【アナリスト水田雅展の銘柄分析】星光PMCの14年12月期業績修正に対する反応は限定的、今期の収益改善期待で下値支持線から反発のタイミング

銘柄分析

 製紙用薬品の星光PMC<4963>(東1)は、1月30日に前期(14年12月期)業績の修正を発表し、売上高と営業利益を減額、経常利益と純利益を増額した。修正に対する株価のネガティブ反応は限定的のようだ。調整局面が続いたが、次世代素材セルロースナノファイバー(CNF)のテーマ性に変化はなく、今期(15年12月期)の収益改善期待で下値支持線から反発のタイミングだろう。

 DIC<4631>の子会社で製紙用薬品事業、印刷インキ用・記録材料用樹脂事業を展開している。高付加価値商品の拡販、次世代素材セルロースナノファイバー(CNF)、導電性ナノ材料(銀ナノワイヤー)、光学弾性樹脂(OCA)など成長市場・新分野開拓の戦略を推進している。さらに事業領域拡大に向けて14年4月には、興人フィルム&ケミカルズの化成品事業を承継したKJケミカルズを子会社化した。

 次世代素材CNFは、すべての植物の植物細胞壁の骨格成分であるセルロースをナノサイズまで細かくほぐすことにより得られる繊維である。鋼鉄の5分の1の軽さで5倍以上強く、熱による変形が少ないなどの特徴を持ち、樹脂の補強材として機能させることにより、自動車用樹脂の強度向上や金属部材からの置き換え、家電・モバイル機器の軽量化などでの需要が期待されている。

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のCNF開発プロジェクトの中核企業として早期事業化を目指し、13年2月に経済産業省イノベーション拠点立地推進事業に採択された。14年6月にはナノセルロースの開発・事業化を促進するため、産官学連携型コンソーシアム「ナノセルロースフォーラム」が設立され、当社を含めて100社以上が参画した。そして14年11月には竜ヶ崎工場におけるCNF実証生産設備の建設工事が完了し、本格的な変性CNFサンプルの提供を開始した。

 銀ナノワイヤーは14年9月からサンプル出荷を本格開始した。直径がナノサイズ、長さがミクロンサイズの繊維状の銀を溶液中に分散させたもので、透明導電性電極を形成する。ウェアラブル端末や大型ディスプレイへの利用が期待されている。

 1月30日に前期(14年12月期)連結業績見通しを修正した。前回予想(7月31日に減額修正)に対して、売上高は3億01百万円減額して239億69百万円、営業利益は74百万円減額して3億26百万円としたが、経常利益は85百万円増額して5億25百万円、純利益は41百万円増額して19百万円の赤字とした。

 国内外で製紙用薬品の売上高が計画を下回り、営業利益も減額した。ただし為替の円安進行に伴って外貨建て資産に係る為替差益が発生したため、経常利益と純利益を増額した。配当予想は前回予想(2月12日公表)を据え置いて前々期(9カ月決算で9円)と実質的に同額の年間12円(第2四半期末6円、期末6円)としている。

 今期(15年12月期)は、売上面では製紙用薬品の需要回復、高付加価値商品の拡販、KJケミカルズの通期連結、利益面ではプロダクトミックスの改善、ロジンなど原材料価格上昇に対する製品価格是正の浸透、KJケミカルズの減価償却費減少などで収益改善が期待される。原油価格下落も追い風だ。

 中期経営目標としては18年12月期売上高350億円(既存事業245億円、海外事業70億円、新規事業35億円)、営業利益35億円、売上高営業利益率10%を掲げている。次世代素材セルロースナノファイバー(CNF)や銀ナノワイヤーの事業化も寄与して中期的な収益拡大が期待される。

 株価の動きを見ると上値を切り下げて調整局面が続いている。しかし14年10月安値864円まで下押す動きは見られず、900円近辺が下値支持線の形だ。前期業績の修正に対するネガティブ反応も限定的のようだ。調整の最終局面だろう。

 2月4日の終値915円を指標面で見ると、前期推定配当利回り(会社予想の年間12円で算出)は1.3%近辺、前々期実績PBR(前々期実績の連結BPS663円98銭で算出)は1.4倍近辺である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線が戻りを押さえる形で上値を切り下げたが、900円近辺が下値支持線となって13週移動平均線突破の動きを強めている。調整局面が続いたが、次世代素材セルロースナノファイバー(CNF)のテーマ性に変化はなく、今期(15年12月期)の収益改善期待で下値支持線から反発のタイミングだろう。

>>星光PMCのMedia-IR企業情報

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■国際特許分類や元素リストを用いて多様な解決策を自動生成  AGC<5201>(東証プライム)は1…
  2. ■Newton・GR00T・Cosmosを軸にロボット研究を高速化  NVIDIA(NASDAQ:…
  3. ■700億パラメータ規模の自社LLMを金融仕様に強化、オンプレ環境で利用可能  リコー<7752>…
2025年11月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930

ピックアップ記事

  1. ■鶏卵高騰・クマ被害・米政策転換、市場が注視する「3素材」  2025年11月、師走相場入りを前に…
  2. ■AI株からバリュー株へ資金移動、巨大テックの勢い一服  「AIの次はバリュー株」と合唱が起こって…
  3. ■日銀トレード再び、不動産株に眠る超割安銘柄  今週の投資コラムは、政策金利据え置きの投資セオリー…
  4. ■日銀据え置きでも冴えぬ不動産株、銀行株が主役に  株価の初期反応が何とも物足りない。10月30日…
  5. ■造船業再生へ3500億円投資要望、経済安全保障の要に  日本造船業界は、海上輸送が日本の貿易の9…
  6. ■高市政権が描く成長戦略、戦略投資テーマ株に資金集中  「連立政権トレード」は、早くも第2ラウンド…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る