としている。協栄産業の新規連結に伴い電子部品事業の売上高を440億円、利益を10億円それぞれ上方修正した。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

 配当予想についても25年8月7日付で第2四半期末5円、期末5円、合計10円上方修正し、前期比10円増配の120円(第2四半期末60円=普通配当55円+特別配当5円、期末60円=普通配当55円+特別配当5円)とした。予想配当性向は24.6%となる。なお三菱UFJ銀行など取引金融機関4行より所有株式売却意向を受けたため、8月8日の東京証券取引所の自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)で491万7400株を自己株式として取得し、取得した自己株式全数を8月18日付で消却した。

 第1四半期の連結業績は売上高が前年同期比7.3%増の1380億86百万円、営業利益が16.8%増の64億84百万円、経常利益が3.3%増の62億42百万円、親会社株主帰属四半期純利益が11.8%増の46億14百万円だった。

 電子部品事業の部品販売ビジネスは一部のサプライチェーンでの在庫調整長期化の影響を受けたが、電子部品事業のEMSビジネス、情報機器事業のパソコン販売ビジネス、その他セグメントのアミューズメント機器販売が好調に推移して増収増益だった。なお営業外では為替差損益が6億33百万円悪化(前期は差益35百万円、当期は差損5億98百万円)した。特別利益では投資有価証券売却益2億65百万円を計上した。

 電子部品事業は売上高が4.6%増の1164億56百万円、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が2.4%減の42億27百万円だった。EMSビジネスは医療機器向けや産業機械向けなどが好調に推移して増収増益だが、部品販売ビジネスは一部のサプライチェーンでの在庫調整長期化の影響で増収ながら減益だった。

 情報機器事業は売上高が14.2%増の121億16百万円、利益が28.5%増の8億21百万円だった。パソコン販売ビジネスは教育機関向けや量販店向けが好調に推移して増収増益、電気・通信機器設置ビジネスはコンビニチェーン向けLED照明工事の堅調推移や電気設備(受変電・太陽光パネル)工事の受注拡大で増収だが、先行投資による施工人員増強により減益だった。

 ソフトウェア事業は売上高が6.3%減の5億91百万円、利益が42百万円の損失(前年同期は35百万円)だった。新製品の端境期で減収減益だった。

 その他事業(エレクトロニクス機器修理・サポート、アミューズメント機器製造・販売、スポーツ用品販売など)は売上高が46.8%増の89億21百万円、利益が195.3%増の13億62百万円だった。国内および米国向けアミューズメント機器の好調で大幅増収増益だった。

 なお会社別の営業利益(連結調整前)は加賀電子が31.1%増の57億99百万円、加賀FEIが55.9%減の3億66百万円、エクセルが3.5%増の2億78百万円で、中計セグメント別の営業利益(同)は電子部品が9.2%減の22億67百万円、EMSが8.0%増の22億35百万円、CSI(コンシューマー&システムインテグレーター)が28.5%増の8億21百万円、その他が4.3倍の11億32百万円だった。

■株価は24年の最高値に接近

 株価は急伸して24年1月の最高値に接近している。指標面の割安感も評価材料であり、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。8月20日の終値は3275円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS488円45銭で算出)は約7倍、今期予想配当利回り(会社予想の120円で算出)は約3.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS3162円68銭で算出)は約1.0倍、そして時価総額は約1719億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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