【アナリスト水田雅展の銘柄分析】トーソーは16年3月期減益予想の織り込み完了、0.4倍近辺の低PBRに注目

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 トーソー<5956>(東2)はカーテンレール類・ブラインド類の大手である。中期戦略では「窓辺の総合インテリアメーカー」として高付加価値商品拡販などの施策を強化している。9日の株価は地合い悪の中でも前日比プラスを確保した。1月の直近安値や15年9月の昨年来安値を割り込むことなく切り返す動きだ。16年3月期第3四半期累計は営業減益だったが、通期減益予想の織り込みが完了して底打ちしたようだ。0.4倍近辺の低PBRも注目点となって出直り展開だろう。

■カーテンレール類・ブラインド類の大手

 カーテンレール類やブラインド類の大手である。室内装飾関連事業を主力として、ステッキなど介護用品事業も展開している。なお国内市場シェアはカーテンレールが約50%、ブラインド類が約15%である。

 中期戦略では「窓辺の総合インテリアメーカー」として、高付加価値商品の拡販、インテリアトレンドに合わせた特長ある商品や省エネ・節電対応など新商品開発のスピードアップ、コスト競争力の強化、ホテルや商業施設など非住宅分野における需要の取り込み、大型物件の獲得や新興国の消費需要取り込みによる海外売上高の拡大、新規領域としての介護用品事業の拡大などの施策を強化している。

 円安に伴う原材料価格上昇に対応して、15年7月6日受注分からカーテンレールおよび関連部品の価格改定を実施し、15年10月5日受注分からデザインブラインドおよび関連部品の価格改定を実施した。

 なお1月15日には、フランスの子会社トーソー・ヨーロッパを解散して清算すると発表した。欧州市場の販売戦略を見直し、当社からの直接取引とする。清算結了は16年6月予定としている。

■住宅関連市場の影響受ける収益構造

 15年3月期の四半期別業績の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)53億10百万円、第2四半期(7月~9月)55億38百万円、第3四半期(10月~12月)53億38百万円、第4四半期(1月~3月)62億81百万円で、営業利益は第1四半期9百万円、第2四半期2億25百万円、第3四半期1億04百万円、第4四半期4億67百万円だった。

 新設住宅着工件数やリニューアル需要など住宅関連市場の影響を受け、第4四半期の構成比が高い収益構造である。15年3月期の売上総利益率は41.0%で14年3月期比0.5ポイント低下、販管費比率は37.5%で同0.3ポイント上昇、ROEは3.2%で同1.2ポイント上昇、自己資本比率は52.7%で同3.0ポイント上昇した。配当性向は30.4%だった。

■16年3月期第3四半期累計は営業減益だが、純利益は増益

 1月29日に発表した今期(16年3月期)第3四半期累計(4月~12月)の連結業績は、売上高が前年同期比2.2%減の158億23百万円となり、営業利益が同29.8%減の2億28百万円、経常利益が同29.8%減の2億28百万円だったが、純利益は同85.5%増の1億05百万円だった。

 住宅関連市場が本格回復に至らず、円安に伴う輸入原材料価格上昇、台風18号の影響による鬼怒川決壊に伴う協力工場の一部生産設備および資材(当社資産)の冠水被害などで減収、営業減益、経常減益だった。売上総利益率は41.2%で同0.1ポイント上昇、販管費比率は39.8%で同0.7ポイント上昇した。営業外収益では為替差益が減少(前期は16百万円計上、今期は9百万円計上)した。特別損失では災害による損失1億13百万円を計上したが、前期計上の厚生年金基金解散損失引当繰入額1億89百万円が一巡した。さらに法人前等の減少も寄与して純利益は大幅増益だった。

 セグメント別の動向を見ると、室内装飾関連事業は住宅市場の回復遅れや水害による販売機会喪失などで、売上高が同2.5%減の155億67百万円、営業利益が同32.3%減の2億23百万円だった。その他事業はステッキを中心とした介護関連用品の販売活動強化で、売上高が同13.4%増の2億56百万円、営業利益が4百万円の黒字(前年同期は5百万円の赤字)だった。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)48億93百万円、第2四半期(7月~9月)54億73百万円、第3四半期(10月~12月)54億57百万円、営業利益は第1四半期1億69百万円の赤字、第2四半期2億21百万円、第3四半期1億76百万円だった。

■16年3月期通期は減益予想だが、17年3月期は収益改善期待

 今期(16年3月期)通期の連結業績予想は前回予想(10月30日に減額修正)を据え置いて、売上高が前期比2.4%増の230億円、営業利益が同10.6%減の7億20百万円、経常利益が同10.7%減の7億円、純利益が同13.1%減の3億円としている。

 住宅関連市場の本格回復の遅れや、円安による輸入原材料価格の上昇などで減益予想だ。配当予想は前回予想(5月12日公表)を据え置いて前期と同額の年間10円(第2四半期末5円、期末5円)としている。予想配当性向は35.0%となる。

 通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が68.8%、営業利益が31.7%、経常利益が32.6%、純利益が35.0と低水準である。住宅関連市場の本格回復が遅れているため、第4四半期の構成比が高い収益構造を考慮しても通期下振れに注意が必要となるが、来期(17年3月期)は収益改善が期待される。

■株主優待で積極還元姿勢

 株主優待制度を実施して積極還元姿勢を示している。毎年3月31日現在で1単元(100株)以上保有株主に対して1000円相当の優待品、10単元(1000株)以上保有株主に対して3000円相当の優待品を贈呈する。優待品はギフトカタログに掲載された旬の食材や生活用品等の中から1点を選択する。また環境保全活動の一環として、インドネシア共和国における「植林活動への寄付」も設けている。

■株価は16年3月期減益予想の織り込み完了して底打ち

 株価の動きを見ると、2月9日の株価は地合い悪の中でも前日比3円高とプラスを確保した。そして1月の直近安値463円や15年9月の昨年来安値460円を割り込むことなく切り返す動きだ。16年3月期第3四半期累計は営業減益だったが、通期減益予想の織り込みが完了したようだ。

 2月9日の終値483円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS28円56銭で算出)は16~17倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は2.1%近辺、そして前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1091円41銭で算出)は0.4倍近辺である。なお時価総額は約57億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえているが、直近安値圏で三尊底の形となった。16年3月期減益予想の織り込みが完了して底打ちしたようだ。0.4倍近辺の低PBRも注目点となって出直り展開だろう。

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