【アナリスト水田雅展の銘柄分析】サンコーテクノは調整一巡してトレンド転換の可能性

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 アンカー大手のサンコーテクノ<3435>(JQS)の株価は、3月11日の直近安値1227円から切り返しの動きを強めている。19日は1442円まで戻す場面があった。調整が一巡してトレンド転換した可能性があり、今期(15年3月期)業績見通し増額の可能性や中期成長力を評価して出直り展開だろう。

 ファスニング事業(あと施工アンカー、アンカー打込み機など)、リニューアル事業(FRPシート、太陽光発電関連など)、センサー事業(電子基板関連試験機、アルコール測定器など)を展開している。あと施工アンカーはコンクリート用の特殊ネジ・釘類のことで、当社はあと施工アンカーおよびオールアンカーの最大手である。

 あと施工アンカー、アンカー打込み機、FRPシートなどは震災復興関連、都市再開発関連、耐震補強関連、老朽化インフラ補修・更新関連、20年東京夏季五輪関連、リニア新幹線関連など建設工事の増加が追い風となるため、中期的に事業環境は良好だ。

 14年11月にドコモ・システムズとの業務提携を発表し、3月18日には自動車運送事業法の対象企業に向けたクラウド型点呼サービス「docoですcar Guardian」の開始を発表した。ドコモ・システムズが当社の呼気アルコール測定システムを利用したクラウド型サービスを提供する。

 15年2月には「燃料電池式業務用呼気アルコール測定器ST-3000」の発売を発表した。燃料電池センサーの技術を持つタニタ(東京都板橋区)と共同開発した新製品で、これまでの接触燃焼式から燃料電池式にすることにより、ガス選択性の向上と測定時間の短縮を実現する。

 今期(15年3月期)の連結業績見通し(5月14日公表)は売上高が前期比4.6%増の180億円、営業利益が同0.4%増の15億20百万円、経常利益が同0.5%増の14億80百万円、純利益が同4.4%増の9億50百万円としている。

 配当予想(15年1月1日付株式2分割に伴って11月14日に修正)は、年間12円50銭(期末一括)としている。前期との比較では記念配当分2円50銭(株式2分割遡及修正後)を落とした形だ。

 セグメント別計画(内部取引・全社費用等調整前)は、ファスニング事業の売上高が同5.1%増の137億57百万円、営業利益が同4.7%増の11億76百万円、リニューアル事業の売上高が同2.6%増の37億円、営業利益が同11.7%減の3億18百万円、センサー事業の売上高が同16.7%増の7億56百万円、営業利益が同17.4%増の27百万円としている。

 第3四半期累計(4月~12月)は前年同期比5.0%増収、同3.2%営業増益、同2.5%増経常増益、同10.5%最終増益だった。ファスニング事業、リニューアル事業、センサー事業とも増収と好調に推移した。

 なお四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)37億61百万円、第2四半期(7月~9月)46億72百万円、第3四半期(10月~12月)46億13百万円で、営業利益は第1四半期2億45百万円、第2四半期4億65百万円、第3四半期3億88百万円と順調に推移している。

 そして通期見通しに対する第3四半期累計の進捗率は売上高が72.5%、営業利益が72.2%、経常利益が72.0%、純利益が72.0%である。建設関連で第4四半期(1月~3月)の構成比が高くなる収益構造を考慮すれば高水準と言えるだろう。

 ゼネコンの工事現場における人手不足の影響、リニューアル事業における工事原価の上昇、50周年記念イベントに伴う販管費の増加、給与水準引き上げに伴う人件費の増加、設備投資の増加などを考慮して通期会社見通しは利益横ばいだが、利益率の高い新商品比率の上昇も寄与して通期増額の可能性が高いだろう。

 ファスニング事業は都市圏を中心とする再開発・耐震化工事、社会インフラ維持・補修工事の増加などが追い風だ。また建設現場では人手不足の影響が深刻化しているため、現場作業の省力化・機械化ニーズの高まりや非熟練作業者の増加が予想され、現場での使いやすさを高めた施工ツール、あと基礎アンカー、アンカー打込み機、紫外線硬化FRPシートといった製品の採用が一段と増加するだろう。中期的に事業環境は良好であり、新製品の開発・拡販も寄与して収益拡大基調が期待される。

 なお14年11月に株主優待制度の導入を発表し、毎年3月31日現在の1単元(100株)以上保有株主に対してクオカード500円分を贈呈する。

 株価の動き(15年1月1日付で株式2分割)を見ると、1月高値1830円から反落して水準を切り下げたが、3月11日の直近安値1227円から切り返しの動きを強めている。19日は1442円まで戻す場面があった。14年10月の1215円を割り込まずに反発して下値を確認した形だろう。

 3月19日の終値1372円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想連結EPS116円73銭で算出)は11~12倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間12円50銭で算出)は0.9%近辺、そして前期実績PBR(前期実績に株式2分割を考慮した連結BPS999円93銭で算出)は1.4倍近辺である。

 週足チャートで見ると52週移動平均線を割り込んで調整局面だが、日足チャートで見ると25日移動平均線を突破した。調整が一巡してトレンド転換した可能性があり、今期業績見通し増額の可能性や中期成長力を評価して出直り展開だろう。

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