【どう見るこの相場】社会インフラの整備は十分か?災害復旧・復興関連株と国土強靭化関連株に再出番

どう見るこの相場

■「コンクリートから人へ」の延長線上

 「コンクリートから人へ」とは、2009年の衆議院総選挙で旧民主党が圧勝し、政権交代を実現した時のキャッチコピーである。道路、橋、ダム、ハコモノなどを建設するムダな公共工事を減らし、放漫財政の政策転換を迫ったことが総選挙の大きな争点となり有権者の賛同を得た。もちろんこの前提には、あの「日本列島改造計画」に代表されるように、「土建国家」として社会インフラの整備は、全国津々浦々、山間僻地に至るまで充足しているとの認識があった。八ッ場ダムの着工か建設中止かの議論が盛り上がったのも、記憶に新しい。今年9月11日に発足した第4次安倍第2次改造内閣が推進する子育て支援・幼児教育無償化政策なども、この「コンクリートから人へ」の延長線上にある。

 ここで疑問が生まれる。本当に社会インフラの整備は十分なのか?今年9月以来、立て続けに見舞われた台風第15号、台風第19号で、広域停電が長期化し、7つの県の大小71の河川の130カ所でアッという間に堤防が決壊し、水が堤防を越える「越水」による氾濫も、16都県の延べ265河川に及び、土砂崩れの多発、鉄道・道路の寸断などで多くの犠牲者・被災者、住宅被害が発生したのである。この集中豪雨が、地球温暖化を背景にした異常気象によるスーパー台風によるとすれば、今年に限らず、来年も、再来年も次々と大災害に見舞われることを覚悟しなくてはならず、異次元の自然災害に社会インフラが耐性を発揮できるか不安になる。

 しかも、この激甚災害は、10月1日の消費税増税と重なって降りかかっており、国民経済的にも景気下押し・後退要因として看過できなくなる。それでなくても増税を境に、小なりといえども駆け込み需要の反動が懸念されるなか、またまた台風20号、台風21号の発生が観測されており、消費者意識は委縮しより節約志向・生活防衛意識を強める可能性があるからだ。確かに安倍内閣は、阪神淡路大震災、東日本大震災を踏まえて策定した「国土強靭化計画」を2018年の西日本豪雨などを踏まえて、2018年12月に見直し160項目にわたる総事業費規模7兆円の「3か年緊急対策」を閣議決定した。しかし、今回のスーパー台風による西日本豪雨を超えた災禍が、同計画の想定をも上回っているとしたら、計画の総事業費の上積み、一段のスピードアップなど「安全・安心」をアピールすることは大きな政治責任として避けられなくなるはずだ。「コンクリ-トから人へ」の逆ネジとなる。

 そこで今週の当コラムでは、災害関連株に注目。週明けの全般相場が、ややディフェンシブにスタートすると予想されることも要因だ。前週週初の世界同時株高のサポート材料が、どれも週末に至って裏目に出ているためだ。米中貿易協議の一部合意期待は、中国の経済指標の悪化で往って来いとなり、英国のEU(欧州連合)離脱合意も、英国議会での採決延期で暗転してきた。としたらもう一度、災害復旧・復興需要関連株が浮上する展開も想定される。国土強靭化関連の建設コンサルタント株や復旧・復興関連株などもマークしたい。

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