【編集長の視点】ザ・パックは続落も1Q減益業績を織り込み海洋プラ関連のG20を先取り押し目買いが交錯

 ザ・パック<3950>(東1)は、前日6日に95円安の3055円と続落して引けた。同社株は、今年5月8日に発表した今2019年第1四半期(2019年1月~3月期、1Q)業績が、連続して減益となったことと令和相場入り後の全般相場の波乱推移が重なり、下値を探る動きが続いたが、今12月期通期業績が増益転換と予想されていることからほぼ織り込み済みとして3000円台下位では下値抵抗力の強さを示した。今年6月28日から大阪市で開催されるG20(20カ国・地域)首脳会議に向け、議長国の日本が、「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」を策定し、G20での議論をリードすることも、同社が共同開発している「ウッドストロー」などを見直し、関連株人気の高まりを先取りして押し目買いも交錯している。


■「ウッドストロー」開発が進展しレジ袋無償配布禁止で紙袋の需要も拡大

 同社の今期1Q業績は、前年同期比6.0%増収、11.4%営業減益、11.7%経常減益、18.0%純益減益で着地した。紙加工品事業で、紙袋の販売が、国内専門店向けや米国、中国向けに好調に推移し、紙器も、食品用パッケージやeコマース市場向けに続伸、段ボールも、eコマース市場向け堅調に推移して売り上げは増収転換したが、利益は、人手不足による臨時・派遣社員の人件費の増加や物流費と原材料価格の高騰が響き連続減益となった。

 今12月期第2四半期・通期業績は、期初予想に変更はなく、12月通期業績は、売り上げ958億円(前期比2.9%増)、営業利益73億円(同5.4%増)、経常利益76億円(同5.4%増)、純利益50億円(0.6%増)と増益転換を見込み、配当も、中間配当25円を含め年間50円(前期実績50円)の安定継続を予定している。

 一方、「ウッドストロー」は、三重大学大学院生物資源学研究所の野中寛教授と共同開発している。木粉や紙粉、コーヒーかすなどのセルロース繊維に天然素材の「セルロース誘導体」と水を混ぜて粘土状にして三次元成形してプラスチックストローの代替品として開発したもので、プラスチックストローが、マイクロプラスチックとして海洋生物の生態系に悪影響を及ぼす素材として世界的に使用廃止気運が高まっているだけに再びクローズアップされている。また、日本政府は、海洋プラスチックごみの削減に向けてアクションプランを策定し公表、率先した政策対応をG20でアピールし各国政府にも同様の計画を策定するように呼び掛ける方針であり、政策のバックアップを受ける。さらに、原田義昭環境大臣が、全国のコンビニ、スーパー、ドラックストアなどの量販店でのプラスチック製レジ袋の無償配布を禁じる法制化の方針を明らかにしたことも、ザ・パックの紙袋の需要拡大期待につながっている。

■25日線をクリアしまず年初来高値から直近安値への調整幅の半値戻しへ

 株価は、今12月期業績の増益転換予想と自己株式TOB(TOB価格3153円)に海洋プラスチック問題の関連株人気が加わり年初来高値3720円まで買い進まれ、今期1Q減益業績と令和相場入り後の全般相場続落が重なって3000円台を試す下値調整となった。PERは11倍台、PBR1.05倍と割り負けており、25日移動平均線から4%超下方かい離したここから25日線をクリアしてリバウンド幅を拡大、年初来高値から直近安値への調整幅の半値戻し3367円を奪回し、全値戻しを目指そう。(本紙編集長・浅妻昭治)

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