【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ティー・ワイ・オーは15年7月期好業績見通しを評価して出直り

銘柄分析

 TV-CM制作大手のティー・ワイ・オー<4358>(東1)の株価は、1月5日の186円から反落し、28日は14年10月以来の安値水準となる171円を付ける場面があった。ただし特に個別の悪材料は見当たらない。年初からの地合い悪化の影響で一時的に売りが膨らんだようだ。今期(15年7月期)好業績見通しを評価して出直り展開だろう。

 広告事業(広告代理店向けのTV-CM企画・制作およびポスト・プロダクション業務、広告主向けWEB広告およびプロモーションメディア広告の企画・制作、クロスメディア広告業務)、映像関連事業(アニメーションおよびミュージックビデオの企画・制作)を展開している。

 今期(15年7月期)の連結業績見通し(9月11日公表)は売上高が前期比7.3%増の285億円、営業利益が同8.0%増の18億50百万円、経常利益が同12.6%増の17億円、純利益が同50.9%増の9億円としている。広告事業の好調が牽引する。純利益は前期計上した特別損失の一巡も寄与する。

 配当予想は年間4円(期末一括)で前期比2円減配の形だが、前期の年間6円には上場市場変更記念配当3円を含んでいるため、普通配当ベースでは1円増配となる。

 第1四半期(8月~10月)は、検収時期の関係で前年同期比8.6%減収だったが、同20.4%営業増益、同45.6%経常増益、同62.3%最終増益だった。高利益率案件の受注増加、厳格な売上原価管理の効果で売上総利益率が同1.9ポイント上昇し、販管費での上場市場変更関連費用の一巡なども寄与して大幅増益だった。

 通期見通しに対する第1四半期累計の進捗率は売上高が18.6%、営業利益が18.3%、経常利益が20.8%、純利益が23.0%とやや低水準だったが、第1四半期末の受注残高は同20.3%増の79億65百万円と高水準であり、通期ベースでも好業績が期待される。

 受注は電気・情報通信、衣料、自動車、飲料関連を中心に好調だ。大型案件や大口広告主からの直接受注も増加基調のようだ。映像関連事業では高利益率のライブ映像案件が拡大している。売上原価管理の徹底や販管費の抑制も寄与する。なお14年9月に連結子会社TYOアニメーションズに対する債権放棄を発表したが、過年度において全額引当済みのため今期業績に与える影響は軽微としている。

 中期経営計画では目標数値として17年7月期売上高400億円、営業利益27億円を掲げ、株主還元として配当性向25%以上目標と株主優待の継続実施の方針を示している。

 広告市場は拡大基調であり、国内TV-CM制作業界では当社を含む大手制作3社による寡占化傾向を強めている。景気回復や20年東京夏季五輪開催も追い風となるため事業環境は中期的に良好だ。また14年8月にアジア戦略部を新設して海外の新規展開を強化している。来期(16年7月期)に予定していた戦略的M&Aを前倒しで実施する可能性もあるようだ。中期的に収益拡大基調だろう。

 なお14年10月に株主優待制度の拡充を発表している。15年7月期については、通常株主優待であるクオカード贈呈(毎年1月31日現在500株以上保有株主に対してクオカード1000円相当、2500株以上保有株主に対してクオカード3000円相当、5000株以上保有株主に対してクオカード5000円相当を贈呈)に加えて、当社オリジナル株主優待を継続する。

 オリジナル株主優待の内容(14年12月発表)は、15年1月31日現在500株以上保有株主を対象として、応募者の中から抽選で3名にオリジナルミュージックビデオ「株主様!あなたがアーティスト」を制作して贈呈する。

 株価の動きを見ると、1月5日の186円から反落し、28日は14年10月以来の安値水準となる171円を付ける場面があった。ただし特に個別の悪材料は見当たらない。年初からの地合い悪化の影響で一時的に売りが膨らんだようだ。

 1月28日の終値174円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS14円87銭で算出)は11~12倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間4円で算出)は2.3%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS77円18銭で算出)は2.3倍近辺である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線を割り込んで下押したが、週足チャートで見ると26週移動平均線と52週移動平均線がサポートラインの形だ。今期好業績見通しを評価して出直り展開だろう。

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