【どう見るこの相場】株高って危くない?米国株高をそのまま日本株高に連動するのは疑問

どう見るこの相場

■「日米同時巣ごもり消費」が依然として継続

 株高って危くない?前週末17日に日経平均株価は、607円高と急反発し、一時2万円台目前と迫った。安倍晋三首相が、16日に「非常事態宣言」の対象地域を全国に拡大し、このうち13都道府県を「特定警戒都道府県」に指定したその翌日にである。足元の新型コロナウイルスの感染者急増は、3月の春分の日を含む3連休で警戒感が緩んだことが要因とされているが、株高も一役を担ったフシがあったからだ。

 今年3月末に日経平均株価は、3日続伸しこの間の上げ幅は3000円に達した。期末特有の需給要因が働いたものだが、これだけ急伸すれば、新型コロナウイルスの封じ込め期待を高め外出自粛疲れを解放させる緩みにつながったことは否定できない。これが、今回も繰り返しされるとしたら、どうなるか?と身の回りをみてみると、当たり屋投資家が、「勝った、取った」と拳を上げパフォーマンス自慢で群れ集って「3密(密閉、密集、密接)」ルールもお構いなしに祝杯を挙げかねない勢いなのである。そんなことはないと願うが、もし株高を伝えるテレビ、新聞などのメディアが、ワクチンや治療薬の開発が真近などと視聴者が取り違えるミスリードなどをするようだと大事になる。

 もっともこの株高は、国内の独自材料によるものではなかった。米国のトランプ大統領が、経済活動再開の指針を発表し、米国バイオ薬品大手のギリアド・サイエンシズ社の抗ウイルス治療薬「レムデシビル」が、新型コロナウイルス感染症に効果があったと伝えられ、ニューヨークダウ工業株30種平均先物が、時間外取引で700ドルを超して急伸し、海外投資家の買いが入ったことが引き金となった。もちろん株高は全員賛成だろうが、新型コロナウイルス感染症の罹患状況は、日米ではステージが異なっており、米国株高をそのまま素直に日本株高に連動すると受け取るのはやや疑問である。

 トランプ大統領が、国家非常事態を宣言し感染症対策に500億ドルの連邦予算を充当すると発表したのは、今年3月13日で、これに先立ち3月7日にニューヨーク州のクオモ知事が、非常事態宣言を発出し、外出禁止とするなど各州政府がロックダウン(都市封鎖)を実施した。感染者や入院患者がピークを過ぎたとのデータも揃ってきたようである。これに対して、日本の「非常事態宣言」の発出は、4月7日と周回遅れで、16日には対象地域が全国に拡大された。しかも感染者・死者の増加ペースは加速し、17日の東京都の1日当たりの感染者数は200人を超え、18日には全国で累計患者数は1万人を数えた。日米では「入口」と「出口」ほどの差も指摘され、「非常事態宣言」の実施期限の5月6日になって、そのまま終了となるのか延長されるのかはなはだ見通し難い。

 米国市場では、トランプ大統領の経済活動再開指針支持するロックダウン反対のデモが伝えられる一方、時期尚早としてクオモ知事などはなお警戒を崩さない。これを反映して「巣ごもり消費」関連株も、前週末に売り買いが交錯し、代表のネット通販のアマゾン・ドット・コムと動画配信サービスのネットフリックスは、上場来高値水準で利食い売りに押された。東京市場でも関連のトップ銘柄の任天堂<7974>(東1)は反落し、今年3月の年初来安値から3.2倍化した出前館<2484>(JQS)は、続急落してジャスダック市場の値下がり率ランキングの第2位と売られた。

 しかし、新型コロナウイルス感染症の収束は、トランプ大統領のシナリオ通りに進んだとしても長期戦となることは間違いなく、そうなれば「日米同時巣ごもり消費」が依然として継続するはずだ。日米両市場で前週末に売られた関連株には再度の人気化が期待できることになる。

【関連記事情報】
【特集】ネット通販のアマゾン関連株のリアル株、物流関連株、物流資機材株にアプローチ

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■岡崎医療センターで実証、医療従事者の負担軽減と業務効率化を確認  川崎重工業<7012>(東証プ…
  2. ■全国の介護事業者が安心して選定可能、TAISコード取得で信頼性向上  丸文<7537>(東証プラ…
  3. ■生成AIへの危機感、弁護士の間で高まる  GVA TECH<298A>(東証グロース)は8月21…
2025年10月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

ピックアップ記事

  1. ■全市場のわずか1.4%、希少な高配当利回り銘柄が浮上  株式市場では、高配当利回りを持つ10月決…
  2. ■「高市祭り」への期待と警戒交錯、資金は安定配当株へシフト  10月終盤相場は、「高市祭り」か「高…
  3. ■自民党総裁選と連立問題が相場を左右、短期急伸と急落を交錯  高市トレードは、まるで「超高速エレベ…
  4. ■東京市場、リスクオンとリスクオフが交錯、安全資産関連株に注目  週明けの東京市場は、米国株反発に…
  5. ■公明党離脱ショック一服、臨時国会控え市場は模索  またまた「TACO(トランプはいつも尻込みして…
  6. ■自民党人事でハト派ムード先行、逆張りで妙味狙う投資戦略も  今週の当コラムは、ハト派総裁とタカ派…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る