【小倉正男の経済コラム】米国経済 消費・雇用・物価(インフレ)はいずれも問題含み 景気後退に突入寸前のリスク抱える

■年末商戦は不発、個人消費は低迷

 米国のGDP(国内総生産)の70%近くを占めているのが個人消費である。消費は景気を端的に表す指標ということになる。25年12月の小売売上高は7350億ドル(前月比0.0%)と発表されている。(商務省・2月10日)

 年末商戦真っ只中の12月の消費が横ばいというのは予想外の出来事だった。良い兆候とはいえない。しかも中身が良くない。自動車・同部品、家具、電子機器・家電、衣料などに加え飲食・飲酒サービスがマイナスになっている。

 インフレの昂進が止まないわけだから、放っておいても消費は名目ではプラスになる。しかし、節約志向の浸透ということなのか――。消費の横ばいは実質的にはマイナスを意味する。景気は後退している。株式市場などからは利下げ期待が一気に高まる事態となった。

■1月雇用は上振れ、ただ25年通年雇用は大幅減少

 その翌日、雇用統計が発表されることになっていた。個人消費が伸び悩んだ経緯・筋合いから雇用も悪化するという悲観論がにわかに台頭--。個人消費に続き雇用悪化ともなれば、景気後退(リセッション)入りとなる。「米国売り」(ドル・国債・株式のトリプル安)懸念が取り沙汰された。

 しかし、案に相違して、開示された雇用統計は1月の非農業部門雇用者数が前月比13万人(事前予想7万人・25年12月5万人)と大幅上振れだった。(労働省・2月11日)

 失業率は4.3%(事前予想4.4%)。25年12月の失業率4.4%から改善となっている。平均時給は前月比0.4%増、前年比3.7%増と上昇している。短期的には雇用低迷に歯止めが掛かっているというデータであり、前日湧きあがった利下げ期待は吹き飛んでしまった。

 ただし、年ベースで見ると雇用の低迷は明らかである。25年・月平均雇用者は1・5万人増、24年・月平均雇用者12・2万人増に比べ大幅減少となっている。

 バイデン大統領からトランプ大統領に変わった途端に労働需給は悪化が定着している。これは先行き悪いシグナルというしかない。こちらのほうがむしろ重要指標、米国は景気後退に突入する寸前にあることを示している。

■1月消費者物価は低下したがインフレ収束は遠い

 非農業部門雇用者数の上振れに続いたのが消費者物価指数(CPI)だ。1月の消費者物価は前年比2.4%増(事前予想2.5%増)、25年12月の2.7%増に比べると低下している。(労働省・2月13日)

 消費者物価低下はガソリン価格下落を反映している。食品、家賃、ホテル宿泊費などは小幅だが上昇が続いている。電気などエネルギーは実質的に大幅値上げとなっている。建ち上がったデータセンターによる需要増で電力会社が設備増強に動いている。設備投資コストの価格転嫁で料金値上げが行われている。

 インフレは収まっているとはいえない。「バイデン・インフレの悪夢を終わらせる。私が勝利したらすぐに物価を引き下げる」。トランプ大統領は大統領選でそうした選挙戦術を展開した。しかし、大統領になったらインフレはほとんど眼中にない模様だ。

 トランプ大統領はパウエルFRB(連邦準備制度理事会)議長に対して大幅利下げ要求を度々繰り返している。「インフレなどない」。トランプ大統領はいまだにインフレ昂進を認めていない。下手に利下げを急げばインフレ再燃を加速することになる。それでも利下げ一辺倒の言動を変えようとしない。

 26年11月には中間選挙が控えている。消費・雇用・物価(インフレ)の状況はそれぞれ問題含みだ。とりわけ25年通年の雇用低迷は、トランプ大統領、そして共和党にとってはアキレス腱になりかねない。現状は控えめにみてもスタグフレーション状態である。景気は良くなるどころではない。景気後退に突入していく寸前の局面にあると指摘しなければならない。(経済ジャーナリスト)

(小倉正男=「M&A資本主義」「トヨタとイトーヨーカ堂」(東洋経済新報社刊)、「日本の時短革命」「倒れない経営~クライシスマネジメントとは何か」(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長などを経て経済ジャーナリスト。2012年から当「経済コラム」を担当)(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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