【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ラクーンは自己株式取得を好感して一段高、中期成長力も評価

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 企業間電子商取引(EC)サイト運営のラクーン<3031>(東マ)の株価は、第3四半期累計(5月~1月)の大幅増益や自己株式取得を好感して一段高となり、12日には784円まで上伸した。中期成長力も評価して14年1月の昨年来高値905円、さらに13年11月高値993円を目指す展開だろう。

 アパレル・雑貨分野の企業間ECサイト「スーパーデリバリー」の運営を主力として、クラウド受発注ツール「COREC(コレック)」事業、BtoB掛売り・請求書決済代行サービス「Paid(ペイド)」事業、売掛債権保証事業など周辺分野にも事業領域を広げている。

 14年11月には子会社トラスト&グロースがスタンドファームと業務提携した。スタンドファームのクラウド請求書管理サービス「Misoca」登録業者に対して売掛保証サービスを提供する。12月には子会社トラスト&グロースがトラボックスと業務提携した。荷物を運んで欲しい人とトラック運送業者を結ぶオンライン物流サービス「トラボックス」登録会員に対して運賃全額保証サービスを提供する。また12月にはアパレル大手のワールドが企業間ECサイト「スーパーデリバリー」に出展すると発表した。

 2月12日には「Paid」事業の売掛債権流動化を、りそな銀行と信託受益権方式で3月から実施すると発表した。事業規模の拡大を加速するには、ある程度余裕のある運転資金が必要なためとしている。

 また3月6日には「Paid」加盟企業数が1200社を突破したと発表している。11年10月に開始したサービスで当初はアパレルや雑貨の卸メーカーがメインの加盟企業だったが、サービス改良によって業種・業態を問わず、あらゆるBtoB向けサービスに導入できるようになった。4月1日から開始する三菱自動車工業<7211>の新サービス「三菱自動車 電動車両サポート」での導入も決定している。

 なお企業間ECサイト「スーパーデリバリー」流通に係る売上高に関して、従来は出展企業と会員小売店が「スーパーデリバリー」を通じて取引した金額を売上高計上(総額表示)し、商品仕入高も売上原価に計上していたが、今期(15年4月期)から、商品仕入高を売上高と相殺して表示する方法(純額表示)に変更した。この変更によって「スーパーデリバリー」流通に係る売上高は出展企業から徴収するシステム利用料売上となる。従来の総額表示に比べて見掛け上の売上高は減少するが利益に変更はない。

 2月25日に発表した今期(15年4月期)第3四半期累計(5月~1月)の連結業績は、売上高が前年同期比5.9%増の15億18百万円、営業利益が同38.3%増の2億54百万円、経常利益が同39.8%増の2億56百万円、純利益が同50.2%増の1億59百万円だった。

 EC事業で「スーパーデリバリー」流通額が同3.6%増の71億円と好調に推移した。15年1月末時点の会員小売店数は前期末比2957店舗増加の4万3398店舗、出展企業数は同109社増加の1057社、商材掲載数は同1115点減少の45万2000点、クラウド受発注ツール「COREC」ユーザー数は1620社となった。売掛債権保証事業も順調に拡大した。また「Paid」事業の赤字縮小も寄与した。

 通期の連結業績見通し(1月15日に増額)は売上高が前期比6.1%増の20億50百万円、営業利益が同31.6%増の3億25百万円、経常利益が同33.1%増の3億30百万円、純利益が同62.6%増の2億円で、配当予想(1月15日に増額)は同2円55銭増配の年間6円80銭(期末一括)としている。

 売上面では企業間ECサイト「スーパーデリバリー」での取引量や、売掛債権保証事業の保証残高が順調に増加する。利益面では「スーパーデリバリー」運営におけるコスト構造改革が順調に進展し、売掛債権保証事業で保証履行が抑制されていることも原価押し下げ要因となる。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(5月~7月)が4億90百万円、第2四半期(8月~10月)が5億06百万円、第3四半期(11月~1月)が5億22百万円、営業利益は第1四半期が57百万円、第2四半期が93百万円、第3四半期が1億04百万円と拡大基調である。

 また通期見通しに対する第3四半期累計の進捗率は売上高が74.0%、営業利益が78.2%、経常利益が77.6%、純利益が79.5%と順調なである。ストック型の収益構造であることを考慮すれば再増額の可能性があるだろう。

 来期(16年4月期)は、企業間ECサイト「スーパーデリバリー」流通額が増加基調であり、14年9月ビジネスプラン課金開始したクラウド受発注ツール「COREC」事業、そして「Paid」事業や、売掛債権保証事業の収益寄与が本格化する。ストック型の収益構造であり、中期的にも収益拡大基調だろう。

 なお2月25日に発表した自己株式取得(取得株式総数の上限28万株、取得価額総額の上限2億円、取得期間15年2月26日~4月30日)については、2月28日時点で取得株式総数2万株、取得価額総額1426万1400円となっている。

 株価の動きを見ると、500円近辺でのモミ合いから上放れて戻り歩調の展開だ。第3四半期累計の大幅増益や自己株式取得を好感して一段高となり、3月12日には784円まで上伸した。

 3月12日の終値770円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS34円17銭で算出)は22~23倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間6円80銭で算出)は0.9%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS264円17銭で算出)は2.9倍近辺である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線、週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインとなって強基調の形だ。中期成長力も評価して14年1月の昨年来高値905円、さらに13年11月高値993円を目指す展開だろう。

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