【編集長の視点】農業総合研究所は連日の最高値、農業関連の成長可能性を評価して直近IPO株買いが増勢

 農業総合研究所<3541>(東マ)は、寄り付きの買い気配から700円高の7040円と買い進まれて3日続伸し、連日の上場来高値更新となっている。同社株は、今年6月16日に1050円を公開価格に新規株式公開(IPO)されたばかりで、以来、前日30日までの11営業日中、実に9日間もストップ高し上場来高値追いとなっているが、なお農産業創造ベンチャー企業の成長可能性を評価して直近IPO株買いが増勢となっている。初値からの上昇率は、今年の前日までの40銘柄のIPO株中のトップとなっており、値動きの軽さや新規資金が次々と流入して資金回転が効いている好需給なども買い手掛かりになっている。

■農産物の直売所展開をサポートする流通プラットフォームが高成長

 同社は、「都市型農産物流通プラットフォーム」を登録農業生産者に提供し、近隣の集荷場で集荷した農産物を同社の全国53カ所にのぼる集荷場に出荷し、ここから全国の物流センターやスーパーマーケットの直売コーナーに配送、農産物の産直を実現している。登録生産農家は、自由に価格や売り先を選択して同社から貸与されたタブレット端末やバーコード発券機により自宅でバーコードを発券して出荷できるメリットがあり、スーパーマーケットは店舗の魅力をアップできるメリットがあり、生活者は、出荷の翌日に鮮度の高い「顔の見える」安心感のある農産物が購入できるメリットがあり、「三方良し」の仕組みを構築している。

 このため大手スーパーとの取引は急速に増加し、2011年8月の36店が、今年2月末には全国570店舗に拡大・導入され、登録生産農家数も5231名に達した。ただこの導入率は、全国の1万7463店に達するスーパーマーケットの3.3%にしか過ぎず、「道の駅」を含めて拡大する直販市場の農産物流通ルートからも大きな持続可能性の高い潜在マーケットが存在し、この第一線でまず登録生産農家の3倍増を目指してビジネスとして魅力のある農産業の確立を進める同社の高い成長可能性を示唆している。

 業績も高成長を続け、今8月期業績は、売り上げ10億5100万円(前期比18.9%増)、営業利益1億4900万円(同3.34倍)、経常利益1億5500万円(同3.46倍)、純利益1億円(同93.4%増)と予想されている。

■初値比の株価上昇率は3.7倍に達しIPO株特有の「値動きの軽さ」を体現

 株価は、公開価格1050円に対して1870円で初値をつけ、初値倍率は約78%と中程度にとどまったが、IPO初日に公開価格比ストップ高となったことを手始めに、IPO以来前日30日までの11営業日間中9日間もストップ高して連日の上場来高値追いとなり、初値対比の株価上昇率は、3.76倍と今年これまでIPOされた40銘柄のなかでも最大となり、IPO株の「上値のシコリがなく、値動きが軽い」特性を体現している。IPOに際した資金吸収額が4億円強、現在の時価総額も130億円超と小規模にとどまっており、英国の「EU(欧州連合)離脱ショック」で世界的な株価波乱が続けるなか逆行高して高値チャレンジに拍車を掛けよう。(本紙編集長・浅妻昭治)

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