【アナリスト水田雅展の銘柄診断】エストラストは16年2月期も増収増益期待、出遅れ感強くモミ合い上放れのタイミング

銘柄分析

 山口県や福岡県を地盤とする不動産デベロッパーのエストラスト<3280>(東1)の株価は、やや小動きでモミ合う展開だが下値固めは完了しているようだ。アベノミクス「地方創生」も追い風で、16年2月期も増収増益が期待される。株価の出遅れ感が強く、収益拡大基調を評価してモミ合い上放れのタイミングだろう。

 山口県および福岡県を地盤とする不動産デベロッパーである。一次取得ファミリー型の新築分譲マンション「オーヴィジョン」シリーズ、および新築戸建住宅「オーヴィジョンホーム」の不動産分譲事業を主力として、連結子会社トラストコミュニティが展開する「オーヴィジョン」マンション管理受託の不動産管理事業、および不動産賃貸事業も強化している。

 九州・山口エリアでのNO.1デベロッパーを目指し、福岡県および九州主要都市への進出加速、九州・山口エリアでのマンション年間供給500戸体制構築、山口県での戸建住宅年間供給100戸体制の構築、ストック型ビジネスとなる不動産管理事業でのマンション管理戸数拡大、不動産賃貸事業での収益物件長期保有による収益基盤強化などを推進している。

 重点エリアである福岡県での事業展開加速に向けて、13年6月第三者割当増資によって、ふくおかフィナンシャルグループ<8354>傘下の福岡銀行との関係を強化している。また14年3月に山口県内最大のオフィス街に立地する下関第一生命ビルディング(山口県下関市)を取得して、不動産賃貸事業の収益基盤を強化した。

 15年1月には「オーヴィジョン下関海峡テラス」「オーヴィジョン広島パークサイド」「オーヴィジョン飯塚(仮称)」の各プロジェクトが始動した。

 前期(15年2月期)の連結業績見通し(4月10日公表)は売上高が前々期比16.7%増の120億円、営業利益が同11.1%増の10億90百万円、経常利益が同9.0%増の9億70百万円、純利益が同10.4%増の6億円としている。

 契約済みの分譲マンション・戸建住宅の引き渡しが順調に進み、不動産管理事業の管理戸数増加や不動産賃貸事業のポートフォリオ充実も寄与して大幅増収見込みだ。分譲マンション引き渡し予定戸数430戸(前期比56戸増)に対して、第3四半期累計(3月~11月)での契約戸数は425戸、契約進捗率は99%に達している。増収効果でプロジェクト先行費用や営業外での市場変更費用などを吸収し、経常最高益更新の見込みだ。

 配当予想(7月25日に増額修正)は、市場変更記念配当2円を第2四半期末の中間配当で実施して、年間10円(第2四半期末4円、期末6円)としている。前々期の年間8円(第2四半期末2円、期末6円)との比較で2円増配となる。

 第3四半期累計(3月~11月)は、分譲マンション7物件378戸(前年同期比57戸増加)と分譲戸建22戸(同9戸増加)の引き渡しが牽引して大幅増収増益となり、通期見通しに対する進捗率は売上高が85.1%、営業利益が107.3%、経常利益が100.7%、純利益が100.2%だった。

 分譲マンション引き渡しが第2四半期(6月~8月)と第3四半期(9月~11月)に集中したため通期会社見通しを据え置いているが、増額の期待も高まっている。

 中期経営計画では目標値として16年2月期の新築分譲マンション引き渡し戸数494戸、売上高130億円、営業利益12億50百万円、経常利益12億円、純利益7億20百万円を掲げている。営業利益は15年2月期に前倒し達成した可能性があり、16年2月期も増収増益が期待される。

 事業展開の重点エリアとしている福岡市では、国家戦略特区に指定されたことも背景として、一段と人口増加傾向を強めることが予想される。アベノミクス重点戦略「地方創生」も追い風であり、成長市場への事業展開を加速して中期的に収益拡大基調だろう。

 株価の動き(14年8月15日付で東証マザーズから東証1部に市場変更)を見ると、やや小動きでモミ合う展開だが徐々に下値を切り上げている。2月の直近安値630円が14年10月の安値599円を割り込まなかったことで下値固めは完了しているようだ。

 3月25日の終値689円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS106円39銭で算出)は6~7倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は1.5%近辺である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線と26週移動平均線が支える形で徐々に下値を切り上げている。16年2月期も増収増益が期待され、株価の出遅れ感は強い。収益拡大基調や低PERを評価してモミ合い上放れのタイミングだろう。

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