ラバブルマーケティンググループ、売上高過去最高を更新、ツール拡大と買収効果で成長加速
- 2025/12/22 07:44
- アナリスト銘柄分析

ラバブルマーケティンググループ(LMG)<9254>(東証グロース)は、大企業・ブランド向けを中心とするSNSマーケティング支援を主力に、成長戦略としてSNSマーケティング事業の拡大加速、DX支援事業の基幹事業化、東南アジアを中心とする海外展開、新しいテクノロジーを活用した新規事業の育成、サステナビリティマネジメントを推進している。25年10月期は大幅増収増益だった。SNS運用支援ツールcomnico Marketing Suiteの好調推移、新規M&A効果などで売上高が過去最高となり、利益面は費用削減効果も寄与した。そして26年10月期も増収増益予想としている。既存事業の安定的な成長を推進するほか、新規M&Aの推進や新規事業の立ち上げ・加速に取り組む。なお26年1月にエルマーケを子会社化(26年10月期第2四半期より新規連結予定)する。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は安値圏に回帰して軟調だが、調整一巡して出直りを期待したい。
■SNSマーケティング事業を主力としてDX支援事業も展開
企業やブランドのSNSマーケティングを支援するSNSマーケティング事業を主力とする持株会社である。SNS普及期の08年に設立(コムニコ設立、14年に純粋持株会社へ移行)して培ったSNSマーケティングに関する豊富なノウハウを強みとしている。さらに第2の柱としてDX支援事業も展開している。
グループ会社はSNSマーケティング事業のコムニコ、23年4月に設立したジソウ、SNSに関する正しい知識の普及と効果的かつ安全にSNSを活用できる人材育成を目的として26年11月に設立した一般社団法人SNSエキスパート協会、23年4月に子会社化したタイのDTK AD、24年6月に設立したマレーシアのLOVABLE MARKETING ASIA、24年11月に子会社化したWeb制作・コンサルティングのユニオンネット、25年2月に設立したインバウンド・バズ(25年3月にタイのTALONTRAVELからインバウンドメディア事業を譲受)である。DX支援事業のDXディライトについては25年7月にコムニコが吸収合併した。また26年1月にはLINEマーケティング支援に強みを持つエルマーケを子会社化(26年10月期第2四半期より新規連結予定)する。
なお25年11月にAIフュージョンキャピタルグループ(AIF社)を割当先とする第三者割当増資を実施し、AIF社の連結子会社となった。
■SNSマーケティング事業は運用支援~ツール提供~教育の好循環
SNSマーケティング事業は、SNSマーケティングに関する運用支援~運用支援ツール提供~人材教育サービスという3つのソリューションで構成されている。企業のSNSマーケティングのオペレーションをフルサポートし、3つのソリューションが相互補完しながら好循環で成長するビジネスモデルを特徴としている。コムニコは予算規模の大きい大企業やブランド、ジソウは中堅・中小企業など小規模でSNS運用する企業・団体向けを主たるターゲットとして展開している。SNSエキスパート協会は人材教育サービスを展開している。
運用支援は、SaaS型SNS運用支援(アカウント投稿・分析)ツールcomnico Marketing Suiteや、SNSキャンペーン支援ツールATELUにより、顧客企業のSNSアカウント戦略策定からアカウント開設、運用支援・代行、投稿コンテンツ制作、コメント対応、キャンペーン企画・運営、広告出稿、レポート作成、効果検証までをワンストップサービスで提供(受託)している。comnico Marketing Suiteの有償契約アカウント数は25年4月に累計5000件を突破した。ATELUのキャンペーン実施数は25年9月末に累計1.7万件を突破した。
新ツール・サービスの開発では23年3月にチャットボットツールautouを開始、24年5月にジソウが生成AI機能を搭載したMEOツール・運用代行サービスを開始、24年7月にジソウがOTA(Online Travel Agent)運用支援サービスを開始、24年11月にジソウがデジタル広告運用支援サービスを開始、25年1月にコムニコが食分野に特化したインフルエンサーマーケティング支援サービス「Life in the Kitchen」(24年12月にアーティザンから事業譲受)の本格提供を開始、25年5月にコムニコが日本の魅力を国外に発信するインフルエンサー施策「インバウンド・ブースト」の提供を開始、25年6月にコムニコが「TikTok Shop」に対応した店舗開設・運用支援サービスの提供を開始、25年7月にコムニコがAIを活用したSNS返信文自動生成サービスを開始、25年8月にジソウが企業のマーケティング業務におけるAI活用支援サービス「ジソウAI」の提供を開始、25年10月にジソウがSNS+αのマーケティング支援としてAmazon広告運用支援サービスを開始した。
人材教育サービスは、SNSエキスパート協会がSNSアカウント開設・運用に係るノウハウや、炎上などSNSに潜むリスクに関する内容を体系化した検定講座を開発・提供しているほか、セミナー、講演、書籍、メディアを通してSNSに関する正しい知識の普及・啓蒙活動にも努めている。検定受講者数は25年10月時点で累計7000人を突破した。
■海外は東南アジアを中心に展開強化
海外は23年4月にDTK ADを子会社化し、東南アジアを中心にインバウンドプロモーションや海外マーケティング支援の事業展開を開始した。23年7月にはアジア向け越境ECを支援するアジアンブリッジと資本業務提携し、DTK ADとアジアンブリッジがサービス提供エリアを拡大している。
23年8月にはVIDA Corporationおよびプログレッソ ディレクションと協業して「お試し出店サービス」を開始した。海外出店を希望する飲食事業者に対して戦略の策定、テナントの紹介、仕入業者の手配、集客のためのマーケティングソリューションなどを提供する。23年10月にはマレーシアにおける「お試し出店サービス」の展開促進を目的として、VIDA Corporation、プログレッソ ディレクションおよびザクロスと、マレーシアに合弁会社TASTE FOOD JAPANを設立した。
また25年2月には子会社インバウンド・バズを設立し、25年3月にインバウンド・バズがタイのTALONTRAVELから訪日タイ人観光客向けインバウンドメディア事業を譲り受けた。25年7月にはインバウンド・バズがマイクロアド<9553>と業務提携、25年8月にはDTK ADがマイクロアドと業務提携、25年9月にはインバウンド・バズがFesbaseと業務提携した。
■大手企業・ブランド向け運用支援が中心
SNSマーケティング事業の主な収益は、SaaS型月額課金の運用支援ツール利用料、月額課金の運用支援基本料金、従量課金のコンテンツ制作料金(企画数、原稿作成、撮影数など投稿数によって変動)である。
同社のSNSマーケティング運用支援は大企業中心に銀行、小売、情報通信、飲食サービス、自治体など多種多様な企業・官公庁に幅広く導入されている。多数のブランドを展開する企業がブランド毎にSNSアカウントを運用するケースが増えているため、大型案件の受注が増加傾向である。複数アカウントのクライアント例(25年10月期末)としては大手ITグループ307、大手自動車メーカー184、ウェディング・ホテル運営会社64、大手IP会社54、ライフスタイルブランド42、大手出版社37、ライフイベント関連サービス34、大手化粧品メーカー25、音楽プロダクション25などがある。
■主要KPI
25年10月期のSNS運用支援新規受注件数は、高単価・高収益案件獲得に注力したため前期比118件減少して363件だった。25年10月期末時点のロイヤルクライアント(年間取引高10百万円以上の顧客)は前期末比1社減少して41社、ロイヤルクライアントの売上単価は横ばいの2921.5万円となった。高単価・高収益案件獲得に注力し、第4四半期には年間売上高1億円超の案件を新規受注した。
25年10月末時点のSNS運用支援ツール契約件数は、前期末比50件増加して644件(comnico Marketing Suiteが61件増加の477件、ATELUが19件減少の138件、その他が8件増加の29件)となった。comnico Marketing Suiteの契約社数は前期比90社増加して479社(1~3アカウントが79社増加して260社、4アカウント以上が11社増加して119社)となった。また25年10月期第4四半期のcomnico Marketing SuiteのARR(年間経常収益)は前年同期比13.9%増の3億38百万円となった。解約率は1.41%だった。
SNSエキスパート協会の累計検定受講者数(SNSリスクマネジメント検定、SNSエキスパート初級、SNSエキスパート上級)は25年10月期末時点で前期末比694人増加して7003人となった。
■中期経営計画(5ヶ年成長イメージ)
同社は25年10月期~29年10月期の中期経営計画(5ヶ年成長イメージ)として、既存事業(オーガニック成長)において年平均成長率10~15%を目指すほか、M&Aの加速による非連続な成長、新規領域への展開による飛躍的な成長を目指す方針としている。目標値には29年10月期売上高50億円以上、営業利益4億円以上、時価総額100億円以上を掲げている。
既存事業ではcomnico Marketing Suiteの機能強化などにより、大企業・ブランド向けを中心とするSNSマーケティング支援の販売を拡大するほか、AIやDXも活用して収益性向上を推進する。M&Aの加速では、M&Aの対象領域も広げて積極的に検討するため推進体制を構築し、サービスおよび事業領域を拡張する。新規領域への展開では、海外展開・インバウンドプロモーション領域においてJapan Promotion Projectを軸に早期の事業化を目指すほか、XR-Web3領域においてパートナー企業との連携による新サービス開発や実証実験を行い、早期に事業化を目指す。
なお24年12月にAI・DX推進室を設置し、グループ全社でAIの積極活用に取り組んでいる。自社内での活用による業務効率化にとどまらず、顧客のSNSマーケティングの業務効率化や品質向上に向けてAIを活用した新サービス開発も推進する。25年9月には子会社コムニコのエンジニアのAI活用が100%に到達し、SaaSツール開発の一部業務の工数を大幅に削減したとリリースしている。将来的には開発に要する業務時間の9割削減を目指す。
■サステナビリティマネジメントで人材戦略を重視
同社は、メンバーが輝くことできる「働きがいのある組織」が全活動のベースとなり、そこから生み出される事業活動によって社会の持続可能な発展に貢献するとの考え方に基づき、この循環の創造を目指してサステナビリティマネジメントを推進している。
23年5月には従業員の働き方や成長をサポートする制度の総称を「ララサポ」に決定した。Lovable Life(ラバブルな人生)をサポートするため、環境サポート、成長サポート、健康サポート、出産・育児サポート、介護サポート、休暇制度、コミュニケーション、表彰制度、その他の9つのカテゴリーがあり、現時点で全39項目が定められている。23年12月には女性活躍推進法に基づく「えるぼし認定」の最高位である3つ星の認定を取得した。25年3月には、経済産業省と日本健康会議が進める健康経営優良法人認定制度において健康経営優良法人2025(大規模法人部門)に認定された。3年連続の認定となる。
■25年10月期大幅増収増益、26年10月期も増収増益予想
25年10月期の連結業績(25年12月2日付で売上高を下方修正、各利益を上方修正)は、売上高が前期比21.7%増の26億30百万円で、調整後EBITDA(=営業利益+減価償却費+のれん償却費+株式報酬費用)が27.5%増の2億24百万円、営業利益が16.9%増の1億60百万円、経常利益が12.8%増の1億66百万円、親会社株主帰属当期純利益が子会社の吸収合併に伴う税効果も寄与して83.4%増の1億33百万円だった。
大幅増収増益だった。SNSマーケティング事業のSNS運用支援ツールcomnico Marketing Suiteの好調推移、新規M&A(当期は株式取得1件、事業譲受2件)効果などで売上高が過去最高となり、利益面は費用削減効果も寄与した。
全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高6億19百万円、調整後EBITDA12百万円、営業利益0百万円の損失、第2四半期は売上高7億08百万円、調整後EBITDA1億24百万円、営業利益1億07百万円、第3四半期は売上高6億15百万円、調整後EBITDA36百万円、営業利益17百万円、第4四半期は売上高6億87百万円、調整後EBITDA51百万円、営業利益37百万円だった。
26年10月期の連結業績予想は売上高が前期比14.0%増の30億円、調整後EBITDA(=営業利益+減価償却費+のれん償却費+株式報酬費用)が24.7%増の2億80百万円、営業利益が12.3%増の1億80百万円、経常利益が1.9%増の1億70百万円、親会社株主帰属当期純利益が5.1%増の1億40百万円としている。
増収増益予想としている。既存事業の安定的な成長を推進するほか、新規M&Aの推進や新規事業の立ち上げ・加速に取り組む。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株主優待制度
株主優待制度については、24年4月末日および24年10月末日時点の同社株主名簿に同一株主番号で連続2回以上記載または記録され、同社株式を100株以上、半年以上継続保有する株主を対象にQUOカード1000円分を贈呈した。また25年3月には25年10月期についても株主優待制度を継続すると発表した。25年4月末日および25年10月末日時点の同社株主名簿に同一株主番号で連続2回以上記載または記録され、同社株式を100株以上、半年以上継続保有する株主を対象にQUOカード1000円分を贈呈する。
■株価は調整一巡
株価は安値圏に回帰して軟調だが、調整一巡して出直りを期待したい。12月19日の終値は1202円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS87円38銭で算出)は約14倍、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS337円47銭で算出)は約3.6倍、そして時価総額は約22億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)




















