アルコニックス、26年3月期は増収増益・大幅増配予想、金属加工事業が牽引
- 2025/10/21 09:21
- アナリスト銘柄分析

アルコニックス<3036>(東証プライム)は商社機能と製造機能を併せ持ち、M&Aも積極活用しながら、非鉄金属の素材・部品・製品の生産から卸売までをONE-STOPで提供する「非鉄金属等の総合ソリューションプロバイダー」である。成長投資と株主還元を両立して資本効率の最大化を目指す方針としている。26年3月期も増収増益で連続大幅増配予想としている。実需の強い業界に注力してコスト転嫁等を推進する。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は9月の年初来高値圏から配当権利落ちも影響して一旦反落したが、調整一巡して切り返しの動きを強めている。高配当利回りなども支援材料であり、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。なお11月6日に26年3月期第2四半期決算発表を予定している。
■非鉄金属等の総合ソリューションプロバイダー
同社は商社機能と製造機能を併せ持ち、M&Aも積極活用しながら、非鉄金属の素材・部品・製品の生産から卸売までをONE-STOPで提供する「非鉄金属等の総合ソリューションプロバイダー」である。
報告セグメント区分は、商社流通の電子機能材事業(EV/FCV部品材料、車載電池用材料、半導体各種材料、携帯機器端末部品材料、IT機器部品材料、各種電池材料、レアメタル、ニッケルなど)、商社流通のアルミ銅事業(電装部品、自動車構成部材、リードフレーム用銅条、コネクタ部品、プリント基板部品、建築資材、電気設備部品、アルミ缶材、熱交換器用素材、医療向けチタン展伸材、空調機器向けアルミ圧延品・伸銅品など)、製造の装置材料事業(自動車構成部材用めっき材料、金型用溶接材料、ブレーキパッド用カシュー樹脂、自動車生産ライン向け非破壊検査装置/化成品、電装部品用モーター部品、半導体用めっき材料、電波吸収体、マーキング装置、電気設備部品など)、製造の金属加工事業(自動車パワートレイン向け部品、EV車載電池向け部品、自動車試作部品、製造・実装装置向け部品、コネクタ端子部品、航空機用部品、空調機器向け部品など)である。
事業分野別の主要会社(26年3月期第1四半期末時点)は、電子機能材事業はアドバンストマテリアルジャパン、ANDEX、アルミ銅事業は林金属、アルコニックス・三高、アルミ銅センター、平和金属、装置材料事業はUnivertical HD、東海溶業、マークテック、富士カーボン製造所、金属加工事業は大川電機製作所、大羽精研、富士プレス、FUJI ALCONIX Mexico、富士根産業、ジュピター工業、ソーデナガノ、坂本電機製作所である。
25年3月期のセグメント別経常利益(セグメント間取引消去前)は、商社流通が27億27百万円(内訳は電子機能材が22億35百万円、アルミ銅が4億92百万円)で、製造が48億51百万円(内訳は装置材料が16億10百万円、金属加工が32億41百万円)だった。製造が収益柱に成長している。
ベンチャー投資としては21年12月に、投資事業(アルコニックスグローバルイノベーション投資事業有限責任組合、21年8月設立の子会社アルコニックスベンチャーズが運用)を開始した。25年3月末時点で投資実績は9件となっている。先端材料・高成長事業および素材・モノづくりに関連のあるベンチャー企業または事業を投資先として成長支援し、投資先が生み出すアイデアや技術を取り込んで新規事業開拓と更なる業容拡大を目指す方針だ。
■「長期経営計画2030」
25年5月に策定した「長期経営計画2030」では、数値目標に最終年度31年3月期の経常利益150億円、ROIC8%以上、ROE12%以上を掲げた。
事業戦略としては、注力分野(半導体・自動車・リサイクル)を再整理し、市場拡大が期待できる領域「勝ち筋」とグループが提供する価値「ソリューション」のマトリックスをグループで共有し、勝ち筋とソリューションが交わるエリア(ホットスポット)で、今後のグループ付加価値増大に寄与しうる事業に注力するとともに、新たな勝ち筋とソリューションを開拓する。具体的なグループアクションプランとして、リサイクルセンターの拡張・全国展開による循環社会の実現、半導体関連領域におけるテック素材・装置部材等のグループ内コラボレーションによる製品化と社会実装の実現、モビリティ・次世代エネルギーに跨る電動化領域でのハイテク素材・部材等の開発・製品化とグループ内バリューチェーンの構築、医療領域での最新生体適合素材開発や医療ロボット用精密加工部品・器具など高度医療分野への展開を推進する。
財務戦略については、成長投資と株主還元を両立し、資本効率の最大化を目指す。株主還元についてはDOE(株主資本配当率)の目標を従来の3%から4%に引き上げた。
サステナビリティ経営に関しては、23年7月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同を表明、23年8月に内部統制システム基本方針を改定、25年3月に経済産業省と日本健康会議が共同で選定する健康経営優良法人認定制度において健康経営優良法人2025(大規模法人部門)に2年連続で認定された。
■26年3月期増収増益予想
26年3月期の連結業績予想は売上高が前期比9.1%増の2150億円、営業利益が27.2%増の88億円、経常利益が8.9%増の82億円、親会社株主帰属当期純利益が12.4%増の54億円としている。配当予想は前期比10円増配の84円(第2四半期末42円、期末42円)としている。連続大幅増配で予想配当性向は46.9%となる。
セグメント別経常利益(セグメント間取引消去前)の計画は、商社流通が2.7%増の28億円(内訳は電子機能材が2.9%増の23億円、アルミ銅が1.6%増の5億円)で、製造が11.3%増の54億円(内訳は装置材料が5.6%増の17億円、金属加工が14.2%増の37億円)としている。
第1四半期は、売上高が前年同期比14.5%増の525億06百万円、営業利益が35.7%増の24億45百万円、経常利益が1.2%減の20億52百万円、親会社株主帰属四半期純利益が1.7%減の12億67百万円だった。
金属加工が大幅に伸長した一方で、アルミ銅における非鉄金属スクラップ市況低迷の影響、営業外損益の悪化などにより全体として小幅経常減益だった。営業外では受取配当金が82百万円減少したほか、為替差損益が2億91百万円悪化(前期は差益1億35百万円、当期は差損1億56百万円)した。またデリバティブ評価損益が3億24百万円悪化(前期は評価益23百万円、当期は評価損3億01百万円)した。
セグメント別の経常利益は、商社流通の電子機能材事業が20.2%増の8億66百万円、商社流通のアルミ銅事業が1億47百万円の損失(前年同期は4億49百万円の利益)、製造の装置材料事業が90.8%増の1億17百万円、製造の金属加工事業が38.3%増の11億72百万円だった。
電子機能材事業はレアメタル取引や半導体関連取引などが増加して大幅増益、アルミ銅事業はアルミおよび銅スクラップ取引における販売価格低迷に伴う収益率低下で赤字化、装置材料事業は検査装置取引や北米の電気設備部品取引などが増加して大幅増益、金属加工事業は半導体実装装置用金属加工品が牽引して大幅増益だった。
通期連結業績予想は据え置いて、増収増益・連続大幅増配予想としている。実需の強い業界に注力してコスト転嫁等を推進する。第1四半期は小幅経常減益だったが、通期予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が24%、営業利益が28%、経常利益が25%、親会社株主帰属当期純利益が23%と順調であり、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株主優待制度は3月末の株主対象
株主優待制度は毎年3月末時点の株主を対象として、保有株式数および保有期間に応じて優待商品を贈呈(詳細は会社HP参照)する。
■株価は上値試す
株価は9月の年初来高値圏から配当権利落ちも影響して一旦反落したが、調整一巡して切り返しの動きを強めている。高配当利回りなども支援材料であり、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。10月20日の終値は2158円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS179円02銭で算出)は約12倍、今期予想配当利回り(会社予想の84円で算出)は約3.9%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2327円12銭で算出)は約0.9倍、時価総額は約671億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)