【どう見るこの相場】FRBはハト派、日銀はタカ派、真逆の金融政策に揺れる日米株式市場

■天下分け目の12月10日、FRB利下げで年末相場は天国か地獄か?

 天下分け目の12月10日である。この日まで開催されるFOMC(公開市場委員会)で、FRB(米連邦準備制度理事会)が、市場の期待通りに3会合連続の政策金利の引き下げを決定するかどうかが、株価はもちろん景気、金利、物価、為替、企業業績まで大きく左右することになるからだ。ハト派政策の金利引き下げとなれば、株価は、前月11月に高値波乱となったAI(人工知能)関連株の再人気化は必至であり、長期金利は低下し、為替相場は、日米金利差の縮小で円高・ドル安に振れ、米国の企業業績にはプラスに働くのがセオリーである。

 このあと12月18日~19日にやはり東京市場の分け目となる日本銀行の金融政策決定会合が開催予定で、すでに植田和男総裁が、タカ派政策として11カ月ぶりに政策金利引き上げを匂わせるコメントをしており、そうなれば日米中央銀行の金融政策の方向性はハト派とタカ派の真逆となり、マーケットの反応も、日米で方向感が異なる可能性も出てくる。年末ラリーが盛り上がるのか、それとも年末セールを余儀なくされるのか難しい判断を迫られることになる。ただしである。好材料織り込み済み、悪材料出尽くし感も交えて、総楽観と総悲観との一方的に二極化する相場イメージは考え難い。要するにいいところ取りであり、個々のセグメント、銘柄ごとに強気と弱気が交錯する展開である。

■円高メリットか金利高メリットか、東京市場はまだら模様の攻防戦

 とくに東京市場では、円高・ドル安のメリット株とデメリット株、金利上昇のメリット株とデメリット株の攻防が激化しそうだ。円高・ドル安進行では為替差損懸念で自動車など輸出関連株が売られ、輸入価格引き下げ効果で一部小売り株が買われ、金利上昇では、住宅ローン金利が引き上げられる不動産株や債務負担増懸念で有利子負債の大きい公益事業などの大型株が売られる一方、金利上昇による利ザヤ拡大期待で銀行株が上値を追うまだら模様の展開も想定される。しかも日経平均株価は、指数寄与度の大きいAI関連の半導体株などに主導される年末ラリーで上下に値動きが激しくなる可能性もある。

 日米両市場のこのいいとこ取りの年末ラリーで注目したいのが、金先物関連株である。前週末5日の米国のニューヨーク商品取引所の金先物価格は、前日比変わらずの1トロイオンス=4243.0ドル引けた。強めの経済指標が発表されて長期金利は上昇したが、FRBの利下げを先取りし金利低下は金利のつかない金に相対的に優位となるとして買いが交錯したことが要因と分析された。金先物価格は、今年年初の1トロイオンス=2669ドルが、今年10月に4314.7ドルまで買い進まれて最高値を更新し、その後3960.5ドルまで調整したが、足元では約300幅のリバウンドをしていることになる。

■有事の金買いが加速、地政学リスクとドル離れで金先物5000ドル視野

 この金先物価格の高騰は、もともとの宝飾品需要やFRBの金融政策だけでなく地政学リスク、短期的な要因・長期的な要因が重なって起こっていると分析されている。地政学リスクでは、「有事の金買い」とされるようにウクライナ・パレスチナ問題をキッカケにリスク・ヘッジする安全資産買いが強まり、ロシアへの経済制裁でドル資産が凍結されドル決済の国際金融システムからロシアが排除されたことから、各国の中央銀行がドル離れを強めて外貨準備への金準備を高め、最近では仮想通貨業者が、準備資産の多様化を図るために大量の金を購入したと伝えられるなど新たなプレーヤーも参入している。金先物価格が、先行き5000ドル台に乗せても通過点に過ぎないとする強気予測に一役買っている。

 とういことで今週の当コラムでは、金先物関連株を注目することにした。かつて日本は、黄金の国「ジパング」といわれたが、この再生の先取りである。国内金鉱山の採掘、膨大な金が退蔵されている「都市鉱山」と「家庭内隠れ資産」の開発がこのエンジンになるかもしれないからである。当コラムで再三取り上げたセクター株だが、年末ラリーで「ジパング」再生の金の輝きを増す展開も想定される。定番銘柄の産金株、「都市鉱山」開発で躍進するリデュース(再資源化)株、「家庭内隠れ資産」をビジネスチャンスに変えるリユース(買い取り・再販)株にアプローチするところだろう。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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